牧野良幸のハイレゾ一本釣り! 第2回

第2回:吉田美奈子「夢で逢えたら」

~永遠の“ハマり曲”が、ハイレゾでもっと“ハマり曲”に~

 

 

 「夢で逢えたら」と言えば、ほとんどの人が作曲者である大滝詠一の名前を浮かべることだろう。「夢でもし、あえ~たら~♪」と始まった瞬間、大滝詠一独特のポップなリズム(ナイアガラ・サウンド)にドップリと浸るからである。

 この曲との出会いは兄貴が買ってきたLP、吉田美奈子の『FLAPPER』だった。当時兄貴は僕のステレオでレコードを聴いていたので、僕の部屋にLPを置きっぱなしにしていた。僕はそれらを興味半分、ひまつぶし半分でつまみ食いしていたのだ。

 70年代、洋楽かジャズ、少々のクラシックしか聴かなかった僕にとって、日本のポップスは申し訳ないがマイナーな音楽だった。一方兄貴はその“マイナーな”日本のポップスを好んでいた。はっぴいえんどから連なる、一連の人たちである。それらLPをこそっと聴いているうちに、今から思えば貴重な出会いがあったのだった。

そんな兄貴のレコードで、ダントツで気に入ったのが吉田美奈子の『FLAPPER』だった(兄貴のレコードなのに、今でも僕が持っている)。そのなかでも「夢で逢えたら」は格別の1曲だ。

 いわゆる“ハマり曲”とは「夢で逢えたら」のような曲を言うのだと思う。何度も何度も聴きたくなるのである。「夢で逢えたら」を名曲たらしめているのは、もちろん大滝詠一の力なのだが、吉田美奈子のヴォーカルも唯一無比であると思う。幾多のカバーがあっても、やっぱりこの曲は吉田美奈子で聴きたい

 世間では、気の強い女の子が好きな男の子に対して、普段はツンツンしているが、思いがけずデレデレしてしまう、それを「ツンデレ」と言うらしい。のちに“ファンクの女王”と言われるほどのパワフルさがある吉田美奈子だから、よけいに「ツンデレ」な歌い方に男心をくすぐられてしまうのだ。曲が始まると、自分も夢の中にいるかのように陶酔してしまう。

 これはハイレゾで聴いても変わらない。昔と同じように何度でも聴いてしまう。今はボタンひとつで何回も繰り返しができるからなおさらだ。おまけにハイレゾの高音質である。吉田保のリマスタリングが、昔聴いたレコードの持ち味を十二分に伝えている。やっぱりとまらないよ~。高音質の時代になり、いつか「ハイレゾで逢えたら」と思っていた「夢で逢えたら」。ぜひ聴いてみてほしい。

 

 


 

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吉田美奈子『FLAPPER』

 

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牧野 良幸 プロフィール
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。