レコーディングエンジニア・吉田保に訊く! 名盤をハイレゾ聴きどころ

レコーディングエンジニア・吉田保。70年代後半より、独特のリバーブの使用法と際立った深みを持つミックスで、山下達郎大滝詠一をはじめ、南佳孝、ザ・スクエア(現T-SQUARE)、松田聖子等ジャンルにとらわれず、多くのアーティストのミックスを手掛けました。 

今回、そんな日本のミュージックシーンのレジェンドが手掛けた名盤の数々がマスタリングされることに。それを記念して、吉田保さんご本人に今回のハイレゾマスタリング秘話、聴きどころポイント、さらに吉田さんの考える「良い音とは?」といった内容まで、貴重なお話しを伺ってきました。

 
 

 

――本日はお忙しい所ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

吉田:よろしくお願いします。

――まず、今回のマスタリングシリーズは最高のボーカルと最高の演奏がそろったシリーズだと思いますが、ボーカルと楽器プレイのバランスはどうお考えでしょうか。

吉田:手前味噌ですが最高です。当時クオリティの高い作品を多く残せたのは、曲が良くて、アレンジが良くて、それを演奏するミュージシャンの腕も良かった。そしてスタジオ環境に恵まれていたのが大きかったと思うんです。三拍子も四拍子もそろったレコーディングでした。

――マスタリングの素材はすべてアナログハーフでしょうか。

吉田:メインはアナログ1/4 Inchです。アナログハーフが普及したのは’80年代中ごろなので今回のマスタリングはほとんどが1/4インチマスターを96kHz、24bitでアーカイヴしたデータからです。

 

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――スタジオ環境、機材環境、モニター環境に関して教えてください。

吉田:スピーカ、ラージJBL4320 スモール、YAMAHA-10M Pro Tools Ver10 Nuendo5 WaveLab アナログ機材無し。今回の依頼を受けデジタル的な音圧を求めるのではなく、人間的な音量を保ためVUメーターを購入しました。

――マスタリングするにあたり、音圧(レベル)に関してのお考えを教えて下さい。

吉田:なるべく高めにしましたが曲のダイナミックス重視です。結果的に最近の一般的なマスタリングと比較すると音圧は低いのですが、その分アンプのヴォリュームを上げれば伸びやかな音を体感できるはずです。

――先に資料を拝見させていただいて、作品の源音に近付けたということですが、今回、参考にした音源があれば教えてください。

吉田:矛盾しますがありません。今の感覚で源音に近づけました。

――ご自分のミックスと他の方のミックスをマスタリングをするときの違いは?

吉田:私のマスタリングEQカーブを他の人が行ったミックスに当てはめました。他の方のミックスも素晴らしいので極端にEQをかけてしまうと別のものになってしまうため、ベストなポイントとカーヴを探りました。

――マスタリングにあたってアーティストからのリクエストは何かありましたか?

吉田:ありません。旧譜のリマスタリングなのでレコーディング当時のそれぞれのアーティストのことを思い出しながら音づくりをしました。

――苦労したポイントを教えて下さい。

吉田:ヒスノイズ、ゴーストを消すのが大変でした。単純なマスタリングというよりは、ミックスに近い作業も沢山ありましたね。

――ハイレゾのよさが表れているポイントを教えてください。

吉田:全タイトルに現れていると思います。今回、実際にハイレゾ・オーディオ(ウォークマン)で聴かせてもらいました。ヘッドフォンの特性もあると思いますが、スタジオで聴いている音に近い素直でいい音してると思います。

 

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――作業を終えて新たな発見があれば教えてください。

吉田:今のDAWは最高に便利です。(注:DAWとはDigital Audio Workstationの略でレコーディング、ミックス、マスタリング等の作業が可能な一体化したデジタル機材)

――今後、こういう曲(過去の作品やこれからの作品含め)をハイレゾで配信できたらな、という作品があれば教えて下さい。

吉田:私がミックスした楽曲。エンジニアとしての仕事をきれいな形で後世に残したいからです。若い人がどう感じるのか楽しみです。

――最後に、吉田保さんにとっての「良い音」とはなんでしょうか?

