牧野良幸のハイレゾ一本釣り! 第1回
第1回:レッド・ツェッペリン「カシミール」
~筋肉質になったツェッペリンの代表曲~
昨年から話題のジミー・ペイジによるレッド・ツェッペリンのリマスターであるが、ハイレゾでも配信されていることがすばらしい。
これは僕の個人的な好みなのだが、レッド・ツェッペリンは、ずっとCDで聴くことに抵抗を覚えていた。「ボンゾの重いドラムが、ペラっとしたCDで再生できてたまるかい」と思っていたのだ。偏見とは分かっていても仕方がない。アナログ世代の哀しいサガである。だから今日までレッド・ツェッペリンはアナログ・レコードで聴いてきた。
しかし昨年のリマスターされたアルバムをハイレゾで聴いて、アナログへのコダワリがなくなったのである。「ハイレゾなら、ボンゾのドラムが聴ける」と思ったのだ。なのでこの連載の記念すべき第1回は、レッド・ツェッペリンの「カシミール」にした。
70年代の初め、レッド・ツェッペリンの名刺代わりの曲と言えば、なんといっても「天国への階段」だった。ビートルズの「レット・イット・ビー」やサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」と並んで、ポップ・ソングのバイブル的存在になっていたと思う。この頃、僕は中学生から高校生へと移り変る時期だったが、「天国への階段」の劇的な構成が、カーペンターズも大好きという一般のポップス・ファンにも受け入れられていた。そんな時代だった。
しかし「天国への階段」がツェッペリンの代表曲の座にいたのも、75年の『フィジカル・グラフィティ』が発売されるまでだった気がする。僕としては『フィジカル・グラフィティ』に収録されていた「カシミール」が、以後はツェッペリンの代表曲になった気がするのだ。
「カシミール」にはジミー・ペイジの派手なギターはない。淡々と刻むボンゾのドラムに乗って、異国情緒たっぷりの旋律が繰り返される。変拍子と、およそツェッペリンらしくない映画音楽のようなベタな管楽器と弦楽器。これだけである。しかしこれが麻薬的なのだなあ。ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のような、60年代サブカルチャー的な試みを(あのツェッペリンが)しているような気さえしたものである。
さて、おまたせ。ハイレゾで聴く「カシミール」である。
これまでは、うっすらとした霧がかかったような音で、それがムードを醸し出していた「カシミール」だが、ハイレゾでは霧が晴れて、ハッキリとした像があらわれた気がする。人間に例えれば、余分な脂肪が吹き飛んで、より筋肉質になって登場した感じだ。
ボンゾのドラムは、あいかわらずズシリと重い。音が筋肉質になった分、例の異国情緒のあるリズムが、より歯切れ良く響く。中間部での全楽器によるユニゾンは、ピタリと頭が揃い迫力がいっそう増した気がする。
「カシミール」のハイレゾは“絵に描いたような高音質”だった。もちろんジミー・ペイジのリマスターの効果も大きいだろうが、リマスターの効果が大きいならなおのこと、ハイレゾという器で聴くべきであろう。
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