川田 知子 須田 祥子『 スターライト〜ヴィオリンとヴィオラの二重奏〜』

格別の響きが楽しめる ヴァイオリンとヴィオラのアンサンブル

マイスターミュージックから新譜が到着。中堅奏者として名高くファンも多い、川田知子と須田祥子によるヴァイオリンとヴィオラのための二重奏作品集。倍音豊かな澄んだ響きは格別で、その緻密なアンサンブルは弦楽器2本とは思えない深い音場感を醸し出します。

スターライト ~ヴァイオリンとヴィオラの二重奏~

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ハルヴォルセンの手腕により白眉の名編曲作品となった「パッサカリア」に始まり、コレッティ、モーツァルト、フックス、シベリウスと、現代から古典までのオリジナルの名品が続く、興味深いプログラムです。

 ポール・コレッティ(1959-)はアメリカ在住の世界的ヴィオラ奏者。世界初録音となる「スターライト」は弦楽器の特性を生かし、緩急の変化に富んだ美しい響きが印象的で、奏者は高い技術が要求されます。


◯アルバムについて 川田知子

 今回のアルバム「スターライト」はヴァイオリンとヴィオラの二重奏による名曲集です。高解像度DXD384録音ならではのクリアでディープなサウンドをお楽しみ頂けると思います。

 弦楽器二本のみなので、遠慮しすぎて響きが貧弱になってしまわないように、弾いていてお互いの楽器が最も共鳴する瞬間を常に探して演奏しました。普段から仲が良く、最近はよく人から間違えられるほど見かけも似ている2人なので、音楽の相性も信頼度も絶大です。

 聴きどころはアルバムタイトルになった「スターライト」やシューベルトの「魔王」など、2人の息の合った濃密なアンサンブルをお楽しみ頂けると思います。


◯曲目について 川田知子

G.F. ヘンデル (J. ハルヴォルセン 編):パッサカリア
 ヴァイオリンとヴィオラのデュオの小品、と言われてまず一番初めに浮かぶのがこの曲です。この曲の原曲はヘンデル(1685-1759)の「ハープシコード組曲 第7番 ト短調 HWV432」の最終楽章「パッサカリア」ですが、19世紀のノルウェーのヴァイオリニストで、作曲家でもあったヨハン・ハルヴォルセン(1864-1935)の手により、とびきりのヴィルトゥオーゾ(超絶技巧)ピースに変貌しました。原曲も激しい曲ですが、ハルヴォルセンの編曲には途中にゆったりとしたアンダンテの変奏があり、音をキープできる弦楽器の利点を最大限に活かし、世にも美しいメロディが展開します。この 変奏がこの曲をここまで有名にしたと言っても過言ではありません。弦楽器を知り尽くしていたハルヴォルセンの面目躍如、といったところでしょうか。

P. コレッティ:スターライト
 ポール・コレッティ(1959-)はエジンバラ出身で、ロイヤル・スコティッシュ・アカデミーやジュリアード音楽院に学び、世界的に活躍しているヴィオラ奏者です。私は昔、ポールと室内楽の講習会でご一緒した事があり、今回のアルバムの曲目を選んでいた時、ひょんなことから彼の曲「スターライト」を発見し、是非録音したい旨を伝えると、彼は快く許可してくれたのでした。
 流れ星が流れる静かな海のようなオープニングから「ムーンライト」のメロディが始まり、やがてうねりを持った炎のような激しいテーマに移行していきます。

 以下、作曲者自身のコメントを引用します。

「星の光(=スターライト)は月の光を反射して遠くで輝いています。その光までの距離は驚くほど遠く、しかしその光はここにあります。月の光(=ムーンライト)のインスピレーションは、ベートーヴェンの有名なピアノ・ソナタと、さらに私がギターを弾く父の影響で幼い頃から聴いて育ったグレン・ミラーのビッグバンド曲「ムーンライト・セレナーデ」から得ています。『スターライト』のすべてのアイデアは、DNAのジグソーパズルのようにつながっていて、この光景は私と自然との関係、そしてあらゆる存在との関係を反映したものとなっています。」 <ポール・コレッティ>
W.A. モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K. 423
Ⅰ. アレグロ / Ⅱ. アダージョ / Ⅲ. ロンド,アレグロ
 ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲(K. 423とK. 424)には、以下のようなエピソードが残っています。モーツァルト(1756-1791)がウィーンからザルツブルクに帰省していた時、病に倒れたかつての同僚、ミヒャエル・ハイドン(ヨーゼフ・ハイドンの弟)の代わりに、たったの二日間で2つの二重奏曲を書き上げ、表紙には「ミヒャエル・ハイドン」とだけ書いて病床の友人のもとに持参した……。
 この美談の真偽はともかくとして、二つの美しいデュオの曲がその時に生まれたことに違いはありません。今回はK. 423 ト長調をお聴き下さい。第1楽章は溌剌としたソナタ形式で、展開部の美しさは本当に魅力的です。第2楽章はゆったりとしたアダージョ。美しいメロディをヴァイオリンとヴィオラが交互に歌い上げていきます。第3楽章はロンド形式で、農夫の踊りのような牧歌的で楽しい曲です。

