月刊moraチャート分析(2017年3月)

2016年7月からmoraのヒット傾向を分析してきた本コーナーですが、今回からハイレゾ(まとめ買い)の売上に対して、“総合チャート”と、毎月ひとつのジャンルに絞った“テーマチャート”の切り口で見ることで、より深いヒット傾向を読み解いていければと思います! ハイレゾは、年々どころか月々に様々なヒットが生じているので、どうぞお付き合いください(私も毎月勉強中です!)

 

それでは、まず3月度のハイレゾアルバム総合チャートを見てみましょう。

 

■ハイレゾ・アルバム総合 2017年3月度 集計期間:2017年2月27日~3月26日

月間 今週 タイトル アーティスト名 発売元
1 87 22 1 GET WILD 2017 TK REMIX TETSUYA KOMURO A
2 48 6 4 1 We Are X Soundtrack X JAPAN S
3 10 8 7 2 ラ・ラ・ランド
(オリジナル・サウンドトラック)
Various Artists U
4 1 2 脳のストレス解消ヒーリング ~究極のリラクゼーションのために~ RELAX WORLD SC
5 12 9 6 4 劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-
Original Soundtrack
梶浦 由記/ユナ(神田沙也加) S
6 8 12 9 3 Catch the Moment LiSA S
7 5 1 まばたき YUKI S
8 15 7 9 12 HD Jazz Volume 1 Various Artists SRT
9 26 14 2 ひらり 大原 櫻子 V
10 20 16 11 7 ÷ (Deluxe) Ed Sheeran W
11 25 15 3 あのときの歌が聴こえる 三月のパンタシア S
12 11 3 Break Your Fate 西沢 幸奏 V
13 22 13 13 15 Utada Hikaru Single Collection Vol.1 宇多田ヒカル U
14 44 34 12 6 SPLASH☆WORLD miwa S
15 24 11 19 18 ベスト・サウンドトラック・ハイレゾ・セレクション・プレミアム ~オールタイム・ベスト~ Hollywood Movie Works RA
15 62 24 15 7 Shadow and Truth ONE III NOTES LA
17 62 31 15 5 ANIMA サラ・オレイン U
18 31 34 21 13 ようこそジャパリパークへ どうぶつビスケッツ×PPP V
19 22 17 17 28 Fantôme 宇多田ヒカル U
20 46 5 HAPPY 三代目 J Soul Brothers A

※「-」は100位圏外、網掛けは8週間以上TOP50入りしている作品

メーカー一覧:A=エイベックス、LA=ランティス、RA=Rambling RECRODS、S=ソニー、SC=Sugar Candy、SRT=Sound Recording Technology、U=ユニバーサル、V=ビクター、W=ワーナー

 

 

1位は、TETSUYA KOMURO(小室哲哉)による「GET WILD 2017 TK REMIX」。今年は、TM NETWORK「Get Wild」(1987年4月8日発売)の発売30周年を記念して、4月5日に再録音、リミックス、LIVE音源、カバーと、ありとあらゆる「Get Wild」を収録した4枚組CD『GET WILD SONG MAFIA』がTM NETWOKR名義で発売されます。過去にも“全曲「愛のメモリー」(松崎しげる)”、“全曲「Love Somebody」(織田裕二)”、“全曲「Bomb A Head!」(m.c.A.T.)”という半分ネタのような作品が発売されましたが(微笑)、今回のは“全36曲ゲワイ”ということで大きな話題となっています。

 

このうち、先行配信となった小室哲哉による最新リミッ クス音源が今月の1位なのです。1週目1位、2週目22位、3週目87位と急落しつつも、月間1位というのは、それだけ熱心なファンが今回の発売を大いに期待している表れでしょう。また、同時に、小室の近年のソロワークスを集めた『Tetsuya Komuro JOBS#1』、そのインスト版となる『Tetsuya Komuro JOBS#1 (INSTRUMENTAL)』、そして彼が手がけたglobeの楽曲からボーカルを抜き取った『小室哲哉のほんもののバックトラック集#globe編』も配信され、3作揃えると、15000円を超えるにもかかわらず、それぞれ週間でTOP20入りしています。ハイレゾ時代の到来とともに、小室哲哉が再注目されているとも言えるでしょう。

 

chart-201703-1

TETSUYA KOMURO『GET WILD 2017 TK REMIX』(エイベックス)

 

