坂本龍一「The Best of 'Playing the Orchestra 2014'」スペシャルページ

本日9/28坂本龍一「The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’1st、2nd」配信開始。

今回は通常のハイレゾ音源に加え、LP用のハイレゾも同時配信、スペック、音づくりの違いにより16ファイルが一気に配信開始になっています。

詳細は以下のとおり。2パターンのマスタリングを担当した、マスタリング・エンジニア オノセイゲン氏によるハイレゾ聴き比べ解説も展開開始見ごたえたっぷりです。

 

 

 

*The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’ 1st

DSD(DSF)2.8MHz/1bit

DSD(DSF)5.6MHz/1bit

FLAC|96.0kHz/24bit

FLAC|192.0kHz/24bit

【EQ’d for LP】DSD(DSF)|2.8MHz/1bit

【EQ’d for LP】DSD(DSF)|5.6MHz/1bit

【EQ’d for LP】FLAC|96.0kHz/24bit

【EQ’d for LP】FLAC|192.0kHz/24bit

 

*The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’ 2nd

DSD(DSF)2.8MHz/1bit

DSD(DSF)5.6MHz/1bit

FLAC|96.0kHz/24bit

FLAC|192.0kHz/24bit

【EQ’d for LP】DSD(DSF)|2.8MHz/1bit

【EQ’d for LP】DSD(DSF)|5.6MHz/1bit

【EQ’d for LP】FLAC|96.0kHz/24bit

【EQ’d for LP】FLAC|192.0kHz/24bit

 


坂本龍一「The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’」今回2パターンのマスタリングを担当した、マスタリング・エンジニア オノセイゲン氏によるハイレゾ聴き比べ解説

 

<<聞き比べをしたのは以下2パターン>>

A:The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’【通常のハイレゾ】

B:The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’ EQ’d for LP 【LP用のハイレゾ】

 

A【通常のハイレゾ】の5.6MHz DSD(または192KHz24/32bit WAV)が、B【LP用のハイレゾ】=LPカッティング用EQ’d COPYの元になっています。

Aに①、②、③のような調整を施したのがBです。(注:①~③については文中下記にて説明)

 カッティングとは、レコードのもとになるラッカー盤(アルミ円盤にラッカーがコーティングしてある)に、音(の波形)を物理的にレース(溝)として切り込んでいきます。

CDやハイレゾという基本的にどんな音でも記録再生できるデジタルのメディアに対して、LPレコードの特徴として、④、⑤のような点があげられます。(注:④、⑤については文中下記にて説明)

ラッカー盤からスタンパーなどをへて(物理的にぎゅーと1枚ずつ)プレスされてできるレコードとは、レコードの物理的制約(サンプリング周波数にあたる時間軸は無限ながら、周波数特性は20Hz〜15KHz、ダイナミックレンジは小さい)に音楽的におさめるためにベテランのカッティング・エンジニアが上記①、②、③のような調整をあらかじ施します。これはレコーディング、ミキシングあるいはマスタリングの行程であらかじめ計算して仕上げることができます。

B【LP用のハイレゾ】とは、LPレコードになる前のLPレコード用の音です。

Bは以下の①、②、③の調整をした音ですが、当たり前ですが④、⑤のノイズは入っていません。ABの両方を聴き比べられるのは世界初の試 みです。

 

収録時間は、LPレコード(33回転12インチ)で片面18分程度が理想的です。15分ならラウド、23分超えではボリュームは低くなってしまいますが、クラシックなどはピアニッシモの部分もありますので30分近く切ることも可能です。

大きな音が入るとレース(溝)が深く、幅広く切り込まれますから、となりのレースにまたがらないよう間隔を広くとらなけらばなりません。広くとると面に切れる線数(1本なのですが)が少なくなり、収録時間は短くなります。ボリュームが大きい方がS/Nはよくなります。収録時間とボリュームのせめぎ合いです。

盤面積は変わりませんから、ほどよい具合にダイナミックレンジを収めることが重要なのです。急激に大きな音がくるとレースの間隔を開けなければなりませんので、CDやハイレゾではなんの問題にもならないピークをリミッターやマニュアルで抑えこんだりします。相対的にはピアニッシモの部分は持ち上げることにより、その分LPレコードのS/Nをよくすることができます。

さらに、レコード盤面を見てください。1曲目は直径30cmの盤の外側ですが、最後の曲は内周ですから直径10cmくらいしかないですね。回転数は同じですから、線速度が4倍くらい違います。ポップス、ロックではラウドなのが好まれますのでクラブ用の12インチなどは、外周だけ使って5~8分が1曲なんていうのもあります。見ての通り物理的に情報量が少ない内側は、外周にくらべて低音やボリュームがはいりにくく歪みが増えます。そういう特性をふまえてA面の最後の曲やB面の1曲目(音がよい)をどれにするかという編成を考えたりします。

左右に低音が広がっている音は逆位相といって、歪みや針飛びの原因となります。カッティングもレコード針も盤面より上とか、前後の動きは物理的に不可能です。B【LP用のハイレゾ】では低域が広がりすぎないように調整をしています。

レコードには周波数特性で15KHzくらいしか入りません。子音、サシスセソ=S、P、T、K音は、高域のするどい波形で、無理にカッティングすると歪みます。小さいレベルの子音は問題ありません。B【LP用のハイレゾ】では高域でその帯域が強いあたりは丸く落としてあります。ディエッサーやEQ(イコライザー) を使用して調整します。実はレコードの方がCDにくらべて相対的に暖かみがある 音だ、太い音だと言われるのはこのためです。

さらにLPレコードをかけた時には

レコードをかけると、カートリッジにより再生音の印象がずいぶんと違うことをご存知ですか?では、どれがもとのマスターテープに近い波形で再生してくれているのでしょう?DENONとNHKにより放送局向けに共同開発された「DL-103」は、放送局向けですから明瞭度こそあっても脚色づけのない音です。モデル名をあげるのは避けますが、SHUREやortofon、audio-technicaは、それぞれ特徴があります。オーディオとは再生してリスナーが楽しむものですから、どれが正解でどれが間違いというのはありません。ご自分の納得してお好きな音色で再生してくれるカートリッジやスピーカー、ヘッドホン、アンプを選べばよいのです。

音楽が始る前に(曲中でも)パチパチと針の音がしますね。このパチパチはもとのマスターテープには入っていません。最近、針音をミックスに足すというのもありますね。①、②、③をどんなにうまくやっても、ラッカー盤に溝を切り込み、外周はいいとして内周までまったく歪みなし(マスターテープに忠実に)というのは物理的にほぼ不可能です。