【ライブレポ】「早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”」 キャラクターソングの宝箱をもう一度開けて

2019年10月16日(水)、東京・Zepp DiverCityにて「早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”」が開催された。

本ライブは、2020年に早見さんがアーティスト活動5周年を迎えることを記念して開催された、ファンにとっては溜まらない企画ライブだ。ライブタイトルが示唆する通り、早見沙織さんがリリースしてきたオリジナル楽曲に加えて、これまで声優として歌唱してきたキャラクターソングのカバーもセットリストに盛り込まれた。

 

トップイメージ

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会場に足を踏み入れると、少し懐かしいシティポップのBGMが流れている。
場内アナウンスは早見さん自身が担当。“CHARACTERS”の企画内容に合わせてか、いつもの優しい声質から子供のような声質まで、様々なキャラクターに扮して場内アナウンスを送る。

会場が暗くなり、ドラムソロからスタート。バイオリン、ベース、ギター、コーラスと順々にバンドメンバーがステージ上に揃い、そして最後に早見さんが登場する。スパンコールが華やかな黄色いドレスと、ふわふわに巻いた髪の毛が素敵だ。
最初に演奏する曲は、オリジナル楽曲『やさしい希望』。手を広げながら歌う早見さん。伸びやかな歌声と、力強いギターサウンドのコントラストで、さらに曲に深みが増して聴こえる。最後のフレーズ「ずっとね」を、いつもよりたっぷりと歌い上げる。

次に続くのは、アニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』アゲマキワコ役として歌唱したキャラクターソング『木漏れ日のコンタクト』だ。イントロが流れ始めた途端、会場からは「待っていました」と言わんばかりの歓声が鳴り響く。
ドラムのスネアの音に合わせて、手拍子を鳴らす客席。早速のキャラクターソングの歌唱に、演奏が終わるか終わらないかのタイミングで、熱い拍手が沸き起こる。

「こんばんはー!」と客席に挨拶をする早見さん。
「知ってる曲も、初めて聴く曲もあると思いますが、是非まるっと存分に楽しんでください」と笑顔で話す。

そしてキーボードの音色と一緒に、オリジナル楽曲『その声が地図になる』を歌い始める。
2番の「受け止める」で一拍間を開けたり、ブリッジの「君だよ」を少し溜めて歌ったりと、ライブならではの歌いまわしだ。
歌いづらいリズムを難なくこなす姿が圧倒的だ。

ミラーボールが回り始め、客席でペンライトが揺れる。ここからはアッパーな楽曲が続く。
NAKED GENIUS』は、アニメ『神のみぞ知るセカイII』ハクア役として歌唱した楽曲。ライブハウスにベースの低音が鳴り響く。
ミラーボールが青からピンク、黄色へと変わってゆき、そのたびに早見さんの淡い黄色のドレスが染まる。早見さんが小さく拳を握ると、呼応するように客席から歓声が沸き起こり、会場はますますヒートアップする。
『Sacred Bullet ~虹の十字架~』は、キルマリア役で出演したゲーム『シャイニング・アーク』の劇中歌だ。足を大きく開いて、リズムを刻む早見さん。オリジナル楽曲の演奏ではなかなか見ることのない姿だ。
サビの最後で、人差し指を上に突き上げる。

ここで雰囲気は一転。ショパンのエチュード『木枯らし』をアレンジしたピアノソロが流れ始める。井川絵見役として出演したアニメ『四月は君の嘘』の挿入歌、『Have a strong will~木枯らし』だ。
「きっと何も負けない」という力強いメッセージと、美しいメロディーとの組み合わせが、早見さんの歌声にマッチする。
早見さんの手の動きや息継ぎに合わせて、バンドメンバーも息ぴったりの演奏を見せる。

「こんな感じです(笑)」
クオリティーの高い演奏と、いつも通りのまったりとしたMCのギャップに、会場からは笑いが起きる。
「私も未知数なところがありますが、いろんな角度から楽しんでいただければと思います」と話す早見さん。今回の“CHARACTERS”というライブを企画した理由について触れる。「作品が一旦終わってしまうと、なかなかキャラクターソングは生で歌う機会が少なくなってしまうんです。でも、すごく素敵な楽曲がたくさんあるんですよ。だから宝箱にしまっておくだけではなく、宝箱をもう一回開けて、今の自分で、素敵なバンドで歌ったら、もっともっと良さが伝わるんじゃないかなと思って。」

