「ヨルシカ」に注目! 新海誠も認めた、気鋭のボーカロイドクリエイターによるコンセプチュアル・バンド
ヨルシカが2020年7月29日にはタイトルだけで気になる3rd アルバム『盗作』がリリースすることを発表。収録曲の先行配信も続々とリリースされています。
『思想犯』
『春ひさぎ』
『花に亡霊』
映画『泣きたい私は猫をかぶる』主題歌
『夜行』
ヨルシカ ディスコグラフィー
2ndフルアルバム
『エルマ』
1stフルアルバム
『だから僕は音楽を辞めた』
ハイレゾ音源独占配信中!
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1stミニアルバム
『夏草が邪魔をする』ハイレゾ音源独占配信中!
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2ndミニアルバム
『負け犬にアンコールはいらない』ハイレゾ音源独占配信中!
ヨルシカは、ボーカロイドクリエイターとして「ウミユリ海底譚」(5,591,250回再生)、「メリュー」(3,982,638回再生)、「夜明けと蛍」(4,358,059回再生)などのヒット曲を持つn-buna(ナブナ)さんが、女性ボーカルsuis(スイ)さんを迎え、流動的なプレイヤーを迎えて作品を発表するコンセプチュアル・バンド。バンド名は、1stアルバム『夏草が邪魔をする』に収録の「雲と幽霊」という曲の歌詞にある<夜しかもう眠れずに>というフレーズから取られているとのことです。
※カッコ内の再生回数はすべてニコニコ動画のもの。(2019年4月9日現在)
今夏、新作映画『天気の子』が公開される新海誠さんからも評価を受ける注目のバンド!
素晴らしいなー。
ヨルシカ – 言って。(Music Video) https://t.co/o0TZCWKUn8 @YouTubeさんから— 新海誠 (@shinkaimakoto) July 29, 2018
そんなヨルシカの魅力を、インタビューでのn-bunaさんの発言をもとに紐解きます。
映像・音楽・言葉によって紡がれる物語
すべての楽曲の作詞・作曲を手がけるn-bunaさんは、もともと動画サイトにボーカロイドを用いた楽曲を投稿していた、いわゆる「ボカロP」と呼ばれるクリエイター。米津玄師さんや「ヒトリエ」のwowakaさん(R.I.P.)など、クリエイター自らが表に立ってパフォーマンスをするスタイルとはまた別に、ビジュアルを効果的に組み合わせた物語世界を表現しています。
つまり、1つの作品に対して「これはいい作品だ」ってことだけを考えて聴いてほしい。もちろん、人が前に出てくるような音楽も僕は好きで、昔からバンドが大好きだし、ミュージックビデオとかで楽器を弾いてる姿も好きだし感動するんですけど、自分の目指す表現はそこじゃないんですよね。大好きなものと作りたいものは違うと言うか。だからMVにしても僕たちが前に出るのではなく、映像作品として音楽とセットで聴いてもらうものにしていて。
(音楽ナタリーより)
今作のタイトル・トラック「だから僕は音楽を辞めた」はパステルカラーの3Dで描かれた世界が新たな広がりを感じさせてくれます。
タイトルと歌詞だけではネガティブな印象が持たれがちな<音楽を辞めた>というフレーズも、また新たなイメージで捉えられますね。
人間でしかできないことを
ボーカロイド出身のクリエイターが始めたプロジェクトであるということや、顔出しをしないという形態からとっつきにくい印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、人間のボーカルが歌うからこその表現を追求しているのもこのプロジェクトです。両方の表現に足をかけているからこそ、互いの長所を熟知しているのがn-bunaさんというクリエイターであり、ヨルシカというプロジェクトなのです。
ボカロって、言ってしまえば声に感情がないじゃないですか。がんばって付けることもできますけど、声に感情がないこと自体、ボカロの長所だと僕は思うし、だからこそ聴く人が感情を好きなふうに入れられる。僕がボカロで作った歌に、リスナーの方が自分の経験や感情を当てはめて、いろいろな聴き方をしてくれるっていう。〔…〕ヨルシカのほうは、人間的な表現に重きを置いたものを始めたいなと思っていて……ボカロにはボカロにしかできない表現がありますけど、人間には人間ならではの表現があると思うんですね。〔…〕ボカロとは逆に、この歌詞はこういう物語でこういう感情が歌われていますっていうことをしっかり表現したいときに、人間の声なら歌詞に持たせた意味が生きると思うんですよね。
(音楽ナタリーより)
ボーカルのsuisさんの魅力について、n-bunaさんは次のように語っています。
