【クラシック新譜】虫の羽音や葉のざわめきとブレンドしたい音楽──NAXOSレーベル5月新譜『イギリスのチェロとピアノのための小品集』

 

 “アイルランド生まれのチェロ奏者ジェラルド・ペレグリンは、このプログラムにおあつらえ向きの丸みを帯びたトーンを生み出している”

────David’s Review Corner, May 2019

 

「一生懸命聴く」のにちょっと疲れちゃった……そんなときに。

「情熱的な」「渾身の」「魂をこめた」「孤高の」………

クラシックのアルバムや演奏会のチラシに並ぶ、重々しいキャッチコピーの数々。

 

ちゃんと愛そうとすると、ちゃんと真摯であろうとすると、アーティストもリスナーも、あるいはレコーディング・エンジニアも、ストイックな志で音楽に向かい合わざるを得なかったりする。もっと緻密な音へ。もっと傷のない音へ。もっと揺さぶられる音へ。

 

でも、全力全開のサウンドを一生懸命聴くのって……疲れてしまう瞬間もある。

 

息するのもためらうほどの圧倒的な沈黙の中で、老哲学者が世の真理を説くように奏でられるJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」。それももちろんいい。だけど、黒光りしたオーディオの前で腕組みして聴くんじゃなくて、お天気のいい5月の午後、野原に寝そべって、風に吹かれながらチェロを聴きたい日もある。虫の羽音や葉のざわめきとブレンドするとしっくり来るような録音があったっていい。

そんな風に思う方にオススメしたい、とっておきのアルバムがリリースされました。

 

「イギリス音楽はいいぞ」が、ここにある。

 

『イギリスのチェロとピアノのための小品集』

ジェラルド・ペレグリン(チェロ)/アンソニー・インガム(ピアノ)

AAC[320kbps] FLAC[96.0kHz/24bit]

 

 

1-6 ヴォーン・ウィリアムズ: イギリス民謡による6つの練習曲
7 ブリッジ: 4つの小品 – 第2曲 春の歌(チェロとピアノ版)
8 E.J. モーラン: アイルランドの哀歌
9 エルガー: ロマンス Op. 62 (チェロとピアノ版)
10 ディーリアス: カプリースとエレジー(チェロとピアノ版) – Caprice
11 ディーリアス: カプリースとエレジー(チェロとピアノ版) – Elegy
12 バックス: 民話
13 E.J. モーラン: チェロとピアノのための前奏曲
14 ディーリアス: チェロとピアノのためのロマンス
15 ブリッジ: 子守歌(チェロとピアノ版)
16 ヴォーン・ウィリアムズ: 「グリーンスリーヴス」による幻想曲(R. グリーヴス、W. フォーブスによるチェロとピアノ編)

 

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ。フランク・ブリッジ。エドワード・エルガー。フレデリック・ディーリアス。

NAXOSレーベルは、長年にわたってこれら19世紀後半~20世紀中盤のイギリス近代の音楽家の作品をレコーディングし、多くの知られざる作品を送り出してきました。

『イギリスのチェロとピアノのための小品集』も、そうした取り組みのひとつとしてリリースされました。

「革新性を追求すること」が良しとされるクラシック音楽の文脈のなかだと、「保守的」という一言で片付けられてしまいがちな近代イギリス音楽。しかしその音楽は、メロディアスで、抒情性にあふれ、今日の映画音楽やイージー・リスニングに直結するような魅力をたたえています。

イギリスの作曲家たちは、自国の民謡のメロディや周辺国のカルチャーからの影響のもと、彼ら独自の創意工夫でもって、このような作品を生み出してきました。

 

もちろんイギリス人作曲家の作品にも、難解な曲、息もつかせぬ派手な技巧を繰り広げる曲、ぐいぐいと感情で迫る曲はたくさんあります。けれど、この『イギリスのチェロとピアノのための小品集』の選曲は、「イギリス音楽」の中道をゆく、田園風景を彷彿とさせるような、のどかで聴きやすい曲に徹底してこだわっています。

 

チェロのジェラルド・ペレグリンはアイルランド、ピアノのアンソニー・インガムはイギリスに生まれ、ともに英国王立音楽院(Royal Academy of Music)の出身。NAXOSレーベル初録音のふたりですが、イギリス音楽の魅力をよく理解し、歌うところも決して歌いすぎない、控えめで丸みのあるサウンドを作り上げています。まさに、選曲のコンセプトにぴったり寄り添う好演。こうした抑制力もまた、アーティストの力量のひとつだといえるでしょう。

 

その他のオススメ「イギリス音楽」

・ヴァイオリンとピアノのためのイギリス音楽集

『イギリスのチェロとピアノのための小品集』とのセット聴きをオススメ。愛らしい田園風の小曲から、ダイナミックでエモーショナルなソナタまで。

FLAC[96.0kHz/24bit]

 

・ヴォーン・ウィリアムズ: 歌曲集「旅の歌」/「命の家」/他

近代イギリスを代表する作曲家、ヴォーン・ウィリアムズ。「クラシックの歌唱が苦手」な人にこそオススメしたい。等身大で叙情的な歌曲集。

AAC[320kbps] FLAC[44.1kHz/24bit]

 

 

・フィンジ: 英国歌曲シリーズ 第12集

イギリス郊外の田園でリンゴを栽培しながら曲を書いたという作曲家がおくる、自然の息吹をたっぷり感じられる歌曲集。

AAC[320kbps] FLAC[44.1kHz/24bit]

 

・カラーズ・オブ・ザ・ハート ~ ディーリアス、ドビュッシー、ラヴェル、グリーグ/ヴァイオリン作品集[Digital version]

英国で活躍するヴァイオニスト・小町碧による、「ディーリアスとゴーギャン」をテーマにしたコンセプチュアルな1stアルバム。

AAC[320kbps] FLAC[96.0kHz/24bit]

 

 

・浅川和宏オーボエリサイタル ~イギリス・ドイツ作品集~

ドイツとイギリスの魅力的なメロディを、典雅で哀愁漂うオーボエで。ノスタルジックな雰囲気あふれるM. ヘッドの作品がオススメです。

AAC[320kbps] FLAC[192.0kHz/24bit]