そして、「あれ?次何の曲だっけな?」と一笑いを誘った後に続くのは、オリジナル楽曲の『夢の果てまで』だ。
スタンドバイクを、大切に抱えるようにして歌いあげる。
郷愁を覚えるシンセサイザーの音色と、バイオリンの音色が、美しく絡み合う。

ここからは、懐かしのキャラクターソングが続く。
まずはアニメ『セキレイ』結役として歌唱した、『きみを想うとき』。「午後の日差し」のようなオレンジ色のライトが、会場を照らす。
そしてアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』新垣あやせ役として歌唱し、同作品のEDとしても起用された『想うコト』。途中でギターのカッティングを入れ込んだ、おしゃれなアレンジだ。

アシンメトリーな裾のドレスに着替えて歌い上げるのは、アニメ『そらのおとしもの』イカロス役で歌唱した『fallen down』。
両手を挙げたり、ジャンプをしたりと、客席も大きく盛り上がる。

間髪入れずに、アニメ『我が家のお稲荷さま』EDの『風がなにか言おうとしている』が続く。客席に手拍子を促し、まるで早見さんの歌声に包み込まれるように、会場の温度が柔らかく高まっていく。

「このブロックはかなり懐かしいナンバーですよ!」と笑う早見さん。
「それぞれのキャラソンは、一人一人の誰か刺さる人の心を撃ち抜いていくんじゃないかと」と話すと、会場からは大きな歓声が起こる。
今回バンド編成で演奏するにあたって、当時の音源を聴き直したという早見さん。高校~大学時代に歌った音源をバンドメンバーと一緒に聴き直すのは、公開処刑に合っているような気持ちだったと語りつつも、歌詞、メロディーやディレクションまで含めて当時のレコーディング風景を思い出して、自分自身の軌跡を辿っていくような体験ができたと話す。

早見さんが奏でるシンセサイザーの音で始まるのは、オリジナル楽曲の『Jewelry』。CDに収録された音源よりも、少し軽やかな演奏だ。バンドメンバーとともに、幾度も練習した様子が伺える。
「大丈夫」という歌詞に合わせて、客席からはたくさんの手が挙がる。
曲中ではバンド紹介も。バンマスの黒須克彦さんが披露するランニングベースが、かっこいい。

次に、アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のココロ役として、そしてユニットXX:meとして歌唱したED曲『ダーリン』が続く。
ステージ上で、小さくジャンプしながら手拍子をする早見さん。青いペンライトが会場中で光る。

ここでピアノソロと早見さんの歌声が重なり合い、オリジナル楽曲『新しい朝』が始まる。エレキギターからアコースティックギターに変わり、一気に柔らかい雰囲気に。
「LaLaLa」の歌詞に合わせて、早見さんが手を左右に振ると、客席からは大きな合唱が起こる。

「最後の曲です」との言葉とともに始まるのは、鶴見知利子役として出演していたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のED曲、『secret base~君がくれたもの~』。コード進行やリズムパターンにこだわりの垣間見えるアレンジで、何度も聴いたことがあるはずの曲がまた新鮮に聴こえる。
1番、2番、3番と少しずつ盛り上げながら、最後の「最高の思い出を」という歌詞でふっと力を抜く表現力が圧巻だ。
ゆっくり大きなお辞儀をしてステージを去って行く

そして鳴りやまないアンコールの声に応え、オリジナル楽曲『レンダン』のメランコリックなメロディーが流れる。
ライブTシャツにきらきらとした青いスカートを着た早見さんが登場する。

「アンコールありがとうございます!」との言葉に続くのは、オリジナル楽曲の『メトロナイト』。
「もっと」という歌詞に合わせて、マイクを客席に向けるシーンも。
息がちに歌ったり、駄々をこねるように歌ったりと、様々な歌いまわしを見せる。

ここでファンにとって嬉しい告知がされる。
『無双OROCHI3 ultimate』主題歌の新曲『Statice(スターティス)』は、2019年12月18日(水)に配信限定リリースされることが決定。英語詞バージョンに加え、初のハイレゾ音源が同時配信される。「良い音で聴くのに、良い楽曲だと思いますよ」と話す。
また2020年に全国ツアーを開催することが発表された。自身の誕生日である2020年5月29日(金)の東京公演を皮切りに、全国7都市を回る。
さらに2020年春にミニアルバムをリリースすることも発表。アーティストデビュー5周年にふさわしい、忙しい1年になりそうだ。

