月刊moraチャート分析(2017年2月)

このコーナーでは、moraでの月間ダウンロード数からヒット現象を考察しています。今回も、ハイレゾ・チャートを見てみます。前月は“紅白効果”が大きくTOP20の大半がロングヒット作でしたが、2月はアニメ作品から沢山のヒット作が飛び出しています!

 

■ハイレゾ・単曲チャート 集計期間:2016年1月30日~2017年2月26日

月間 今週 タイトル アーティスト名 発売元
1 12 3 1 2 青空のラプソディ fhana LA
2 1 1 Catch the Moment LiSA S
3 15 5 6 1 一滴の影響 UVERworld S
4 11 2 フリージア Uru S
5 2 Shadow and Truth ONE III NOTES LA
6 24 7 2 Climber’s High! 沼倉 愛美 V
7 23 6 3 イシュカン・コミュニケーション ちょろゴンず LA
8 17 34 18 3 エミュー UVERworld S
9 3 8 Ubiquitous dB ユナ(神田沙也加) S
10 4 9 longing ユナ(神田沙也加) S
11 22 17 7 5 前前前世 (movie ver.) RADWIMPS U
12 30 20 10 4 フェアリーテイル 三月のパンタシア S
13 5 11 Break Beat Bark! ユナ(神田沙也加) S
14 25 15 5 INNOSENSE FLOW S
15 31 16 4 ときめきエクスペリエンス! Poppin’Party BR
16 7 13 delete ユナ(神田沙也加) S
17 9 14 smile for you ユナ(神田沙也加) S
18 21 4 Elemental World ChouCho LA
19 36 31 15 7 さよならバイスタンダー YUKI S
20 86 29 13 6 オキノタユウ 和楽器バンド A

※2017年1月30日~2月26日の4週間を「月間」とした。「今週」を含め4週分の週間推移は小さく併記した。「-」はTOP100圏外。網掛けは、8週以上チャートインしているロングヒット。

メーカー一覧:A=エイベックス、BR=ブシロード、LA=ランティス、S=ソニー、U=ユニバーサル、V=ビクター

 

今月は月間TOP20中に、なんと18作ものアニメ関連の楽曲がランクイン!昨年11月の月間チャート(第5回を参照下さい)でもTOP20に17作ランクインしていたので、アニメ開始の翌月は、そのタイアップ曲がほぼ出揃い、しかも、ハイレゾで買い揃えるというファンがかなり増えていることが分かります。実際、CDチャートでは、月間だと1作入るかどうかなので、これはハイレゾならではのヒット現象と言えます。

その中で1位となったのは、音楽ユニットfhana(ファナ)の10thシングルの表題曲「青空のラプソディ」でアニメ『小林さんちのメイドラゴン』のオープニング曲となっています。これまでも高音女性ボーカルと爽快なポップチューンが魅力のfhanaですが、今回はコメディー・タッチのアニメとの相性の良さもあって、自己最高の出足に。

この他にも、5位のONE III NOTES「Shadow and Truth」(アニメ『ACCA13区監察課』)、6位の沼倉愛美「Climber’s High!」アニメ『風夏』)、7位のちょろゴンず「イシュカン・コミュニケーション」(アニメ『小林さんちのメイドラゴン』)、12位の三月のパンタシア「フェアリーテイル」(アニメ『亜人ちゃんは語りたい』)、15位のPoppin’Party「ときめきエクスペリエンス!」(アニメ『BanG Dream!』)、そして18位のChouCho「Elemental World」(アニメ『政宗くんのリベンジ』)と、TOP20に首都圏ではTOKYO MXで放送されている、いわゆるMX系のアニメ関連作が7作もランクイン。通常音源ではここまで集中していないので、このハイレゾの強さからもMX系アニメファンの熱さがよく分かります。

 

fhana

fhana『青空のラプソディ』(ランティス)

