藤田恵美『ココロの時間』リリース記念インタビュー
1997年Le Couple「ひだまりの詩」でミリオンセラーを記録。その後2001年からソロプロジェクトをスタートさせた藤田恵美さん。その澄んだ歌声は“耳で聴く薬”として国内のみならず、香港や台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど、アジア各国へもファンを広げている。そんな藤田恵美さんが2013年にリリースした邦楽カバー集『ココロの食卓 ~おかえり愛しき詩たち~』の続編にあたる『ココロの時間』をリリースした。今作は男性ボーカリストの珠玉の名曲を藤田さんのカモミールヴォイスでカバー。70年代フォーク・歌謡曲の燻し銀のような名曲たち「帰れない二人」(井上陽水) 「ケンとメリー」(Buzz) 「白いブランコ」(ビリーバンバン)他を中心に、藤田恵美がいつか歌ってみたかったという、リリー・フランキーがボーカルを務めるTOKYO MOOD PUNKSの「水曜の薔薇」や「プレゼント」(玉置浩二) 「セクシィ」(下田逸郎)などを収めた全10曲が収録。また、ハイレゾ音源もFLAC96kHz,192kHz/24bit・5.6MHz/1bitとオーディオファンも納得の3形態でリリース。
このリリースを記念して、2018年11月『camomile colors』リリース時以来2度目のインタビューを実施。本作品に関しての話や、新型コロナウイルス蔓延によってもたらされた新しい生活様式に関してのお話を伺った。
※2018年11月掲載【藤田恵美『camomile colors』リリース記念インタビュー】こちら
藤田恵美『ココロの時間』
DSD[5.6MHz/1bit] FLAC[192kHz/24bit] FLAC[96kHz/24bit]
–「ココロの時間」リリースおめでとうございます。邦楽カバーアルバムは「ココロの食卓 ~おかえり愛しき詩たち~」以来 12 年ぶりで今回は男性ボーカルのカバー作品ですが、「ココロの食卓」とはどのような違いが出ましたか?
藤田(以下、敬称略)ありがとうございます。それほど大きな違いはないとは思いますが、前作はフォークやポップスだけじゃなく、JAZZの要素があったり、ストリングスや二胡を効かせたアレンジ…と曲によってのバリエーションがありましたが、今作の「ココロの時間」の選曲がフォーク系が多いので、アレンジもその世界観の中で統一されているかと思います。これまでもカバーの選曲をする時、男性ボーカリストの曲のほうが違う雰囲気に仕上がったりして、面白いなと思っていたので、今回はアルバム全曲男性ボーカリストの曲にしてみようと思いました。
–「ココロの時間」の選曲に関してはご自身でこの 10 曲を選ばれましたか?それともスタッフと話し合いながらでしょうか? 選曲のエピソードがあれば教えてください。
藤田 一応スタッフや周りの知人からも曲の案を出してもらいますが、まずは自分が歌ってみたいものを優先にチョイスします。そしてデモで歌ってみるのですが、必ずしも自分が好きだからと言って、合うかどうかはまた別で。逆にスタッフ側から提案されたものが面白いという時もあって…結局自分の選曲は8~9割くらいですね。
–日本の音楽史を飾る名曲達が多いですが、制作時に特に苦労した曲を強いて選ぶとしたらどの曲になりますか?
藤田 耳馴染みもあり1番楽に歌えると思っていたのに、意外にも最終的に1番苦労したのが「白いブランコ」でした。
ビリー・バンバン「白いブランコ」
–カバーアルバムは様々な歌手の方がリリースされていますが、藤田さんが特に心に残ったカバー作品はございますか?
藤田 アーティストが誰かの曲を歌って、素敵だな…買いたいな…と思った最初の記憶は、カントリーシンガーのEmmylou Harris (エミルーハリス)が歌ったビートルズの「Here There And Everywhere」と当時ビッグジョンのジーンズのCMに使われていた「Tennessee Waltz」でした。私が高校生の時です。歌い手が変わると曲の魅力もこんなに変わるんだということを知りました。カントリーミュージックではオリジナルアルバムにカバー曲を入れる事も普通にあって、今回はどんな曲をどんなふうに歌うのかな?なんて楽しみもありました。
Emmylou Harris「Here There And Everywhere」
Emmylou Harris「Tennessee Waltz」
藤田 日本にも素晴らしい方々がたくさんいらっしゃいますが、代表して挙げるとするならばちあきなおみさん。見事にご自分の世界に染めてしまうところは本当に凄いです。カバーアルバムのコンセプトとして明確で面白いなと思ったのが、稲垣潤一さんの「男と女」シリーズ。デュエット曲として作られていない曲を稲垣さんと女性アーティストで見事に成立させるアレンジ。そして新たな曲の魅力を引き出していると思います。実は私も「Yes-No」と「天使のウィンク」の2曲で参加させて頂いたのですが、カバーアルバムという点では同じ括りではありますが、自分では発想出来ないフィールドで楽しませても頂きました。
稲垣潤一「男と女 -TWO HEARTS TWO VOICES- (Special Edition)」
藤田 最近ではJames Taylor のアルバム「American Standard」。文字通り「Moon River」のようなスタンダードナンバーを歌っているのですが、何を歌ってもやっぱりジェイムステイラーになっていて、「あ、そういえばカバーアルバムだったのね?」みたいな、力のぬけた本当に素敵な大人の音楽って感じがします。
James Taylor 「American Standard」
– 今後、『新しい生活様式』により在宅での時間が増える方が多いと思います。音楽の楽しみ方・付き合い方に関して藤田さんなりのお考えはありますか
藤田 音楽の聴き方は人それぞれでいいと思いますが、私が音楽を聴きたいと思う時は、気持ちが沈んでいる時や慰めてもらいたいという時より、とっても気分がいい時なんです。あーいい天気!とか、あー空がきれい!とか、ベランダの花が咲いた!みたいな小さな喜びを感じた時に、音楽が聴きたいと思う事が多くて。そうすると音楽の心地よさと相乗効果になって、喜びもまた倍増します。いつもの自分の空間が、どこか自然の場所で森林浴しているかのような気分になったら、最高です。そんな音楽との出会いを見つけたいし、自分自身もそういう音楽が出来たらいいなって思います。
– 今日はインタビューありがとうございました。このインタビューをご覧になった方は小さな喜びを感じたときに是非『ココロの時間』を聴いていただきたいと思います。
藤田恵美『ココロの時間』
DSD[5.6MHz/1bit] FLAC[192kHz/24bit] FLAC[96kHz/24bit]