「令和2年アニソン大賞 ノミネート発表特番~2020年末SP~」がロフトプラスワンから二部構成で配信 令和2年アニソン大賞はLiSA「炎」と鈴木雅之「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」に決定

取材/テキスト:横倉 涼(mora)

イベントタイトル:令和2年アニソン大賞 ノミネート発表特番~2020年末SP~

開催日:2020年12月4日(金)

配信時間:第1部 [令和2年アニソン大賞選考会議] 18:30~20:30(予定) ツイキャスにて有料配信

     第2部 [令和2年アニソン大賞ノミネート発表特番] 21:00~22:30(予定) YouTube Liveにて無料配信

場所:ロフトプラスワン(新宿)

出演者:(以下敬称略)

冨田明宏(音楽プロデューサー / アニソン評論家)

吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)

齋藤P(アニメロサマーライブ 統括プロデューサー)

DJ和(J-POP / アニソン DJ)

前田 久(アニメライター)

松原正泰(アニメイト)


「令和を彩ったアニソンを讃えたい!」そんな想いを持ったみんなでつくる『令和アニソン大賞』。

今年は『令和2年アニソン大賞 ノミネート発表特番~2020年末SP~』として去る2020年12月4日、新宿ロフトプラスワンより生配信での開催となった。今回は二部構成となり、第1部の選考会議が有料生配信、第2部の発表特番がYouTube Liveで無料生配信された。

2019年末に開催の「平成アニソン大賞大ヒット記念~年忘れトークSP~」以来の6名が再集結。

まず「ご覧の皆さまの口が堅いほど、我々も言えることが増えます(笑)」とディープなトークを匂わせる吉田の発言で、有料配信の第1部選考会議がスタート。その言葉にたがわず非常に濃密となった選考会議は、白熱のあまり予定されていた2時間では結論が出ず、幕間の休憩時間もそのまま議論を続行。そして第2部の配信は「議論が白熱しているため無音で配信しております。」のテロップを表示しながら、選考員たちが喧々諤々の議論を続けるという異例の展開に。

メンバー一人一人の矜持をぶつけ合うような熱くも緊張感のある時間が流れ、当初の予定から30分が経過しようとしたころ、遂に各賞が決定した。

既に選考員たちには疲労の色も浮かぶ様子だったが、乾杯の飲み物を募る際「ビールの人!」の掛け声で全員が綺麗に手を挙げる姿に「ここは仲良いじゃん!」と笑いあい、一気に和やかなムードに。

乾杯は、ミックスCD『平成アニソン大賞 mixed by DJ和』がロングヒット中で、今回ももちろん選考員として参加のDJ和が音頭を取り、第2部が本格的に幕を開けた。

 

作品賞


各賞の発表はまず「作品賞」から。「この年代での社会的・アニソン業界的に最も世の中を賑わせ注目された楽曲」に贈られるこの賞はLiSA「炎」が受賞。ノミネート時点で選考員6名全員が選出する、まさに文句なしの受賞となった。社会現象となった「鬼滅の刃」の大ヒットを受けてみれば当然の結果、と捉えられるかもしれない。だが選評として選考員それぞれがLiSAというアーティスト、梶浦由記という作家への想いも語り、様々な要素を考慮した末で満場一致の「作品賞」であることが改めて印象付けられた。

LiSA「炎」

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作詞賞


続いて「作詞賞」TRUE 「WILL」に決定。ノミネートで選出したDJ和からは「この作品(ヴァイオレット・エヴァーガーデン)自体が『詞』であり、言葉というものの大事さを感じた」、齋藤Pは「唐沢美帆が作詞して歌う、シンガーソングライターでしか伝えられない凄さがある」と評した。さらにツイートよりTRUE/唐沢美帆本人が番組をリアルタイム視聴中であることが判明し、会場が湧く一幕も。

TRUE 「WILL」

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対して受賞は逃しながらもノミネートで2票を得た「イこうぜ☆パラダイス」も、脈々と続くアニソンならではの電波ソングやコミックソングの歴史を継ぐ存在として賛辞が寄せられた。同じく2票を集めたReoNa「ANIMA」については「歌唱賞があるならReoNa」、「『ソードアート・オンライン』という作品への愛が溢れるこの曲に賞をあげられないのが無念」という声も聞かれた。

スタンク(CV:間島淳司)、ゼル(CV:小林裕介)、クリムヴェール(CV:富田美憂)「イこうぜ☆パラダイス」

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ReoNa「ANIMA」

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作曲賞


「作曲賞」angela「乙女のルートはひとつじゃない!」が受賞。吉田は「angelaは、あの親しみあるキャラで軽く見られている!あらゆる要素を詰め込んでも破綻せず90秒にまとめ上げる、人類最先端の作曲家だとみんな改めてわかって欲しい!」と大絶賛し、他の選考員も深く頷く。

angela「乙女のルートはひとつじゃない!」

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2つの楽曲で計3票を集めたやなぎなぎだが、「芽ぐみの雨」は松原が「『俺ガイル』(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。)という作品とバッチリ合っていて、OPから泣いちゃう」、「君という神話」では前田が「麻枝准はやっぱり天才。異常に捻ったメロディーを書くのにキャッチーというこの才能はもっと広く聴かれるべきだ!」と熱く語った。