ヨルシカのボーカルとして一緒にやっていこうと思えた大きな理由は、声質ですね。僕はロックもポップスも、いろいろなジャンルを雑多に聴いてきた人間なんですけど、それゆえに作りたい曲の方向性もたくさんあるんです。だから、ロックでもちゃんと映えて、かつバラードや浮遊感のある音楽にも対応できるような、ちょっとハスキー成分のある歌声の方を探していて。そこにちょうど当てはまる声質だし、しかも歌がうまい。「この人だ!」と思ってお願いしました。
たぶん僕の音楽的な好みにも起因すると思うんですけど、女性の声の方が楽器として優れてると思うんです。アコギやエレキ・ギターの音域と少しだけ被りつつも上に抜けていく声っていうか。ギターとかピアノの音とは被りにくい高音までいくので、僕としては曲も作りやすいんです。
(音楽ナタリーより)
あくまで歌詞の効果を最大限に引き立たせるメロディを歌い上げつつも、抑制が効いているようにも感じられる……唯一無二の歌声だと思います。
アルバムをまたぐ、コンセプチュアルな世界観
2ndミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』に収録の「準透明少年」という楽曲も使われていた<準透明>というフレーズが今回のアルバムに収録されている「詩書きとコーヒー」に使われているなど、作品間のリンクを感じさせるのも魅力のひとつです。
僕の理想としてはヨルシカというひとつの概念の下にいろいろな作品があるっていうイメージなんです。
(Skream!より)
こう語るように、2ndミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』は1stミニアルバム『夏草が邪魔をする』のセルフオマージュとして作られているとのこと。
アルバム自体、前作のセルフオマージュの固まりなんですけど、世界観は前作の時点でだいぶできていて、そこから新しく形作っていった感じですね。
全体としては、簡単に言えば前作の「言って。」に出てくる“私”が、何度も生まれ変わりをした先でもう一度「雲と幽霊」の“僕”と出会う話が前提にあって、そのコンセプトのもとに今作の曲も作っています。インスト曲にも世界観を補足するポエトリーを付けていますし。
(音楽ナタリーより)
『だから僕は音楽を辞めた』についても、過去作とのリンクを探してみるのが楽しいかもしれません。
「和」の世界観
今回のアルバムにはもう1つ、たぶん言わないと気付かないであろう共通したコンセプトがありまして。文学感と言うか、僕は近代の歌人・俳人が好きなのでそこからの引用を入れているんですよ。例えば「爆弾魔」の「青春の全部に散れば咲け 散れば咲けよ百日紅」という歌詞は加賀千代女っていう江戸時代の歌人の作品からの引用。「ただ君に晴れ」には正岡子規の「絶えず人 いこふ夏野の 石一つ」という俳句を引用した、2番サビ前の「絶えず君のいこふ」というフレーズがあります。
そもそも「負け犬にアンコールはいらない」というタイトルも岸田稚魚の句集「負け犬」のタイトルからのオマージュです。そのあたりを知ったうえで聴いてもらえると、いろいろと面白いんじゃないかと思います。裏テーマとしてそういうものも組み込みつつ、曲を作っているので。
(音楽ナタリーより)
こうした日本由来の表現への目くばせは、『君の名は。』の入れ替わりという物語を小野小町の和歌から着想したという、新海誠さんのセンスにも通ずるもの。
新海さんがヨルシカの表現にシンパシーを感じたのも、必然といえるでしょう。
ネガティブな表現もおそれずに
ネガティブな表現や死生観にまつわるセンシティブな表現も、正面から表現しています。
繊細な女性ボーカルのイメージとは裏腹に、一人称<僕>で紡がれる世界はどこか世の中へのやるせなさや、自分自身に対するいら立ちを滲ませたもの。
“転ばないように下を向いた
人生はどうにも妥協で出来てる
心も運命もラブソングも人生も信じない
所詮売れないなら全部が無駄だ”「藍二乗」(『だから僕は音楽を辞めた』収録)
“ずっと前からわかっていたけど
歳取れば君の顔も忘れてしまうからさ
身体の奥 喉の中で 言葉が出来る瞬間を僕は知りたいから”「パレード」(『だから僕は音楽を辞めた』収録)
物語というクッションを挟んでいるからこそ、自由にリスナーが感情を投影できる。
新しいタイプの作品とリスナーのかかわり方を模索しているようで、これからも注目のユニットです。
【関連リンク】
ヨルシカ オフィシャルサイト
ヨルシカ オフィシャルTwitter (@nbuna_staff)
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