「自分たちのアイデンティティを発見したアルバム」1stアルバム発売記念・fhánaスペシャルインタビュー

2月4日にファーストアルバム『Outside of Melancholy』をリリースしたfhana。全14曲、70分超の大作となった同作に込めた想いと音楽シーンに向けた狙いを掘り下げるべく、moraではリーダーである佐藤純一氏にメールインタビューを実施した。「オタク/サブカル」「ロック/ポップス」といった枠を軽々と飛び越え、様々なバックグラウンドからの影響を感じさせるバラエティ豊かな一枚になった『Outside of Melancholy』の世界を、より深く楽しんでいただく一助となれば幸いである。

 


 

『Outside of Melancholy』ご購入はこちらから

 ハイレゾ / 通常

 


 

――『Out of Melancholy』のリリース、おめでとうございます。今作はシングル曲やウェブ上で発表された曲(「lylical sentence」)を含む、fhanaの集大成的な作品になっていると思います。アルバムにおいて各曲がどのような位置付けになっているか、教えていただけますか。

佐藤 fhanaは、ノベルゲーム(※)やアニメが好きで意気投合したことが、結成のきっかけの1つなのですが、こうしたゲームはプレイヤーの選択次第で物語が変化し、様々なエンディングを迎えます。1度クリアしたらもう一度最初からプレイし、別な選択をして別なエンディングを迎える。言わば、選択次第で様々な物語の可能性があって、沢山の並行世界を生きるようなものです。
このアルバムの世界観では、これまで担当してきたタイアップ曲やアニメの物語も、アルバム用のオリジナル曲も、全てがfhanaという大きな物語の中の可能性の1つという位置づけになっています。
今まで、デビュー前のfhanaの世界観と、デビュー後のfhanaの世界観が統合されておらず、またデビュー後のそれぞれのタイアップ曲も、個別で作られていて統一された世界観はありませんでしたが、今回のアルバムでfhanaという大きな物語の中で統合されたと思います。言わば、僕たちfhana自身が、自分たちのアイデンティティを発見したアルバムだと思います。

※主人公の視点を借りて、物語の世界をテキストで「読み進めていく」タイプのアドベンチャーゲームのこと。途中現れる選択肢のいずれを選ぶかによって、複数の結末に物語が分岐していく。fhanaのメンバーも影響を公言している作品として『CLANNAD』『STEINS;GATE』などがある。

――ファーストアルバムはバンドにとっての「名刺」代わりにもなる作品だと思います。どのような想いをもって制作に臨まれましたか。

佐藤 アルバムのタイトルに「メランコリー=憂鬱」という言葉が入っているように、誰しもが心の中に何かしらメランコリーを抱えていると思います。そこから抜けだして憂鬱の向こう側に行こう、という希望を込めたアルバムにしたいと思って作りました。
先に述べたように、ゲームなどでは様々な選択で物語が変わって行きます。でもそれは、ゲームやアニメや小説だけのことではなくて、僕たちの生きる現実の世界も同じです。人生は、日々の選択の積み重ねです。もし別な選択をしていたら別な人生があったはずで、僕たちの人生には様々な物語の可能性があり、どうとでもあり得たはずです。だけど、今ここにいる僕は「この僕」でしかあり得ない。そこで憂鬱を感じるかもしれない。だけど、偶然を含めて様々な選択を繰り返して辿り着いた「この僕」とそれを取り巻く世界は、取替え不可能なかけがえの無いものでもあります。だから、今の自分と世界を肯定しよう、日常の中に希望を見出そう。そういう想いを込めてアルバムを作りました。

――70分超の大作となっていますが、このような形になった理由はありますか。また、アルバムを通して聴いてもらうために、工夫している点などおありでしょうか。

佐藤 fhanaはもともと長い曲も多く、今回のアルバム用の新曲も、ラストの「white light」などは7分以上あり、必然的にアルバム全体が長くなっていったということもありますが、最初から、ファーストアルバムはボリュームたっぷりの超大作にしたいという想いがありました。
1曲目の「Outside of Melancholy  憂鬱の向こう側 」と最後14曲目の「white light」は歌詞もアレンジも対になっており、その間にこれまで担当してきたアニメ主題歌や、新曲が入り、全体で1つの物語を構成しています。ぜひ、アルバムを通して聴いていただけたら嬉しいです。

――今作はハイレゾでの配信も同時にスタートします。サウンド面での聴きどころはどういったところになるでしょうか。

佐藤 ハイレゾは音の入れ物のサイズが大きく、音に奥行きがあり、解像度も高く、とてもゆとりのある音になっていると思います。fhanaは、生音によるバンド・サウンドと、打ち込みによる電子音が独特なバランスで構築されていて、ハイレゾではその質感を楽しんでいただけたらと思います。

――このアルバムをどんな人に聴いてほしいですか。

佐藤 アニソンファン・アニメファンの方にも聴いて欲しいし、普段アニソンを聴かない方や、アニメを見ない音楽好きの方にも聴いて欲しいです。幅広いジャンルの方々に聴いてもらえるような要素や普遍性がfhanaにはあると思っています。
アニソンやロックやサブカルなど様々なジャンルやジェネレーションをクロスオーバーさせていけたら嬉しいです。

――moraはオンラインショップです。先ほどの質問にも関連して、『Outside of Melancholy』の隣に並べてほしい、あるいは、このアルバムを構成する「原点」となっているアルバムがあれば、教えていただけますか。(以下、佐藤さんのご回答)

 

YELLOW MAGIC ORCHESTRA
『BGM』

YELLOW MAGIC ORCHESTRA
『アフター・サーヴィス』

FLIPPER’S GUITAR
『SINGLES』

Cornelius
『Sensuous』

The Smashing Pumpkins
『Mellon Collie And The Infinite Sadness』

スーパーカー
『HIGHVISION』

長門有希(CV. 茅原実里)
『涼宮ハルヒの憂鬱キャラクターソング Vol.2 長門有希』

 

――最後に、アルバムを作り終えて、次なる展望をお聞かせください。

佐藤 今自分たちを支えてくれているファンの方々を大切にしつつ、さらに多くの人に聴いていただけるよう、幅広いフィールドに打って出て行ければと思っています。また、多くの人にとって、fhanaが取替え不可能な特別な存在になれれば嬉しいです。

 


 

fhana 配信タイトル一一覧はこちら