ハイレゾ配信開始! 『はっぴいえんど』『風街ろまん』試聴会レポート

4月1日(水)より、はっぴいえんどの二枚のオリジナル・アルバムがハイレゾ配信されます。

細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂という、解散後も個々の活動によって日本のポップ・ミュージックの歴史に大きな足跡を残した四人によって組まれた「伝説のバンド」。

「日本語ロック」の先駆けともいわれ、星野源など現在進行形で活躍中のミュージシャンにも多大な影響を与え続けています。

今回はそんなはっぴいえんどの初となるハイレゾ音源を、mora readingsの連載でもおなじみのイラストレーター・牧野良幸さんにいち早く聴いていただき、その素晴らしさをレポートしていただきました。

ぜひ本記事を読んで、来るべき配信日まで期待を膨らませてください!

 


 

 

はっぴいえんどの2枚のオリジナル・アルバム『はっぴいえんど』と『風街ろまん』がいよいよハイレゾで配信される。

 

でも、ハイレゾの前にひとこと懺悔をしておきたい。「どうして僕は中学、高校生の頃、はっぴいえんどを聴かなかったのか」と。

というのも昨年末にポニー・キャニオンで、今回配信されるハイレゾ音源を聴いて、はっぴいえんどの音楽に非常に感銘を受けたからだ。

 

もちろんハイレゾは96kHz/24bitだから、当然CDよりも高音質だった、でもそれは別にしても、はっぴいえんどの音楽は、1970年や71年当時、僕がよく聴いていた洋楽やフォークと、なんら変わりがないほどに親しみやすく、クオリティの高いものだった。

当時、はっぴいえんどにつきまとっていた「日本語のロック」という大看板に怯えて聴かなかったのかなあ、と言い訳もしたくなるのだが、今回のハイレゾを機会に、はっぴいえんどを堪能しようと思う。

 

ということで、ハイレゾ試聴会の報告をしよう。

試聴会にはファンが多数やってきていた。中高年の男性が多いかと思いきや、若い人も多くいる。女性の数も多いと思った。試聴会は当時のディレクターだった小倉エージ氏の製作秘話をまじえながらおこなわれた。

 

試聴会は最初に旧CDの音を聴き、そのあと今回のリマスター音源から製作された新しいCDを聴き、最後にハイレゾで聴くという趣向だ。曲によってはリマスター音源から製作したアナログ盤を加えることもあった。

まずハイレゾ以前に、旧CDとリマスター音源のCDで差は歴然だった。旧CDはまるで資料でも聴いているような古びた音。それにたいしてリマスターCDは低音がしっかりと出て、細部の解像度も高い。かと言って若い人向けのドンシャリでもない。

 

つまるところ音楽として生き生きとした音になっていると思うのだ。今回のデジタルリマスターは、世界最高峰の技術をほこるロンドンのMETROPOLISでおこなわれたという。リマスターがいかに素晴らしかったか感じさせる。

しかし、このリマスターCDもハイレゾを聴くと霞んでしまうのだった。CDの音はたとえリマスターであろうとも、いかんせん音が固いし密度も荒い。「春よ来い」や「12月の雨の日」「夏なんです」を聴くと、おなじリマスター音源なのに、ハイレゾは音のエッジがはるかに柔らかくなっているのがわかる。さらに解像度が高く繊細だ。

 

試聴会では、アナログ盤の音の柔らかさにも感心させられたが、ハイレゾはアナログの柔らかさと、高解像度を併せ持った“いいとこ取り”な音だと思った。「風をあつめて」のアコースティック・ギターは極上だし、「いらいら」は、はっぴいえんどがハード・ロック・バンドだったことを認識させる。

参加者からのリクエストで「はいからはくち」、それから「朝」を聴き試聴会は終わった。会場の誰もが、ハイレゾで聴くはっぴいえんどに新鮮な驚きを持ったことだろう。はっぴいえんどは、今日まで何度も再評価を繰り返してきたが、今回のハイレゾこそ決定版ではあるまいか。

 

(文・イラスト:牧野良幸)

 


 

 

牧野 良幸 プロフィール

1958年 愛知県岡崎市生まれ。

1980関西大学社会学部卒業。

大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。

近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。

マッキーjp:牧野良幸公式サイト

 

 


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