やなぎなぎ「芽ぐみの雨」

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やなぎなぎ「君という神話」

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編曲賞


「編曲賞」スタァライト九九組「再生讃美曲」に決定。

まず話題はノミネートで2票を集めたYunomi「恋のうた(feat. 由崎司)」から。はDJ和が「まずこの曲に絶対何かしらの賞を与えたいというのがあって、あらゆる賞を当てはめて結果的にこの(編曲賞という)位置になった」、前田は「2020年のアニソンを語る上で革命的なこの曲は、絶対外せないと思った」と称賛。また吉田が挙げたD4DJについても「D4DJではアレンジャー達の天下一武道会が繰り広げられている!DJの楽しさは『コミュニケーション』の楽しさ」と選考員たちの支持は厚かった。

Yunomi「恋のうた(feat. 由崎司)」

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そして受賞曲の「再生讃美曲」については齋藤Pが語る。「佐藤純一(fhána)のストリングアレンジの凄さ。歴代のミュージカル、映画音楽などからの引用を匂わせるメロディーが音楽のオマージュ的な面白さと共に、圧倒的なスケールを感じさせる」。吉田も「先ほどのDJとは対極的に舞台芸術の楽しさは『圧倒』の楽しさ。この曲は編曲で圧倒出来ている」と同意。

スタァライト九九組「再生讃美曲」

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スタァライト九九組「再生讃美曲(movie ver.)」

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声優ソング賞


そして選考員たちが「最も揉めた」という「声優ソング賞」雨宮天「PARADOX」が受賞。松原は「強い、カッコいいというイメージを通してきた雨宮天が満を持して『カワイイ』に振り切るチャレンジ。そしてファンの圧倒的盛り上がり。実はみんなカワイイ雨宮天を待っていた!」と新境地を開いた彼女を賞賛。

雨宮天「PARADOX」

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声優ソング賞という事で、ドラマやバラエティなどアニメ外のフィールドでの活躍も目立った宮野真守鬼頭明里の名前も挙がっていた。

そして2票を集めた上田麗奈「リテラチュア」に話題が及ぶと、選者の冨田と吉田はマイクの音声が割れる勢いで熱く語る。今年の3月にリリースされたAL「Empathy」については「単なる歌唱力の高さを競うのではなく、声優さんにしか歌えない歌を歌っている!」と大絶賛。

上田麗奈「リテラチュア」

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キャラクターソング賞


「キャラクターソング賞」は先の編曲賞でも称賛を浴びたYunomi「恋のうた(feat. 由崎司)」に決定。キャラクターソング賞で同曲を推薦したのは、これまで議論に参加しつつ軽妙に番組を進行してきた冨田。「アニソンの美学でありながらも定型文として出来上がってきてしまっていた『89.5秒の使い方』をぶっ壊した曲。未体験の人はぜひOPを観てほしい」と高く評価しつつ「どこの部門に入れようか悩んだ結果、キャラソンにした」と、他の選考員と同様の経緯で選出に至ったことを明かした。続いてDJ和は「2020年、最もDJが喜んだアニソン。クラブ鳴りがヤバい」と、正にDJであるYunomiの本領発揮である同曲を称えた。

Yunomi「恋のうた(feat. 由崎司)」

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対してChamJam「ずっとChamJam」もノミネート時点では「恋のうた」より多い2票を得ていた。松原はキャラクターアイドルユニットという点に触れ「楽曲はもちろん素晴らしいが、今年コロナが無くてもっとイベントやライブをガンガン出来ていたら、更に評価されていたはず」と本作をフォロー。

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一方で、「選考レギュレーションに『大衆に支持された』とあるのに、なんでみんな虹ヶ咲に入れないんだよ!こんなに趣味に走るんなら俺だって……」と、いちアニメファンと審査員としての葛藤に揺れる前田の主張には、他のメンバーも「ぐうの音も出ない…」様子だった。

 

アーティストソング賞


J-POPアーティスト他による楽曲から選ばれる「アーティストソング賞」chelmico「Easy Breezy」が受賞。先ほどのYunomiに関する評とも共通する「アニソンで固定されつつあった『型』を壊してくれる新しい『クレイジー』の出現で業界が進化していく」(冨田、前田)と、アニソンを深く愛する選考員たちだからこそ、曲名通りアニソン界の新しい風となった本作を歓迎していた。

