アールアンフィニ・レーベル新譜『ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ全集』(黒川侑/久末航)インタビュー&夏のBIG SALE参加情報

新進気鋭のアーティスト2人の挑戦──『ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ全集』

 2018年以降、世界で活躍する才能あるアーティストの作品を次々と配信解禁。DSDレコーディングをポリシーとし、高品位な録音を世に送り出し続けているアールアンフィニ・レーベルから、待望の新譜がリリースされました。

日本音楽コンクール第1位受賞の新進気鋭のヴァイオリニスト・黒川侑のデビュー・アルバムです。

 

2023年7月19日リリース

黒川侑(ヴァイオリン)/久末航(ピアノ)

『ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ全集』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]   FLAC[384.0kHz/24bit]

 FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

収録曲:

ヨハネス・ブラームス

Tr. 1-3 ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 「雨の歌」 Op. 78

Tr. 4-6ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op. 100

Tr. 7-9ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op. 108

録音: 2023年4月4日 & 5日

アールアンフィニ・レーベル

 

黒川侑(くろかわゆう)は、日本音楽コンクール第1位をはじめ、出光音楽賞、仙台国際音楽コンクール聴衆賞他数々の受賞歴を誇る新進気鋭のヴァイオリニストです。

特に高く評価されているのは、その優れた和声感や表現力。スイス・ロマンド管、スペイン国立管、東京フィル、新日本フィル、京響など国内外主要オーケストラと共演し、室内楽等でも幅広く活躍しています。

共演は、ミュンヘン国際音楽コンクール第3位を受賞し、ベルリンを主軸にワールドワイドに活躍する久末航(ひさすえわたる)。一夜のプログラムさながらの豊かな起承転結でもって構成されたアルバム『ザ・リサイタル』が話題を呼び、日本での知名度も急上昇中のピアニストです。

このたびの新作『ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ全集』は、黒川自身が「最も共感してやまない」と語る、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲を収録したアルバムです。

若いふたりがこの王道かつ重厚な作品に挑んだ理由とは、どのようなものだったのでしょうか。

リリースにあたって、両アーティストにインタビューを行いました。


黒川侑&久末航 リリース記念インタビュー


「ブラームスは特別な、同時にとても畏れ多い作曲家」

──このたび、ブラームスのヴァイオリン・ソナタの録音に挑まれたきっかけをお教えください。

(黒川侑)(以下黒川)
ブラームスはどの曲も演奏するたびに好きになる、僕にとって特別な、同時にとても畏れ多い作曲家です。

アルバム・コンセプトの打ち合わせの中で、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲という案が出てから、しばらく挑戦に迷う期間もありましたが、既にブラームスを含め何度も共演を重ねた、ドイツ在住の素晴らしいピアニストである久末航さんと共に、是非取り組みたいと思い決めました。

(久末航)(以下久末)
黒川侑さんとはこれまでに2度、ブラームスのソナタを一緒に演奏させていただきました。Hakuju Hall のリクライニング・コンサートで第1番を、桐朋学園宗次ホールでのコンサートで第3番を演奏したのですが、どちらの本番でも、黒川さんの豊かでコクのあるヴァイオリンの音色がブラームスのソナタにぴったりで、曲の魅力がひとつひとつ丁寧に引き出されていくのをそばで感じていました。

今回、黒川さんから「ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲をレコーディングしたい」とお話をいただいた時、そのときの印象が鮮やかに蘇り、二つ返事でお引き受けしました。

 

「いかに音色のヴァリエーションをマイクの向こう側まで届けるか」

──レコーディングは順調に進みましたか。

(久末)
レコーディングは2日間にわたって行われました。ホールやピアノのナチュラルな響きにも助けられて、録音はとても順調に進んだように思います。

アルバムの冒頭、いわば、自ずとアルバムの「顔」ともなるソナタ第1番には、たっぷりと時間・労力をかけたいという意見で一致したので、レコーディングは第1番から始め、その後、第3番、第2番と録り進めました。

(黒川)
さすがに最初は録音という環境の様子を掴むまでに少し時間がかかりましたが、信頼おける久末さんの本当に美しいピアノと共にやっていくことで、充分な気持ちで取り組むことができました。

長年の共演パートナーであるふたりの信頼関係が結実した演奏

──アールアンフィニは高品位の録音をコンセプトにしたレーベルですが、音作りに関してはどのように感じられましたか。

(黒川)
編集や音質の調整については、プロデューサーの武藤さんにまとめていただいた後、こちらからも相談を重ねながらやっていきました。レーベルこだわりの音質も是非お楽しみいただければと思います。

