ピアニスト、イリーナ・メジューエワのハイレゾファイルがステレオサウンド・レーベルから登場

これまで若林工房よりCDで販売されていたイリーナ・メジューエワさんのアルバムが、96kHz/24bitのハイレゾファイルとしてステレオサウンド・レーベルから発売されます。全11タイトルは、2021年2月から、3回に分けてリリースされる予定です。

この度リリースされた第1回の4タイトルはショパン、ベートーヴェン、リスト、ドビュッシーの作品で、メジューエワさんの多面的な魅力が味わえる幅広いレパートリーがラインナップされています。

ショパン:ノクターン集(21曲)

FLAC[96.0KHz/24bit]

 

ベートーヴェン:<悲愴>・<月光>・<熱情>

FLAC[96.0KHz/24bit]

 

リスト:巡礼の年

FLAC[96.0KHz/24bit]

 

ドビュッシー作品集

FLAC[96.0KHz/24bit]

そして、第2回(3月発売予定)は、スクリャービン、ラフマニノフ、チャイコフスキーといったロシアの作曲家の作品を発売。ロシア出身のメジューエワさんを語る上では外せないレパートリーです。また同時に、バッハの平均律クラヴィーア曲集も第1、2巻を全曲セットでリリースされます。

第3回(4月発売予定)は、ショパンの4つの作品「エチュード」「プレリュード」「ワルツ」「ポロネーズ」。“ショパン弾き“としてのメジューエワさんの魅力を存分味わっていただけることでしょう。

今回のハイレゾファイルのリリースにあたってよせられたオーディオ評論家の宮下博さんによる解説文と、メジューエワさんのコメントをご紹介します。

 


ハイレゾファイルで聴くメジューエワの魅力

オーディオ評論家

宮下 博

イリーナ・メジューエワが若林工房へ連綿と続けてきた録音の数々が、ステレオサウンド社からハイレゾファイル(96kHz/24ビットWAV、FLAC)で登場する。すでにCDでリリースされ、高い評価を得た名品ばかりだ。しかも中身は、収録時の演奏を編集した段階のマスター音源(配信と同スペック)と同等で、音質の調整を施す前の“蔵出し”状態でリスナーに届く。この辺はデジタルファイルの大きなメリットだ。

ただし、ハイレゾファイルだから無条件に音が良い、という単純な話でもない。CDで出す際には、フォーマットに合せた細心のマスタリングが行なわれ、音源は最適化されている。実際、同じ演奏を比較試聴すると、CDには聴き慣れた安定感があって、明快な音色や骨太な肉付きが好ましい。

ではハイレゾファイルの音質上の利点は、どこにあるのか。情報量が豊富だから、楽器全体が鳴動する響きの深さや、ハーモニクスの厚みが増すのは当然だ。重要なのはその先、特有の高い鮮鋭度をもって演奏の本質が伝わってくることだ。

タッチの質量感や使い分けのグラデーションが緻密で、奏者の意図がより細やかに聴き取れる。そして、演奏空間全体を覆うテンションや空気感が濃厚で、歌い込みのタメやテンポの揺れ、呼吸の移ろいが、手に取るように表出される。つまり、マイクの向こう側にいるメジューエワの気配が、いっそうリアルなのだ。

メジューエワはコロナウイルス禍の間隙をぬって、実演にも取り組んできた。2020年12月には東京文化会館で、ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会を締めくくった。背中をピンと伸ばして鍵盤に向かい、作品の機微へ敏感に反応して上体を揺らしながら、彫りの深い劇的なベートーヴェン像を聴かせてくれた。今回のハイレゾファイルを試聴して、そのステージ上で振る舞うメジューエワの姿が、ふと眼前に浮かんだ。そんな感興をもたらしてくれるのが、このハイレゾファイルである。

 


ハイレゾファイルでのリリースにあたって

イリーナ・メジューエワ

ハイレゾファイルでは、虫眼鏡で一つひとつの音を覗き込むように、ひじょうに細かい音まで聴こえてきます。情報量が多いことでより立体感も出ますし、それでいてゆったりとした感覚で音を楽しむことができます。ハイレゾファイルで音楽を聴くということは、とても素晴らしい体験ではないでしょうか。

録音するときはいつも、空間に鳴ったピアノの音を大切にしてほしいと希望しています。皆様にも、私が演奏したときの会場の空気感まで体験していただければ幸いです。

試聴の様子