吉田:音像から絵が浮かび上がり、気持ち良くなり、聴く方が入り込めるサウンドだと思います。目をつぶって聴いた時に歌手やプレイヤーがスピーカーの前に現れるような錯覚を感じたら嬉しいです。

――本日はありがとうございました。

 

 

<吉田保マスタリングシリーズハイレゾ配信タイトル>

これらの作品はアナログ・マスターテープからデータを取り込み、レコーディング時の音の特性を生かしマスターテープに近い音が再現されています。

音圧ということよりも、マスターテープに忠実にレコーディングされたアレンジの良さ、それを演奏するミュージシャンの腕そして優れたスタジオ環境でつくられた音源そのものの良さを最大限引き出すべくリマスタリングされました。
吉田氏がリマスタリングし、スタジオに納品された96kHz/24bitのオリジナル音源に一番近い形での配信となります。

 

吉田美奈子「MINAKO」

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通算2作目、ヴォーカリストとしての実力を発揮したRCAレコード移籍後初アルバム。
村井邦彦プロデュース作品。
村上秀一、林立夫、高水健司、鈴木茂、松木恒秀、山下達郎、細野晴臣、浜口茂外也などの豪華ミュージシャンが脇を固める。
「チャイニーズ・スープ」収録。

オリジナル発売日:1975年10月25日

 

吉田美奈子「MINAKOⅡ」

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吉田美奈子、1975年12月発表のRCAレーベル移籍第2弾アルバム。
1975年10月、中野サンプラザにて行われたライヴの模様を収録。
山下達郎、大貫妙子がコーラス参加、1stアルバムの楽曲「外はみんな」「扉の冬」「かびん」の他、
はっぴいえんど、キャロル・キングのカバーもメドレーで収録。

オリジナル発売日:1975年12月20日

 

吉田美奈子「TWILIGHT ZONE」

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吉田美奈子と山下達郎による共同プロデュース作品。1977年3月発表のRCAレーベル移籍第4弾アルバム。
全曲自作曲のソウル&ファンク・テイストとジャズ的アプローチが融合した楽曲、「恋」「駆けてきたたそがれ」他、全9曲を収録。

オリジナル発売日:1977年3月25日

 

南佳孝「SOUTH OF THE BORDER」

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豪華ミュージシャン、アレンジャーに多彩な作家陣を迎え南佳孝の魅力を凝縮した初期の名盤。
1978年に発表された3rdアルバム。高い評価を獲得、いまだに根強い人気を誇っている。
全曲坂本龍一によるアレンジ。ジャケットは池田満寿夫による「愛の瞬間」。
サンバ、ボサノヴァ、南の香りに包まれて都会の知性がここに歌われる。「プールサイド」「夏の女優」他全11曲収録。

オリジナル発売日:1978年9月21日

 

南佳孝「冒険王」

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松本隆との共同プロデュース、オリジナル・アルバム9作目。
これまでのイメージから一新、少年の夢や冒険等をテーマにしたコンセプトアルバム
ヒット曲「スタンダード・ナンバー」ほか全12曲収録。

オリジナル発売日:1984年6月21日

 

南佳孝「冒険王」

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松本隆と南佳孝による共同プロデュース第二弾、オリジナル・アルバム10作目。
1950年代~1980年代までの映画をモチーフに、その映像世界を表現したコンセプトアルバム。CDリリースの際追加された2曲もそのまま収録。

オリジナル発売日:1986年2月26日

 

ハイ・ファイ・セット「Pasadena Park」

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ハイ・ファイ・セット ハイ・ファイ・セット移籍第一弾作品。ハイ・ファイ・セットならではのコーラス・センスが再評価された作品。
杉真理作曲のCMソング「素直になりたい」、松任谷由実作曲の「霧雨で見えない」他全10曲収録。全10曲。

オリジナル発売日:1984年2月25日

 

ハイ・ファイ・セット「INDIGO」

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実力もさることながら、そのポップなセンスで定評のあるハイ・ファイ・セットのヒットアルバム。井上鑑がアレンジを担当、
伊藤銀次、杉真理、南佳孝ら作家陣による楽曲コラボも聴きどころ。「恋愛狂時代」など全11曲収録。

オリジナル発売日:1985年2月25日

 

ハイ・ファイ・セット「Sweet Locomotion」

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実力派でありながら、安易にスタンダードを歌わず伊藤銀次、杉真理、小林明子、楠瀬誠志郎等
日本のアーティストによるオリジナルの楽曲にこだわった、円熟期のアルバム。全10曲。

オリジナル発売日:1986年4月10日

 

ハイ・ファイ・セット「Gibraltar」

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ハイ・ファイ・セット15枚目のオリジナル・アルバム。ネオ・アコースティックの音作りで表現するジブラルタルの海、花の香り、人々の風景。
新川博、TOPTONE、松浦雅也(当時PSY・S[saiz])をアレンジャーに迎え、彩りにあふれたアルバム作りがなされている。

オリジナル発売日:1987年4月1日

 

ハイ・ファイ・セット「Eyebrow」

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ハイ・ファイ・セット 結成15周年を前にして制作されたアルバム。
比類なきハーモニーが生む豊かな表現力がポップスをより完成度の高見にし上げようとした作品。
馴染み新川博に加え、TOPTONE、角松敏生バンドのベーシスト率いるHEXAGONがアレンジを担当。
人気曲「プラトニックしましょ」他全10曲収録。

オリジナル発売日:1988年3月21日