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また、2月18日の公開から既に大きな話題となっている『劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- 』関連で、主題歌のLiSAが2位と貫禄の強さを見せ、さらに同映画にAR(拡張現実)アイドルのユナ役としてゲスト出演している神田沙也加のボーカル曲が9位、10位、13位、16位、17位と大暴れ(笑)しています。これらは、アルバム5位のサウンドトラックに収録されており、このことから、梶浦由記の音楽ファンの多さもさることながら、彼女のボーカル曲だけを選んで購入したファンも結構いるということでしょう。

神田は、アイドル歌手としてデビュー→ミュージカル女優として地道な実績→『アナと雪の女王』の声優・歌手として大ブレイク→ロック色の強い音楽ユニットTRUSTRICKで精力的に活動→そして、今回はARアイドルと、紆余曲折を経つつ、確実に成長を遂げています。今回の5作で、バラードもアップテンポもドラマティックに歌えることを改めて認識させられるので、今後もアニメ関連でオファーが殺到しそうな気がします。

 

ソードアート・オンライン

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- Original Soundtrack』(ソニー)

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なおTOP20内はアニメ関連作が大半の中で、8位にUVERworldの映画『新宿スワン』の挿入歌「エミュー」がランクイン。3位のアニメ『青の祓魔師』主題歌となっているシングル『一滴の影響』のカップリング曲ですが、こちらはアグレッシブな曲調で、まさに“不夜城”を舞台とした映画がイメージされます。アニメファンのみならず、こうしたロックファン、さらに、女性ファンのみならず男性ファンにも人気の楽曲が多いことが、彼らが10年以上第一線でいる理由なのでしょうね。

 

UVERworld

UVERworld『一滴の影響』(ソニー)

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■ハイレゾ・アルバム ランキング 集計期間:2016年1月30日~2017年2月26日

月間 今週 タイトル アーティスト名 発売元
1 4 1 Catch the Moment LiSA S
2 8 4 1 20 HD Jazz Volume 1 Various Artists SRT
3 24 14 5 1 「マクロスΔ」レアトラック集 ワルキューレがとまらない ワルキューレ V
4 16 9 4 2 THE KIDS (PCM 96kHz/24bit) Suchmos SS
5 2 5 劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- Original Soundtrack ソードアートオンライン S
6 15 17 6 3 君の名は。English edition RADWIMPS U
7 1 SPLASH☆WORLD miwa S
8 14 2 5th Anniversary Best 家入レオ V
9 3 Opportunity 花澤 香菜 S
10 32 31 8 6 Fairy Castle(Deluxe Edition) ClariS S
11 22 15 10 12 Fantôme 宇多田ヒカル U
12 47 33 13 5 さよならバイスタンダー YUKI S
13 84 84 14 4 シンドローム 鬼束ちひろ V
14 34 23 12 8 Ambitions ONE OK ROCK AS
15 21 18 9 18 ベスト・サウンドトラック・ハイレゾ・セレクション・プレミアム~オールタイム・ベスト~ Hollywood Movie Works RA
16 81 16 2 Climber’s High! 沼倉 愛美 V
17 28 19 3 イシュカン・コミュニケーション ちょろゴンず LA
18 18 3 SCANDAL SCANDAL S
19 5 Shadow and Truth ONE III NOTES LA
20 23 13 15 17 Utada Hikaru Single Collection Vol.1 宇多田ヒカル U

※2017年1月30日~2月26日の4週間を「月間」とした。「今週」を含め4週分の週間推移は小さく併記した。「-」はTOP100圏外。網掛けは、8週以上チャートインしているロングヒット。

メーカー一覧:AS=A-Sketch、LA=ランティス、RA=Rambling RECRODS、S=ソニー、SRT=Sound Recording Technology、SS=スペースシャワーネットワーク、U=ユニバーサル、V=ビクター

 

