日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.19

Vol.19 Theme : 「ROCKバンドはなぜスカル・モチーフのTシャツを着るのか!?

 

 暦の上ではとっくだったのに、やっと秋の到来を感じる今日この頃……寒くなるのはデメリットだけじゃございません、重ね着が出来る季節、つまりファッション好きにはたまらない季節でもあるわけです。

 我々バンドマンは結構、ファッション的にというよりも、割と短絡的にスカルのモチーフを着がちですが、それでもPUNK=ドクロなイメージは鉄板ですよね? 今回はそんなイメージを作り出した張本人、THE MISFITSをご紹介します。

 イギリスでSEX PISTOLSTHE CLASHTHE DAMNEDら、オリジナルPUNK勢が猛威を奮っていた1977年、大西洋を挟んだアメリカでも続々とPUNKバンドが産声をあげていました……マリリン・モンローの遺作『荒馬と女』の原題を冠したバンドを立ち上げたVo.のグレン・ダンジグにより、N.Y.のお膝元ニュージャージーにて結成されたのがミスフィッツ。当初はメンバーが入れ替わり立ち替わりしながらブルージーなガレージROCKを演奏していましたが(「Attitude」等)、Ba.にジェリー・オンリーと、Gt.にボビー・スティールが加入した頃から、時代の波もあってPUNK化していきます。PUNK版ドアーズとも呼べそうなダンジグの野太い、しかし伸びのある力強い歌声で(「Last Caress」等)、地元やN.Y.のクラブでメキメキと頭角を現します。

 そこに生粋のB級ホラー/SF映画好きなダンジグのアイデアで、黒ずくめの衣装に身を包み、顔にスカルのメイクを施し、前髪の真ん中だけを伸ばす「デビロック」ヘアーにしたりと、バンド全体でハロウィンのコスプレ的なコンセプトを打ち出しました……するとこれがアンダーグラウンドなシーンでバカ受け! ダークなEMOさとPOPさのバランスが取れた楽曲と相まって、ミスフィッツのLIVEはモッシュの嵐と化します。

 80年代に入ってGt.にジェリーの弟ドイルが加入し、バンドのマッチョ度を更に上げた頃にはバンドの音楽性も完成し、性急な2ビートの上でダンジグの野太いシャウトが乗っかるサウンドはその後のハードコアPUNKへの序章となり(「Mommy Can I Go Out And Kill Tonight」「Nike-A-Go-Go」等)、曲中で多用されるウォーウォーとシンガロングするスタイルはその後のOi PUNKやSKA PUNKへも影響を与えます(「Night Of The Living Dead」「Astro Zombies」等)。そして何よりスカルを多用したファッションやロゴは、その後ホラーPUNKと呼ばれて多くのフォロワーを生みだし、まさにN.Y.でのショウは黒ずくめのライブキッズで埋め尽くされることになるのですが……。

 1982年にアルバム『Walk Among Us』で念願のメジャー・デビューを果たすも、オーバーグラウンドでの成功は得られず、翌年の2nd『Earth A.D./Wolfs Blood』を完成させた頃には、バンド内で不協和音が鳴り始めます……殆どの曲を手がけていたダンジグにとって、元々は初心者だったジェリーやドイルへの不満が鬱積し、アルバムのリリース2ヶ月前のショウの最中、遂にダンジグはミスフィッツの解散を宣言してしまいます。

 しかしアンダーグラウンドでカルト的な人気を博していたミスフィッツは、その後メタリカガンズといった錚々たる面子らのカヴァーやリスペクトを受けて、ジェリーとドイルの兄弟によって90年代に復活。新Vo.を迎えて97年には傑作アルバム『American Psycho』をリリースします。表題曲「American Psycho」に代表されるように、2ビートからウォーウォー・シンガロング・コーラスまで、ファン達が待ち望んでいたミスフィッツ感をこれでもかと詰め込み、全世界でカルト的に広がったファン達のためにツアーで飛び回ってくれています。現在はジェリー自らVo.を取るトリオ・スタイルで活動中のミスフィッツ、あなたもスカル・デザインのアイテムを羽織る時のBGMとして、部屋で爆音でプレイしてみてはいかがでしょう!?

 


 

1stアルバム
『Walk Among Us』

 

97年の復活作!
『American Psycho』

 


 
 
【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。