「新曲といえば!」とはしゃぐ早見さん。ライブ用の新曲『ワンスモア』を披露する。ファンキーなギターと、スラップベースが印象的な楽曲だ。
「もう一度聞かせて/あなたの声を」という歌詞に合わせて、コールアンドレスポンスを求める。会場からの大合唱を前に、早見さんは「とっても綺麗よ」とメロディーに乗せて歌う。

1番最後に歌うのは、川壁桃花役として歌唱したアニメ『桃華月憚』ED曲、『この世界がいつかは』。早見さんが15歳の頃、1番最初にキャラクターソングとしてレコーディングをした楽曲だという。
白いミラーボールが会場を照らす。透き通るような高音を、胸に手を当てて歌いあげる。

マイクを両手で持ち、「ありがとうございました」と丁寧にお辞儀をする早見さん。
「また大阪でお会いしましょう」と後に控えた大阪公演についても触れながら、「早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”」東京公演は幕を閉じた。

 

アーティスト活動5周年を記念して開催された企画ライブ、「早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”」。それは、キャラクターソングの人気を借りるという意図ではけしてなく、キャラクターソングを今の早見さんと今のバンドメンバーで解釈し直して、生き返らせるという素敵なコンセプトだった。ライブ用の新曲『ワンスモア』の「もう一度聞かせて/あなたの声を」という歌詞は、客席に向かってだけではなく、キャラクターたちに向かって呼びかけたものだったのかもしれない。きっとそれぞれのキャラクターたちも、早見さんの歌声に喜んでいたことだろう。
声優の枠を超えた圧倒的な歌唱力をもって、2020年にアーティストデビュー5周年を迎える早見沙織さん。これからの活躍がますます楽しみだ。

 


 

2019.12.18 (wed)  各音楽配信サイトにてデジタルリリース!

「Statice」 (ヨミ:スターティス)
「Statice(English ver.)」 (ヨミ:スターティス イングリッシュバージョン)

配信楽曲

■「Statice」
作詞:早見沙織/作曲:田辺 望・伽羅奢・瀧口系太/編曲:前口 渉
■「Statice(English ver.)」
Lyrics:Saori Hayami/Lyrics in English:Eliana/
Music:Nozomi Tanabe, gratia, Keita Takiguchi/Arrangement:Wataru Maeguchi
■「Statice」(ハイレゾ音源)
■「Statice(English ver.)」(ハイレゾ音源)

 

早見沙織 プロフィール

卓越した演技力、美しい声質で多くのアニメ作品に出演するとともに、
数々のアニメキャラクターソングで披露してきたその歌唱力が高い評価を得てきた声優・早見沙織。

2015年8月にシングル「やさしい希望」でアーティストデビュー。2016年5月25日にはファーストアルバム「Live Love Laugh」を発売、オリコンウィークリーランキング6位を記録。
アルバムリリース後には、東京2か所、大阪1か所での初のワンマンライブツアーを敢行。このライブの映像を収録したMINIアルバム「live for LIVE」を同年12月21日に発売。
2017年、2018年には、自身が主役=花村紅緒をつとめた劇場版「はいからさんが通る 前編~紅緒、花の17歳~」、劇場版「はいからさんが通る 後編~花の東京大ロマン~」で作詞・作曲 竹内まりやによる主題歌「夢の果てまで」「新しい朝」をリリース。

さらに、2018年3月28日には「カードキャプターさくら クリアカード編」のエンディングテーマ「Jewelry」を担当。2019年12月19日にはおよそ2年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「JUNCTION」をリリースし、東京、大阪、広島、北海道での全国ツアーを開催した。
そして、アーティスト活動5周年に向け、2019年10月には自身で歌唱したキャラクターソングのセルフカバーも含む企画ライブ“CHARACTERS”を開催。同年12月18日には配信シングル「Statice」(ゲーム「無双OROCHI3 Ultimate」主題歌)をリリースする。

http://www.whv-amusic.com/hayamisaori/

 

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□桜田 夢子
音楽好きのアニメ・ゲームオタクとして、mora内ブログやTwitterにしばしば出没。
ライブレポートやレビューなどを随時執筆中。過去の記事はこちら