牧野良幸のハイレゾ一本釣り! 第26回

第26回:クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」

~次世代のバンドだったクイーン~

 

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ハイレゾの「空気感」が壮大なクイーン・サウンドを鮮やかに彩る!

 

 クイーンのデビューが73年ではなく72年だったら……。僕が今も思うことである。音楽に多感な10代、それも10代前半というのは、たった1年の差でも、同じ音楽が非常に違ったものになってしまうものである。その時間差のせいで、僕の場合、あまりうまく出会えなかったのがクイーンだ。

 クイーンが『戦慄の王女(Queen)』でデビューした73年は、ちょうどプログレやハードロック、シンガーソングライターが円熟期の真っ最中だったと思う。当時僕は高校1年生、彼らを追いかけることで精一杯だったから、クイーンに反応する余裕がなかった。マズいことに出だしにつまずくと、なかなかそのバンドに食指が伸びないお年頃でもあった(僕だけの話ですよ)。

 その後もクイーンは74年に『クイーンII(Queen II)』、そして『シアー・ハート・アタック(Sheer Heart Attack)』を発表。ここらでようやくクイーンが力ずくで僕の中に入ってくることになる。「キラー・クイーン」の大ヒットである。まるでバンドのテーマソングでもあるかのように、FMで耳にタコができるくらい聴いた。

 この頃を境にプログレ、ハードロック、シンガーソングライターは衰退を始め、変わりにクイーンが第一線に踊り出たのは、僕も認めるところだった。購読していた『ミュージック・マガジン』の表紙もクイーンが多くなった記憶があり、日本では女の子にアイドル的に人気が出てきたのを横目で見ていた。そして傑作『オペラ座の夜(A Night at the Opera)』(75年)を発表。シングル「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットはクイーンの人気を決定的にした。というか唯一無二のものにした、と言うべきか。

 唯一無二。これはクイーンの音楽を初めて耳にしたときから感じていたことだった。ハードロックのような迫力、プログレのような展開、そして何より複雑なコーラスワーク。こんなに70年代ロックの特色を、ひとつのバンドが完璧に兼ね備えたことはないはずである。

 最初にクイーンのデビューがもう少し早ければと書いたが、今思えばクイーンは僕には新しい音楽、次世代のバンドだった気がする。当時クイーンを他のバンドより一周遅れているようにとらえていたのは、ひとえに僕の“老耳”のせいだったと思う。「ボヘミアン・ラプソディ」にしても、オペラ的な構成を「すげぇな!」と思ったのにかかわらず、その真価を認める勇気をもたなかった。

 とはいえ僕もクイーンには影響されまくっているのである。「ボヘミアン・ラプソディ」のあとも、「バイシクル・レース」「フラッシュ・ゴードンのテーマ」「レディオ・ガ・ガ」などのその後のヒット曲はいやでも覚えた。これらを無視できる音楽ファンはいなかっただろう。クイーンの音楽は独特なのにメロディは聴き心地がいいのである。さらにはフレディ・マーキュリーのイメージ・チェンジも重なって、クイーンは80年代も“唯一無二”化していくのであった。

 そんな僕にとって今回クイーンのハイレゾ化が始まったことは嬉しいかぎりである。今なら客観的にクイーンを聴くことができる。

 僕が多感な時にスルーしてしまった初期のアルバムを、今回ハイレゾで聴いてみると、クイーンはデビュー作から一貫したスタイルを取ってきたなあと思う。『戦慄の王女』『クイーンII』『シアー・ハート・アタック』と作品を重ねるにつれて、彼らが登り調子になるのが分かる。その頂点はもちろん傑作『オペラ座の夜』で迎えるわけであるが。

ハイレゾの音の特色は一言でいって空気感につきると思う。つまりスピーカーから飛び出す際に、音のまわりに余白が感じられて心地良い。クイーンはステレオを極限まで利用した音作りなので、空気感があるとより立体的な音響となり劇的に効果が高まる。もちろんハイレゾの音自体が太いことは言うまでもない。これまでの音質を体験するのは当時、高校生の僕のオーディオ装置ではまったく無理だったと思うから、オヤジになってクイーンを聴くのも悪くない。ハイレゾであの頃の“100倍返し”の音で聴こうと思う(笑)。

もちろんクイーンの絶頂期は『オペラ座の夜』以降も続く。今後も中期、後期のアルバム、そしてベスト・アルバムもハイレゾ化されていくというから楽しみである。

 

 ハイレゾ配信中!

 

戦慄の王女
Queen

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クイーン II
Queen II

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シアー・ハート・アタック
Sheer Heart Attack

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オペラ座の夜
A Night at the Opera

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華麗なるレース
A Day at the Races

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牧野 良幸 プロフィール

1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。 

マッキーjp:牧野良幸公式サイト