日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.36

vol.36 Theme : 「ガンズの来日は行った?」

 

昭和の、いや1900年代のロックスター達の訃報が止まらない……今度はレオン・ラッセルだ。年齢やらタイミングやらを鑑みれば仕方のない事だと判っていつつも、時代や科学? 文化が? いくら進歩しても、少し前の文化遺産が忘れ去られてしまい、芸術の? 素晴らしき音楽の? ストレージ化なんてちっとも進みゃしない。気取ったガジェット作ってる暇があったら少しは「遺(のこ)し方」も工夫して欲しい……ってのはリスナーのワガママだろうか?

アクセル・ローズばりのイケイケなルックス、酒とタバコでつぶれたであろうハスキーボイスで、相当ベタベタなロックスター像を抱かせるレオン・ラッセルだが、もともとはセッション・キーボーディストとして地味目に? キャリアをスタート。ビーチ・ボーイズジャン&ディーンザ・バーズといった60’sLAサウンドから、悪名高き名プロデューサー、フィル・スペクターが手がけたロネッツクリスタルズといったガールズグループまで八面六臂の活躍ぶり。

そんな彼が表舞台に出るきっかけとなったのは、ビートルズのカヴァーで頭角を現し始めていたイギリス人シンガー、ジョー・コッカー。豪快なボーカル・スタイルでお馴染みのジョー・コッカーに提供した「Delta Lady」が1969年に米国でもヒットし、TVやLIVEでバックを務めるうちにバックバンドは大所帯に膨らみ、遂にはジョー・コッカーのLIVEアルバム『Mad Dogs & Englishmen』へと発展。様々なカヴァーを含んだアルバムは大ヒットし、更に収録曲でレオンのペンによる「Superstar」をカーペンターズがカヴァーして世界的な大ブレイクを記録した事で、彼の評価は更に高まる。

満を持して1970年に発表されたソロ作『Leon Russell』は、チャートアクションこそ地味だったものの、希代の名曲「A Song for You」を含む名盤として今でも愛され、その後もコンスタントにアルバムをリリースして、1972年発表の『Carney』は遂に全米2位を記録する大ヒット。「A Song for You」に並び数多くカヴァーされている名曲「Tightrope」や「This Masquerade」等のシングルヒットも放つ。

アメリカ南部の泥臭さをPOPに昇華した彼の<スワンプ・ロック>サウンドは、ビートルズ解散後のジョージ・ハリスンエリック・クラプトンら多くの英国人ミュージシャンにも影響を与え、ジョージはバングラディシュ・コンサートに彼を招聘。クラプトンは同じくスワンプ・ロックの旗手デュアン・オールマン(オールマン・ブラザーズ・バンド)を迎えて「レイラ」等の特大ヒットを放つことになり、ローリング・ストーンズは勿論、エルトン・ジョン他、70年代のアーティスト達を大いに刺激して数々の名曲を生み出す原動力となった。

その後もコンスタントにソロアルバムを発表する一方、セッションマンとしての仕事もバリバリこなし、80年代にはカントリーの大御所ウィリー・ネルソンとの仕事でカントリーチャートも賑わす等、引き続き八面六臂の大活躍。数多くのプロデュース業や、リンゴ・スターのオールスターBANDへの参加等々、常に仕事の虫だった彼もさすがに90年代後半からはソロのリリースが途切れがちに。しかし2000年代にはロックの殿堂入りも果たしてジョン・メイヤーと共演する等、まだまだ現役感はバリバリあったのだが……ここ数年は心臓病を患って入退院を繰り返していた模様。今年11月13日、遂に帰らぬ人となってしまった……。

トランプ新政権下で音楽のみならず、社会や経済も大きく変わろうとしているアメリカの、もしかしたら最良の古き良き文化を伝える<スワンプ・ロック>。泥臭いイメージとは裏腹に、親しみ易さやPOPさも併せ持つし、何よりバラードの美しいこと美しいこと……この機会に多くのリスナーの耳に届いて欲しいし、おそらくレオン・ラッセルが生涯を通してバリバリ働き続けたのも、そんなシンプルな想いからだったのかもしれない。彼の最大のヒット曲「A Song for You」の歌詞の通り、彼のメロディには沢山の愛が隠されている。

 

Leon Russell/Leon Russell

Leon Russell
「Leon Russell」

 

Carney/Leon Russell

Leon Russell
 「Carney」

 


 

プロフィール

日高央(ひだか・とおる)

1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

日高央(ヒダカトオル)(@hidakatoru) | Twitter
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テージ・フロアーで共感した。心に焼き付いた全ての光景を1 作に収めたこれが「THE STARBEMS」と呼ぶべき作品。