R. フックス:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 作品60
第1番:程良く動きをもって 優しく柔らかに
第2番:静かに 優雅に
第6番:密かに 動きをもって
第7番:動きをもって 反抗的に
第12番:ワルツ
 ウィーンの宮廷オルガン奏者で、作曲家でもあったロベルト・フックス(1847-1927)は、ウィーン音楽院で音楽理論の教授として教鞭を執り、多くの偉大な作曲家達を輩出しました。門下のなかにはヴォルフ、マーラー、ツェムリンスキー、シベリウスなどが名を連ねています。
 ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏 作品60は12曲からなる小品集で、一曲一曲はとても短く、さながら宝石箱のようなきらめきをもっています。今回はその中から、5曲をピックアップしました。ブラームスも賞賛したというフックスの斬新で優雅な音楽をお楽しみ下さい。

J. シベリウス:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ハ長調
 交響詩などの大編成の曲で知られるシベリウス(1865-1957)ですが、1982年に遺族が直筆譜を フィンランド国立図書館に寄贈し、実は様々な編成の室内楽作品を残していた事が判明しました。
 この曲はその中の一つで、シベリウスが行っていた室内楽や音楽理論の個人レッスンのための教材として作曲されたものと考えられています自然と音楽をこよなく愛したシベリウスらしい抒情的でどこか懐かしいメロディは聴き手を癒しの世界に誘ってくれることでしょう。

F. シューベルト(C.G. ウォルフ編):
野ばら / 魔王 / アヴェ・マリア / 菩提樹
 シューベルト(1797-1828)は、31歳の若さでこの世を去るまで、実に600曲以上の歌曲を残しました。どの作品も、詩の持つ世界観を親しみやすい美しいメロディと独創的な伴奏で構築していて、今でも世界中の人から愛されています。今回はその中で代表作である4曲を、C.G. ウォルフ 編(Collection Litolff)でお楽しみ下さい。

 「野ばら」 原曲の伴奏はとてもシンプルで、和音を一拍ずつ鳴らしていくものですが、ウォルフの編曲では16分音符の分散和音が続きます。そのため、原曲よりゆったりとして滑らかな印象になっています。

 「魔王」 凄まじい3連音符の連続が夜道を疾走する馬を表現しています。歌い手は、語り手、父親、子供、魔王の4役を歌い分けなければならず、その音色の変化にとても気を遣いました。また、メロディがヴァオリンからヴィオラに移る度に3連音符も移るので、その切れ目がわからないように演奏しています。2本の弦楽器のみで歌う魔王の迫力を体感して頂ければと思います。

 「アヴェ・マリア」 教会で演奏しているような響きを目指しました。ヴィオラの音色がオルガンのように聴こえると思います。繰り返しの後は敢えてピチカートにしています。

 「菩提樹」 速い16分音符の3連音符が木の葉の揺れる葉ずれの音を表していて、そこに美しい郷愁の歌が歌われます。ピアノで弾けば難なく出来るパッセージも弦楽器で弾くと大変難しく、苦労しましたが、シューベルトの歌曲特有の創造性溢れた伴奏部分にも注目して頂きたいです。

 


さらに新譜の発売を記念して、旧譜作品のプライスオフセールも開催。こちらもぜひご覧ください。

プライスオフセールは終了しました。ありがとうございました。

期間:2022/1/25(火)~2022/2/23(水)23:59

※購入の際は、商品ページにてお求めの価格が正しいことを改めてご確認下さい。


◯アーティスト・プロフィール
川田 知子(ヴァイオリン)
 東京藝術大学を首席で卒業。1991年シュポア国際コンクール優勝。ソリストとして国内外で活躍しているほか、室内楽や後進の指導など多方面で活躍。2003年エクソンモービル音楽賞、洋楽部門奨励賞受賞、国際交流基金派遣事業で中東でリサイタル、2007年イェヌー・ヤンドゥー(ピアノ)とブダペストで共演。2019年バッハ無伴奏全曲演奏会を行い絶賛された。
 マイスター・ミュージックより「J.S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ」などCD10枚をリリース、「スターライト」が11枚目となる。
 現在、洗足学園音楽大学講師。

須田 祥子(ヴィオラ)
 6歳よりヴァイオリンを始め、桐朋学園大学在学中にヴィオラに転向し、98年同大学を首席で卒業。ヴァイオリンを室谷高廣、ヴィオラを岡田伸夫に師事。97年、第7回日本室内楽コンクール、99年、第7回多摩フレッシュ音楽コンクール、99年、第23回プレミオ・ヴィットリオ・グイ賞国際コンクール、2000年、第2回淡路島しづかホールヴィオラコンクールの全てのコンクールで第1位優勝。
 現在、東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者、日本センチュリー交響楽団首席客演奏者、アクロス弦楽合奏団、ザ・シンフォニエッタみよしのメンバーを務める他、ヴィオラ演奏集団「SDA48」を主宰。洗足学園大学非常勤講師として後進の指導にも当たっている。ソロアルバム「ビオラは歌う」シリーズ、SDA48「びおらざんまい」をリリース。