日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.5

Vol.5 Theme : 「変化を恐れぬ子供達

 

 先日NHK『SONGS』にて、俳優の坂上忍氏のナビゲートによるデヴィッド・ボウイ特集が放映され、同世代で同じくボウイ・ファンの自分も楽しく拝見させていただいたのですが、そこで番組の核心とも言える発言がとても興味深かったので、ここにその要約を引用させていただきます。

「時代ごとにスタイルは変われど、実験精神、批評精神は一切ブレていない」

 ボウイの本質を的確に表現した素敵な言葉が印象的でしたが、ボウイの音楽を知らずに聞くと「コロコロ変わるのにブレないとは?」と、その矛盾が気になる言葉でもあります。

 60年代中頃、当時の一大ムーブメントであるモッズBANDとしてデビューしながらも、陽の目を見ずにBAND解散の憂き目にあったボウイは、70年代が近づくとシーンに背を向けるような活動を始めます……まずはボブ・ディラン的なフォークROCKへのアプローチ。最初のヒット曲となる「Space Oddity」は、既に60年代に使い古されたかのような音楽スタイルでしたが、当時打ち上げが成功したばかりのアポロ11号の月面着陸のニュース映像に使われたことで注目を浴び大ヒット。テクノロジーの進化というモダンな現象に対して、まるで古き良き時代との別れを惜しむかのような、センチメンタルな手法を、フォークによって表現したのです。それはまるでテレビのニュース番組の演出のようでしたし、実際にテレビのニュースは彼の音楽をそのように使用し、まんまとボウイの術中にハマったというわけです。

 時代時代のニーズは意識しながらも、それをそのままではなく、逆の切り口や、斜め45度ぐらいから鋭角に表現してみせるそのユニークな手法で、その後も数多くのヒット曲を量産し、PUNKの父とも言われるグラムROCKの旗手に躍り出たボウイ。その後もジェームス・ブラウン的FUNKを、大ヒット曲「Fame」等であえてヘナヘナな演奏で表現し「これはプラスチック・ソウル(安物のソウルMUSIC)なんだ」とうそぶいてみせる秀逸なセンスは、まさに早過ぎたPUNKでした(実際SEX PISTOLSのアイコン、シド・ヴィシャスは熱烈なボウイ・ファン)。

 そしてボウイの凄さを物語っているのが1971年の名曲「Changes」で、まるでその後の自分のスタイルの変遷を宣言するかのような歌詞なのです……詳細は実際の歌詞を読んで貰えば判りますが、曰く『唾を吐くほど嫌悪されるキッズ達は 世界を変えようとしている』……21世紀の現在でも頭の固い大人達がしている事を、40年も前に既に言い当ててしまっているのです。

おそらく世界で初めて化粧をしてステージに立った男性アーティストであるデヴィッド・ボウイ。彼の先見性と革新性は、聴けば聴くほどに深まっていきます。まだ未聴の方はこの機会に是非、彼の魅力に触れてみて下さい。

 

「Space Oddity」「Fame」「Changes」など
代表曲を収録したリマスター版ベストアルバム!

Nothing Has Changed
(The Best Of David Bowie)

 
 
 

 
 
【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。