現代を代表する「名指揮者」、ピエタリ・インキネンの新録音が待望の配信開始!

近年随一のシベリウスの名盤『シベリウス: 交響曲全集』の指揮者であり、今夏のヒットアルバム『10人の名指揮者 – NAXOS30周年記念 ハイレゾ限定コレクション』にも「名指揮者」のひとりとして登場。
今年37歳を迎えた北欧生まれの指揮者、ピエタリ・インキネンと日本フィルハーモニー交響楽団による新譜がついに待望のリリースとなりました!11月17日、18日のサントリーホールでの演奏会に合わせた配信先行リリースです。

 

ブラームス: 交響曲第1番/悲劇的序曲
日本フィルハーモニー交響楽団/ピエタリ・インキネン(指揮)

FLAC 96.0kHz/24bit

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北欧の「名指揮者」…ピエタリ・インキネンのあゆみ

 

 

 

 

 

 

 

ピエタリ・インキネンが初めて日本フィルの指揮台に上ったのは、2008年春のこと。母国フィンランドを代表する作曲家・シベリウスを十八番としていた彼は、2013年に東京と横浜でシベリウスの交響曲全曲を指揮。このライブを録音した『シベリウス: 交響曲全集』は、21世紀を代表するシベリウスの名盤として絶賛され、またリリース当時はまだ数が少なかった「ハイレゾによる名曲コンプリートアルバム」の先駆としても高く評価されました。

 

シベリウス: 交響曲全集
日本フィルハーモニー交響楽団/ピエタリ・インキネン(指揮)

FLAC 96kHz/24bit

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──インキネンはゆったりとしたテンポ、見通しのよい透明な響きの中で、各パートの役割を最大限に引き出し、シベリウスのスコアを明晰に音化していきます。それは北欧らしい抒情や雰囲気に頼ることなく、あくまで純音楽的なアプローチによって作品の魅力を伝えてくれるもの。ヴァイオリニストでもあるインキネンだけに、細かい走句でも濁ることのない弦の美しさも格別です。(『10人の名指揮者 – NAXOS30周年記念 ハイレゾ限定コレクション』より 原典子氏解説)

 

着実に日本での名声を高めるなか、ついに2016年、日本フィルの首席指揮者に就任。

あまりに「北欧」の印象が強かったインキネン。それゆえに、就任記者会見での彼の決意表明は、ファンを少々驚かせるものでした。

「次のステップとしてドイツ系のレパートリー・・・ブラームス、ブルックナー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウスを積極的に演奏し、日本フィルの醸し出す音に、さらに深みと奥ゆかしさを付け加えたい」(引用元)

 

「北欧」から「ドイツ」へ…新たな挑戦としてのブラームス

インキネンはその言葉を実行に移すべく、「ドイツ系のレパートリー」に次々と取り組んでいきました。
2016年9月の就任記念演奏会ではワーグナー、2017年1月の定期演奏会ではブルックナーを指揮。そして4~5月には、横浜みなとみらいホールでブラームスの交響曲を全曲演奏しました。5月20日、ブラームス・ツィクルスをしめくくる最後の曲として彼が選んだのが、もっとも有名な「交響曲第1番」。第4楽章の最後の音が消えていくや否や、喝采と「ブラヴォー」の声が飛び、終演後には、「近来聴いた数々の「ブラ1」の中で出色」「王道」「ひしひしと伝わる悲愴感」と、SNSやブログでも賞賛の声が相次ぎました。本アルバム『ブラームス: 交響曲第1番/悲劇的序曲』は、その5月20日演奏の「交響曲第5番」と、4月22日演奏の「悲劇的序曲」を収録。『シベリウス: 交響曲全集』と同じPCM 96kHz/24bitで、今年録れたてのライブ録音をお聴きいただけます。

 

ハイレゾならではの「対向配置」の聴きどころ

さて、このブラームス・ツィクルスでわけても話題を呼んだのが「対向配置(両翼配置)」。
今日の一般的なオーケストラ演奏では、下手(向かって左)から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという順番で楽器を配置します。これに対してインキネンは、下手に第1ヴァイオリン、上手に第2ヴァイオリンを「対向」させるように置き、その間にヴィオラ、チェロ、後ろにコントラバスを置くというスタイルを採用しています。

実は、20世紀前半まで、オーケストラの楽器の配置は後者の対向配置のほうが一般的でした。当然、19世紀の「ロマン派」の時代に書かれたブラームスの交響曲は、対向配置を前提として作曲され、演奏されていたはずです。
インキネンは、ブラームス以外の「ドイツ系レパートリー」の演奏でも、この対向配置を採用しています。それは、作曲者自身の意図や、オーケストラのあり方に立ち返りたいという、彼の意志が反映されたものなのです。実際、インキネンは、ドイツのロマン派音楽についてこのように語っています。「基本であり、すべて。オーケストラの向上に必要です」(引用元)

なお、20世紀半ば以降、前者の楽器配置が一般的になったのは、この配置のほうがコンサートホールでよく響き、かつ近現代のステレオ録音に適しているからだとされています。

たしかに、現代の配置だと、左側に高音の弦、右側に低音の弦という並びなので、白から黒へと聴感がグラデーションのように変わっていくのを味わうことができます。左右の違いがはっきりしていて面白いのですが、重たい音が右に集中しているので、偏りを感じる方もいるかもしれません。

これに対して対向配置の場合、外側が高音、内側が低音という配置。最初は平面的でのっぺりしているように感じますが、じっくりと聴いていると、高音が低音を薄いヴェールのように包みながら展開していく様子がだんだんとわかってきます。宇宙の真ん中で音楽を聴いているような、調和のとれた美しさが、対向配置の長所。ステージ上の位置関係が見えてくるようなハイレゾ録音であれば、よりその魅力を鮮明に味わうことができるでしょう。

 

 

交響曲第1番の第4楽章の冒頭は、高音グループ(第1、第2ヴァイオリン)と中低音グループ(ヴィオラ、チェロ、コントラバス)がそれぞれ異なる音を奏でるので、より対向配置の魅力がわかりやすいはず。インキネンファン、日フィルファン、ブラームスファンのみならず、「音を聴く」ことを真剣に楽しんでみたい全ての方にオススメの新録です。