吉田も「鈴木雅之さんのようなキャリアのあるアーティストが全力でアニメにコミットしてくれる姿勢がすごく嬉しい。それとは対照的にアニメに媚びている風を全く見せないながらも、歌詞を聴くとしっかり作品を理解している『わかってるだろお前ら』というchelmicoの姿勢も凄く好き」と語る。

chelmico「Easy Breezy」

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新人賞 


アニソン界の明るい未来を担「新人賞」はノミネートで半数の3票を得た楠木ともり「ハミダシモノ」に決定。

自身出演アニメのEDである同曲に加え、ファーストEPの楽曲全てで作詞を手掛けている彼女。「イントロからガっと掴まれるいい曲だし、アーティストとしての世界観、将来性を感じる」と、選考員全体としても異論なしの圧巻の受賞だった。

楠木ともり「ハミダシモノ」

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また「ヒカリイロの歌」を収録したアルバム「ring A ring」で今年デビューした鈴木愛奈の突き抜けた歌唱力は、「水樹奈々にも通じる民謡の素養を持った歌い手」としても各メンバーが高く評価。

鈴木愛奈「ring A ring」

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「チューリングラブ feat.Sou」のMVが4,000万再生を超えTikTokでも流行したナナヲアカリは、デビュー自体は今年でないながらも「アニメへの愛も強いし、今後のアニソン界を牽引する事になるかもしれない超新星としてぜひ聴いて欲しい」とした冨田をはじめ、選考会議でも多くのメンバーから賞賛の声を集めていた。

ナナヲアカリ「チューリングラブ feat.Sou 」

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ユーザー投票賞


 「ユーザー投票賞」SixTONES「NAVIGATOR」

「『富豪刑事』にマッチしている。それに加え第1話ではアーティスト名が明かされず、純粋に楽曲の良さでアニメファンが湧くという展開も良かったし、OPに入る演出が毎回本当にカッコ良かった」という声と共に、ジャニーズとアニソンのハイクオリティな邂逅に、選考員たちは感無量の様子だった。

ユーザー投票では元々のファンベースがあるアーティスト勢が強いという側面も出てくる。そんな中でMashumairesh!!「キミのラプソディー」がTOP3に食い込む健闘を受けて齋藤Pは「この曲をわかってくれる同士がこんなに!いい酒が飲める」と感動気味。

Mashumairesh!!「キミのラプソディー」

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特別賞


ここで大賞発表の前に急遽「特別賞」の発表が。声優ソング賞で絶賛されながらも受賞を逃していた上田麗奈に、この賞が贈られた。「彼女のアルバム『Empathy』を聴いていない人は勿体ないけど、逆に羨ましい」という賛辞と共に「他にも素晴らしい作品を発表している声優さんたちの、アーティストとしての側面も聴いてみて」というアニソンファンへの提案も。

上田麗奈「Empathy」

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令和2年アニソン大賞


そしていよいよ満を持して発表となっ「令和2年アニソン大賞」LiSA「炎」鈴木雅之「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」の2曲に贈られた。

LiSA「炎」

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鈴木雅之「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」

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放送時間のリミットが迫りコメントの時間も限られているところながら「あれだけキャリアのある鈴木雅之さんというアーティストが2期通してちゃんと作品にコミットしてくれる嬉しさ。そして鈴木愛理はミス・パーフェクト。完璧」という「DADDY ! DADDY ! DO !~」と、「言うまでもなく『現象』だし素晴らしい作品」と評された「炎」。各選考員が悩み抜きながら、それでも大賞を捧げるのに異論は無いという清々しい気持ちが視聴者にも伝わったことだろう。


今回印象的だったのは「この曲は絶対入れたいけど、どの部門に入れるべきか迷って…」「この曲・作品に賞が挙げられなくて無念…」と言った声が各選考員から聞かれた事。改めて各メンバーのアニソンへの深い愛、そしてアニソンというジャンルの懐の深さ、素晴らしさを痛感できる濃密な時間だった。

番組でも言われていたように、今回初めて名前を聴いたという楽曲があったら是非CDや各配信サービスで体感し、そしてあなたなりの「令和2年アニソン大賞」を選出してみてほしい。

 

令和2年アニソン大賞 受賞楽曲一覧


<令和2年アニソン大賞>             

炎 / LiSA

DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理 / 鈴木雅之

 

<作品賞>

炎 / LiSA

 

<作詞賞>

WILL / TRUE

 

<作曲賞>

乙女のルートはひとつじゃない! / angela

 

<編曲賞>

再生讃美曲 / スタァライト九九組

 

<声優ソング賞>

PARADOX / 雨宮天

 

<キャラクターソング賞>

恋のうた(feat.由崎司) / Yunomi  ※由崎司(鬼頭明里)

 

<アーティストソング賞>

Easy Breezy / chelmico

 

<新人賞>

ハミダシモノ / 楠木ともり

 

<ユーザー投票賞>

NAVIGATOR / SixTONES

 

<特別賞>

上田麗奈


※外部リンク

アニソン大賞

令和2年アニソン大賞

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令和2年アニソン大賞-ノミネート発表特番-のアーカイブページ ※前半の選考会議が押してしまい冒頭の25分弱は、無音でお届けしております。