1位は、シングルが2位だったLiSAの『Catch the Moment』。通常、これは、シングルパッケージに収録されている全3曲をダウンロードしたファンも大量にいるということです。ちなみに、ハイレゾシングル1曲の単価は540円なのに対し、ハイレゾアルバムとしての本作は3曲収録で1200円と、まとめ買いにより多少安くなるのですが、それでもノンタイアップ曲のカップリング2曲も好きなファンが多いということから、LiSAのハイレゾファンの多さがよく分かります。特に、発売2週目に、「ミュージックステーション」に出演したことが、アニメ作品が多くなりがちなセールスの急落が防げたのでしょう。3月6日にはピコ太郎の武道館公演にもゲスト出演するそうで、究極の異色コラボでさらにファンが拡大するのか要注目です!

 

LiSA

LiSA『Catch the moment』(ソニー)

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2位には、ジャズの不朽の名曲を集めたコンピレーション『HD Jazz Volume 1』が2月4日の配信開始から急上昇しランクイン。15曲1000円というお値打ち価格から、15位の『ベスト・サウンドトラック・ハイレゾ・セレクション・プレミアム~オールタイム・ベスト~』 同様にロングヒットすることでしょう。

そして、7位にmiwa、8位の家入レオ、12位にYUKI、13位に鬼束ちひろ、さらにロングヒット中の宇多田ヒカル(11位&20位)と、今月は女性シンガーソングライターの作品がTOP20に6作もランクイン。自ら作詞や作曲した作品が多い点では、1位のLiSAや声優としても人気の9位花澤香菜、18位のロックバンド、SCANDALも共通しているので、合計9作が自作系女性アーティストが占めていると言えます。

これは、男性を中心に熱心な音楽ファンが多いがゆえに、女性アイドルの多いCDチャートとは対照的に、ハイレゾでは自作系女性アーティストが強いと考えられます。(ちなみに、手嶌葵もハイレゾに強いので、必ずしも“自作”に固執しているのではなく、アーティスト性の高さを重視しているファンが多いということでしょう。)

 

その中で、miwa『SPLASH☆WORLD』が週間で初登場1位、そのたった1週で月間1位となるほどの勢いがあります。本作は、通算5作目となるオリジナルアルバムで、「夜空。feat.ハジ→」(男女コラボの泣き歌)、「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」(ドラマ『コウノドリ』主題歌)、「Princess」(本人出演のお菓子のCMソング)、「シャンランラン」(アニメ『ふらいんぐうぃっち』主題歌)、「結 -ゆい-」(『NHK全国学校音楽コンクール』課題曲)と、シングル曲だけでも盛り沢山なのに、さらに坂口健太郎とmiwaのW主演映画『君と100回目の恋』の同名主題歌や劇中歌「アイオクリ」のmiwaバージョン、トドメ(?)にスコット&リバースと共作・共演している「変わらぬ想い」や、ロックバンドandropが演奏参加した「泣恋」と、フックのある曲ばかり。

実際に聴いてみると、そのタイアップのドラマ性に合わせたのか、また泣き歌が多いこともあってか、バラードが多いので、彼女ならではの地声とも裏声とも判別のつかない力強い高音が堪能できる作品となっています。ハイレゾならば、その魅力は倍増するでしょう。

 

miwa

miwa 『SPLASH☆WORLD』(ソニー)

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以上のように、今月はアニメ作品のヒットが目立ちましたが、来月もランクインするかどうかが、本当のヒット曲かどうかの見極めポイントとなるでしょう。来月も要チェックです!

 


 

【筆者プロフィール】

臼井 孝(うすい・たかし)

1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やau Music Storeの監修、さらにCD企画(『エンカのチカラ』シリーズや松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルなど)をする傍ら、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた記事を執筆中。日経エンタテインメント!2017年5月号では、20年分の音楽チャートについてあれこれ分析しています。この音楽市場の激動の20年間の読み解きにご参考下さい♪ Twitterは@t2umusic