(久末)
黒川さんやプロデューサーの武藤さんと共に、然るべき音を求めていく作業は、面白くやりがいのあるものでした。

レコーディングで毎回苦労する、しかしその分奥深さを感じるのは、いかに音色のヴァリエーションをマイクの向こう側まで届けるかということです。ホールで弾いているときに自分の耳に聴こえる音と、それをマイクを通して聴いたときの音とは、まるで違います。今回特に意識したのは、フォルテの音色です。ただ包み込むような温かな音色だけでなく、迫力に満ちたフォルテ、生命力の感じられるフォルテをどうすれば録音にまで反映できるのか、いろいろと模索しました。

実際、仕上がりの録音を聴いてみて、ヴァイオリンとピアノが互いに互いを邪魔せず、一体となって響きを生き生きとしたものにしているのが伝わってくるようで、しっかりとした手応えを感じています。

「迫力に満ちたフォルテ、生命力の感じられるフォルテを

どうすれば録音にまで反映できるのか」──模索しながらのレコーディング

 

「中声部からバスの味わい深い美しい音楽性」「ひとつのドラマを見届けたような充実感」

──演奏に際してこだわった部分や、おすすめしたい1曲をお教えください。

(黒川)
ピアノとヴァイオリンとの繋がり、特に中声部からバスの、ブラームスならではの味わい深い美しい音楽性を目指し、久末さんとリハーサルを重ねました。3曲ともそれぞれが異なった魅力を持つ素晴らしい作品なので、なかなかおすすめを1曲に絞れませんが、もしお聴きいただいた曲が、そんなブラームスの魅力的な音楽を感じていただけるものになっていたとしたらとても嬉しいです。

(久末)
ブラームスのヴァイオリン・ソナタは、「ヴァイオリン・ソナタ」とはいえ、ピアノも音楽的に対格の役割を担っています。ただ伴奏者としてヴァイオリンに寄り添うのではなく、一緒になって音楽の密度を高め、時には全体の音楽をリードするようにピアノパートも書かれています。このアルバムでは、そうしたヴァイオリンとピアノの間でなされる濃密な響きの対話、幾層にも重なり合う重厚な響きに耳を傾けていただければ嬉しいです。

第1番「雨の歌」は今回のアルバムにおいてメインとなる作品ですが、個人的には、第3番も是非お聴きいただきたい作品です。それぞれの楽章がはっきりとした性格をもち、ありとあらゆる感情が交錯しながら曲のコーダへと突き進むのですが、全ての楽章を聴き終えた時に、ひとつのドラマを見届けたような充実感があります。迸るような情熱を内に秘めた、ドラマティックな作品です。

 

──本作を聴いてくださる方にひとことメッセージをお願いいたします。

(黒川)
たそがれや人生の秋にも例えられるようなブラームスの音楽に関わっている時、感動と迷いを行き来するような、他にはない捉えがたい気持ちになることがあります。もしこのアルバムが、お聴きくださった方にとって、少しでもそんなブラームスの世界に触れられるものになったとしたら、それに勝る喜びはありません。

(久末)
ブラームスの書き上げた3つのヴァイオリン・ソナタは、それぞれが全く異なる性格をもちつつも、一つの豊かな情景を共有しています。皆さまにはこのアルバムを通して、情熱的でかつ優しく心に語りかけるようなブラームスの珠玉の作品たちを、臨場感溢れる響きと共に楽しんでいただければ幸いです。


(左から、ピアノ調律師の大豆生田恵氏、久末航氏、アールアンフィニ代表の武藤敏樹氏、黒川侑氏)


 尚、現在moraで開催中の「夏のBIG SALE」では、アールアンフィニ・レーベルで今後リリースを予定しているアーティストの参加アルバムを20%オフにて展開中です。

久末航の2021年リリースの話題作『ザ・リサイタル』も対象です。ぜひニュー・アルバムとあわせてチェックしてください。

久末航(ピアノ)
『ザ・リサイタル』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

数々の国際コンクールを制覇してきたヨーロッパ本流のピアニズムが、
今ここに開花する。第66回ミュンヘン国際音楽コンクール第3位&委嘱作品特別賞、
第7回リヨン国際ピアノコンクール優勝&聴衆賞、2016年度メンデルスゾーン
全ドイツ音楽大学コンクール優勝他数々の国際コンクールを制覇してきた
ドイツ在住の若き俊英Wataru Hisasueのデビュー・アルバムです。
アーティスト自身が長年にわたり研究を重ね磨き上げてきた
数多あるレパートリーの中から厳選に厳選を重ね、一夜のリサイタルのように
アルバム全体の起承転結をも俯瞰した全13トラックを収録しました。
まさにWataru-Ism!を心ゆくまでご堪能下さい。