2位には、イギリスで制作されたドキュメンタリー映画『We are X』のサウンドトラックがランクイン。映画に合わせた作品とはいえ、「Kurenai(紅)」「Tears」「Rusty Nail」「Forever Love」などの代表曲に加え、同映画のテーマソングとなっている新曲「La Venus」も収録されているので、最新ベストといった意味合いもあり、ハイレゾ入門者にとっても入手しやすい作品なのでしょう。また、刹那的に輝いていた初期に在籍していたソニーミュージックから25年ぶりの新作として発売されたことも感慨深く思うファンも多いのかも。

 

それにしても、1位の小室哲哉はTM NETWORKとして1987年に、2位のX JAPANは当時Xとして1989年にそれぞれブレイクを果たしており、80年代から90年代のレジェンドが、ハイレゾでもかなり強くなっていますね。この年代のアーティストのCDパッケージのヒット理由として、“ミドル世代は形に残るものに愛着がある”という解説をしばしば見かけますが、こうしたハイレゾのヒットも鑑みると、“形に残るもの”というよりも、“形に残る、残らないに関係なく上質なものに思い入れがある”、といった方がより適切かもしれません。

 

なお、2位の『We Are X』の他にも、3位の『ラ・ラ・ランド』、5位の『ソードアート・オンライン』とサウンドトラック系のヒットが目立つので、今月は“サウンドトラック”をテーマとしたチャートを後半のテーマ別で分析します。

 

chart-201703-2

X JAPAN 『We Are X Soundtrack』(ソニー)

 

また、TOP20全体を見ると、6位のLiSAや7位のYUKI、9位の大原櫻子、11位以下でも三月のパンタシア、西沢幸奏、宇多田ヒカル、miwa、サラ・オレインと、女性ボーカルのヒットが目立つのも配信チャートの特長です。特にハイレゾの場合、アニメ関連作がいち早くブレイクする傾向にあります。

 

今月度も11位に三月のパンタシアがランクイン。彼らは、女性ボーカル「みあ」を中心に活躍する、イラストレーターやコンポーザーが集まったクリエイター・ユニットで、表立った活動はしていませんが、これまで3作のシングルが、昨年4月にアニメ『キズナイーバー』、オリジナルビデオアニメーション『クビキリサイクル』、そしてアニメ『亜人ちゃんは語りたい』と、どれもアニメのテーマ曲に起用されたことで、今回の1stアルバムも週間3位をマーク、CDアルバムはオリコン33位なので、ハイレゾでの強さは明白です。

 

しかし、アニメ発とはいえ、胸キュン系の女性ボーカルや作風は、アニメファンのみならず、miwaや大原櫻子のリスナーも好きになりそうなので、今後、さらに広がりそう。気になった方はまずは動画サイトでチェックしてみては?

 

chart-201703-3

三月のパンタシア『あのときの歌が聴こえる』(ソニー)

 

 

さて、ここからはサウンドトラックに限定したチャートを見てみます。アカデミー賞の各部門を席巻した『ラ・ラ・ランド』に、X JAPANのドキュメンタリー映画『We Are X』、さらにはディズニー映画の『モアナと伝説の海』など、音楽要素の強い作品が相次いで公開となり、それらのサウンドトラックが総合チャートでも上位入りしているので、ここでまとめてみました。ここでは、より広義として、ある作品に沿ったカバー集も含みますが、主題歌集のようにボーカル専門で集められたものは対象外としています。

 

■ハイレゾアルバム・サントラ部門 2017年3月度 集計期間:2017年2月27日~3月26日

月間 今週 タイトル 発売元
1 10 2 1 1 We Are X Soundtrack S
2 1 3 3 2 ラ・ラ・ランド (オリジナル・サウンドトラック) U
3 2 4 2 3 劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-
Original Soundtrack
S
4 3 5 4 4 ベスト・サウンドトラック・ハイレゾ・セレクション・プレミアム ~オールタイム・ベスト~ RA
5 5 1 「風夏」 サウンドコレクション V
6 4 7 6 モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <日本語版> A
7 6 5 G’sG60~スタジオジブリピアノメドレー60min.~ C
8 7 7 7 君の名は。 U
9 9 6 ラ・ラ・ランド (コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス) U
10 7 8 TBS系 火曜ドラマ「カルテット」オリジナル・サウンドトラック AR
11 9 ベスト・サウンドトラック・ハイレゾ・セレクション・プレミアム ~オールタイム・ベスト~シーズン2 RA
12 5 この音とまれ!~時瀬高等学校箏曲部~ K
13 5 シン・ゴジラ劇伴音楽集 K
14 8 Piano Collections FINAL FANTASY XV -夜に満ちる律べ- SQ
15 7 『ひるね姫~知らないワタシの物語~』
オリジナル・サウンドトラック
W
16 FINAL FANTASY XV Original Soundtrack SQ
17 ソードアート・オンライン ミュージックコレクション S
18 10 FINAL FANTASY ORCHESTRAL ALBUM SQ
19 TVアニメ「鬼平」オリジナルサウンドトラック TM
20 モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <英語版> A

