ベーゼンドルファー公認アーティスト 久元祐子が奏でるベートーヴェンの響き。

ベーゼンドルファー公認アーティストである名手、久元祐子。

ベートーヴェン初期・中期それぞれの代表作と言える「悲愴」と「ワルトシュタイン」に、当初ワルトシュタインの第2楽章として作曲された「アンダンテ・ファヴォリ」を加えたプログラムを、ベートーヴェンの奏法に関する著作も出版している彼女ならではの、深い解釈で聴かせる興味深い作品がリリースになりました。

 

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」&第12番「ワルトシュタイン」

久元祐子(ピアノ)

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]

FLAC[384.0KHz/24bit]

FLAC[192.0KHz/24bit]

FLAC[96.0kHz/24bit]

AAC[320kbps]

 

 今回のレコーディングでは、ピアニスト久元祐子のために、ウィーンの工房で特別に制作されたベーゼンドルファー280VC Pyramid Mahoganyが空輸され、東京の紀尾井ホールにて行われました。このピアノは、1828年以来、世界最高峰のピアノを世に送り出してきたベーゼンドルファーの中でもハイエンドのコンサート・グランドであり、現時点で世界に2台しかない希少な楽器です。

 

久元祐子 ニューアルバム
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番『悲愴』&第21番『ワルトシュタイン』のレコーディングについて

資料提供:マイスターミュージック


「まるで指に吸い付くかのような繊細さを持っている」

―最初にこの楽器に触れた時の印象をお聞かせ下さい。

久元祐子 氏(以下、久元):指の動きに敏感に応えてくれる楽器です。まるで指に吸い付くかのような繊細さを持っていると言えば良いでしょうか。それでいて、デュナーミクの幅広さは、これまで接したピアノの中でも群を抜いており、ppppからffffまでの表現を可能にしてくれます。

 

―現場の製作者とは、どんなやりとりがございましたか。

久元:工房の技術責任者の方と語る中で「強靭なパワーを持ちつつも、金属的な冷たい音にならない楽器をつくる」ということで意見が一致し、「クリアでありながら厚みと深さを持った音」という理想を求めて制作が進みました。長い伝統の中で培われてきたウィンナートーンの温かさを持ちながら、現代の音楽シーンでオーケストラにも埋もれない存在感を併せ持つ、力強い楽器が誕生したのです。

 

―材料選びから始まり、技術と時間が惜しみなくつぎ込まれた様ですが、特筆すべき点をお教え下さい。

久元:通常の作業に加え、手間がかかるハンマーの重さの調整も1本1本念入りに行い、手塩にかけて創りあげてくださいました。
制作技術者の方が「ずっと離れたところで聴いてみて」と私を遠くに立たせ、最弱音を鳴らしてくれたときの感動!極上のピアニシモが透明な音色で密やかに届いてきて、あらためて楽器のすごさを感じました。
ベーゼンドルファーの歴史、美学を体現する楽器が完成したことをスタッフのみなさんがとても喜んでくださり、「日本に行ってしまうのが寂しい・・・。本当は僕たちがここで持っていたいくらい」と仰っていました(笑)。

 

「今回の録音を聴くと、本物のピアノより本物に近いかもしれない」

―この楽器の響きをハイレゾ384KHzで録音されましたが、演奏家側からの音の印象をお聞かせ下さい。

久元:圧倒的な臨場感です。紀尾井ホールで演奏したときの指の感触、耳の記憶がまざまざと蘇ってきました。何より驚いたのは、高性能スピーカーで聴くと、音が減衰する際のペダルによる音のゆらぎすら聴こえてきたことです。ここまでキャッチしてしまうマイクには恐ろしさすら感じます。演奏者として、録音でなく生の音を聞いてほしい、ライブの会場に足を運んでほしい、と常々思っているのですが、今回の録音を聴くと、本物のピアノより本物に近いかもしれない、とすら感じてしまいます

 

写真クレジット:ⓒ武藤章


【プロフィール】

東京藝大を経て同大学院修了。ウィーン放送響、読響、ベルリン弦楽四重奏団などと共演。ブロードウッド(1810年頃製)、ベーゼンドルファー(1829年製)など19世紀のオリジナル楽器を多数所蔵し、歴史的楽器の演奏・研究にも取り組む。
「優雅なるモーツァルト」(毎日新聞CD特薦盤、レコード芸術特選盤)などCD14作をリリース。著書に「モーツァルトのピアノ音楽研究」(音楽之友社)、「作曲家が愛したピアノからプローチする演奏法〜ベートーヴェン〜」(学研プラス)など。国立音楽大学及び大学院教授、ベーゼンドルファー・アーティスト。