 

鈴木大介(ギター)
『ギターは謳う』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

名手・鈴木大介が、50歳の節目を迎えて満を持して放つ、全曲ニューレコーディングによる
心震える究極のポピュラー名曲集。武満が鈴木のデビューのきっかけを作ったことは
つとに有名だが、没後25年にあたる今年、名器イグナシオ・フレタ・エ・イーホスを用いて
「ギターのための12の歌」の再録に臨んだ。その他、長くジャズ・ミュージシャンや
シンガーに歌われ続けているスタンダード・ナンバーやシャンソン、生誕100周年を迎えた
アルゼンチン・タンゴのアストル・ピアソラのナンバーなど珠玉の名曲全22曲が満載。

 

鈴木大介(ギター)
『シューベルトを讃えて』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

異才、鈴木大介が長年あたためてきたシューベルトと、
シューベルト由来の名曲を編んだオマージュ・アルバムです。
本人曰く「夢幻のニュアンスや色彩と空間の広がりを音楽に息づかせることを
最重要なテーマとし続ける“クラシック・ギター”という楽器と
その役割の真髄へと、僕を導いてくれそうな気がする」という
シューベルトへの万感の想いが、あたたかく慈愛に満ちた旋律、
端正で優美な官能、幽き無限の情念をもって奏でられます。

 

椿三重奏団
『メンデルスゾーン&ブラームス: ピアノ三重奏曲第1番』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

2019年に命名されたこのトリオは、結成に至るまでに実に10年以上に
渡る共演を積み重ねてきました。高橋多佳子(ピアノ)、礒絵里子(ヴァイオリン)、
新倉瞳(チェロ)、それぞれソリストとして充実した活動を続けていますが、
その歳月を重ねたがゆえの熟成した3人のアンサンブルは、エモーショナルでダイナミック、
そして精緻です。デビュー・アルバムにふさわしい古今絶世の名曲で、
まさに満を持してその成果を世に問います。

 

礒絵里子(ピアノ)
『エスプレッシーヴォ』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

日本を代表する実力派ヴァイオリニスト、
礒絵里子のデビュー20周年記念アルバムです。
礒絵里子がこよなく愛し、折に触れて取り上げてきた珠玉の
ヴァイオリン愛奏曲全18 曲を収録しました。
共演の實川風(ピアノ)との浪漫溢れるエスプレッシーヴォ(表情豊か)な
アンサンブルは、まさに薫り立つフィネスに満ちた孤高の音世界です。

 

砂川涼子(ソプラノ)
『ベルカント』

DSD(DSF)[11.2MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit]  AAC[320kbps]

名実共に今のオペラ界を牽引するディーヴァ、砂川涼子、
待望のデビュー・アルバムです。
砂川が長い間歌い、かつ本人もこよなく愛するオペラ・アリア、
歌曲の中から全16曲を厳選。イタリア・オペラの《ラ・ボエーム》のミミ、
《トゥーランドット》のリュー、《ジャンニ・スキッキ》のラウレッタ、
フランス・オペラの《カルメン》のミカエラ、《ホフマン物語》のアントニア、
そして端麗極まるドナウディの歌曲他珠玉の名曲をDSD11.2MHz の
超ハイレゾ・レコーディングで収録。共演は盟友、園田隆一郎。
お互いのリスペクトにより醸成された天上の響きを、心ゆくまでお楽しみ下さい。

 

赤坂達三(クラリネット)
『オマージュ・ア・パリ』

DSD(DSF)[2.8MHz/1bit]  FLAC[192.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

日本でただひとり、ソロクラリネッティストとして活躍する、
クラリネットの貴公子・赤坂達三の実に6年ぶりのニューアルバム、
そしてデビュー20周年記念アルバムです。
今回の収録曲は演奏者自身が強く望んでいた
「アーティストとして最盛期の今しか残せないであろう」
と語る超絶技巧曲集。パリ・コンセールバトワール(パリ国立音楽院)の
歴代作曲家がパリ音楽院の試験曲として作曲した各曲は、
当代一流の名門音楽大学の試験曲というだけあって、
最高難度の技巧、高い音楽性が要求される曲ばかりです。
サン=サーンスのオーボエソナタは演奏者自身の
クラリネットに対する想いから、クラリネット版での
世界初録音となりました。アンコールピースとして、
オーリックの映画音楽「赤い風車~ワルツ」も収録、
フランス・パリに自身の音楽的ルーツを置く
赤坂達三ならではの、まさにオマージュ・ア・パリです。