※4週分のサウンドトラック部門での売上数TOP20を算出した。「-」はサウンドトラック部門の週間TOP10圏外。

メーカー一覧:A=エイベックス、AR=Anchor Records、C=コロムビア、K=キング、RA=Rambling RECRODS、S=ソニー、SQ=SQUARE ANIX、SRT=Sound Recording Technology、TM=TMS Records、W=ワーナー  

 

 

1位の『We Are X』に続く2位は、全世界で大ヒットしているミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』のサウンドトラック。総合でも、5週連続TOP10入りしており、また9位には、未発表トラックや別バージョンも含め全44曲収録された(コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス)もランクイン。こちらは、配信限定となっています。サウンドトラックCDの方は、すでに累計7万枚を超え、10万枚突破も確実。SNSでは「聴いていると踊りたくなる!」といった書き込みが多いのですが、音楽を何度も聴けば、ジャケットにもある片手を斜め上に挙げながら、もう一方の手で相手の腰を抱えるというスタイルまで出来てしまうのか、そういったポージングが今後流行するのか期待しています(笑)。

 

chart-201703-4

ラ・ラ・ランド (オリジナル・サウンドトラック)(ユニバーサル)

 

TOP10を見てみると、1位、2位、9位、に加え3位の『ソードアート・オンライン』、6位の『モアナと伝説の海』、8位の『君の名は。』と、やはり映画のサウンドトラックが多数ランクイン。4位のサウンドトラックのカバー集も入れると、7作までが映画関連です。これに対し、TV関連は5位のアニメ『風夏』と、10位のドラマ『カルテット』のみ。TV関連の作品も多数発売されていますが、スケールの大きな映画の方がサウンドトラックも楽しめるという人が多いのでしょうか。特に、ハイレゾではこの傾向がより顕著に出ています。

 

そんな中で、12位と19位の作品はちょっと変わっていて面白いので触れておきます。

 

まず、12位は、筝曲部を舞台とした漫画の登場人物たちが演奏するという作品『この音とまれ!~時瀬高等学校箏曲部~』。こういったジャケットのドラマCDはしばしば見られますが、本作は筝曲100%、しかも、お正月の商店街で流れていそうな緩やかなものは僅かで、大半はダイナミックな演奏やスペクタルな曲想で、まさに学生のスポーツ競技のようなエネルギーに溢れた作品です。オリジナルの楽曲も多く、カッコいい!

 

19位は、人気小説『鬼平犯科帳』の誕生50周年を記念したアニメ『鬼平』のサウンドトラック。こちらは、全篇を通して、ジャズ・テイストで時にスリリングに、時にムーディーに聞かせ、通常のドラマのサウンドトラック以上に、音楽的に独立した魅力を放っています。ちなみに、主題歌は由紀さおりの「そして・・・生きなさい」。サウンドトラックには未収録ですが、こちらも、やはりジャズテイストで、諸行無常の人生を優しく肯定するようで、まさに『鬼平』の世界!是非、ハイレゾでも配信してほしい逸品です。

 

chart-201703-5

この音とまれ!~時瀬高等学校箏曲部~(キング)

 

chart-201703-6

TVアニメ「鬼平」オリジナルサウンドトラック(TMS Records)

 

このように、ジャンルを細かく見ていくと、様々なヒット作品が生まれていることが分かりますね。今後も、全体のヒット動向に目を向けつつ、隠れたヒット作品も見つけ出していければと思います!

 


 

【筆者プロフィール】

臼井 孝(うすい・たかし)

1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やau Music Storeの監修、さらにCD企画(『エンカのチカラ』シリーズや松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルなど)をする傍ら、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた記事を執筆中。2016年10月14日に配信開始された『ねこのための音楽 ~ Music For Cats』を流していたら、仕事場にいたネコがリラックスし始めてビックリ。ただ、人間にとっては、落ち着かない音が随所に入っているような・・・(苦笑)。Twitterは@t2umusic