聴く人の心を究極まで癒し、美しく磨いてくれる。DSD音源の特長を活かした新録アルバム『Gradation』配信スタート!
なぜDSD音源によるアルバム『Gradation』を制作したのか?
類例を見ないコンセプトと、音源そのものが持つ美しさ。
その理由と作品の全貌を、本作のプロデューサーである津田直士氏にインタビューしました。
~Track List~
『確かに、ちょっと普通の音楽じゃないかも・・・(笑)』
――DSD音源でのリリース、そして不思議なアルバムコンセプト・・・伺いたいことが色々ありますので、よろしくお願いします。
津田 はい、何でも聴いて下さい(笑)
――まず、今回配信がスタートした、アルバム『Gradation』は、”Onebitious Records” 第一弾作品となるんですね。
津田 そうです。今年の1月、mora内に設立されたDSD専門のレーベル”Onebitious Records” に、プロデューサーとして参加しまして。スタッフと話し合ったところ、第一弾として、まずはインストゥルメンタルの作品を、ということになり、今回のアルバムリリースに至りました。
――では、「DSD音源」とこのアルバムの「あなたのための映画音楽」という不思議なコンセプトって、どんな関係があるんですか?
津田 お! いきなり核心ですね。ちょっと語っていいですか?(笑)
――ええ、核心でしたら、ぜひお願いします(笑)
津田 あの……例えば代々木公園みたいなところで、フルートとかサックスの練習をしている音が聴こえたりすることってあるじゃないですか。あと、住宅街を歩いていてピアノの音が聴こえるとか。
――はい、あります、あります……。
津田 でね、今度は例えば繁華街を歩いていて、店先の小さなスピーカーから無理矢理大きな音で、めっちゃ歪んだりしながら、流行っている音楽がかかっていたりするじゃないですか。ああ、うるさいな、みたいな。
――ああ、それもよくありますね。
津田 結論言っちゃうと、前者は素人の音楽、そして生音という意味で良い音。後者はちゃんとプロフェッショナルが制作した音楽で、(制作者から見れば)歪んでいる悪い音(笑)
――そうですね。
津田 さらに、前者はその音を聴いている人が主人公で、聴こえている音はその人の人生にあくまで彩りを与えてくれる役割。 後者は、流れている曲には、その主体や背景、ストーリーがたくさんあって、聴いている人はその音楽が流れている場所をたまたま通りがかっているわけで、必ずしもその曲を聴いたひとが主人公とは限らない。
――なるほど。
津田 だから、今回のアルバムなんです。
――えっ……?
津田 あ、すみません、もう少しちゃんと(笑)。 DSDの音って、ほぼ原音そのものなんですよね。だから、リアルに聴こえる、空気の振動そのもの、みたいな音を、そのままリスナーに伝えることができる。だったら……っていうのがまずスタートでありまして。
――はい、それはよく分かります。
津田 じゃあ、自然の音とかDSDで色々出せたらいいな、とか普通に考えていたんですけど、ある日、突然閃きまして。
――閃きました?(笑)
津田 ええ。僕、人生って映画だと思うんですよ。常々そう思っていて、そういう考え方の配信チャンネルを持っていたりするくらいで……。 でね、人生は映画だから、自分はその映画の主人公。だから未来は自分で創るもの、って……。
――素敵な考え方ですね。
津田 そうなんですよ(笑) でね、さっきの、風景の中の生音、につながるんですけど。まず、いろいろな人の人生、つまりその人の映画のための音楽を提供したいな、と思いまして。ちゃんと美しい音楽をいくつも用意してね。で、もしその音が限りなく原音に近ければ、聴く人の人生というリアリティに対して、そのまま大きな力になれるんじゃないかな、って思ったんです。いや、閃いたんだ(笑) 閃いたんですよ。
――聴く人の映画音楽というコンセプト、美しい音楽、そして生音であればさらに活きる、ということですか?
津田 素晴らしい、まとめましたね(笑) その通りです。 生音に近ければ、聴いている人の側で、常に生演奏しているようなものですから。そして、その音楽が聴いている人の心を豊かにできて、目に映る景色がいつもより鮮やかに、そして活き活きとしたドラマティックなものになったら素晴らしいな、と思いまして……。
――それは聴く側にとって、とても嬉しいことだと思います。
津田 そうですよね、ああよかった。だから、通勤通学の時、散歩している時、一人で自分と向かい合っている時とかに聴いてもらえると、目に映る景色が、あと音が良い分空気感みたいなものが、いつもと違って見えるはずなんです。そして、「ああ、自分の人生って映画なんだ……」と感じてもらえたらうれしい。
――それは素敵ですね。
津田 全体的に優しい音楽なので、音が何かを妨げたりすることはたぶんないと思うんです。おそらく癒されたり、幸せな気持ちになったりしてもらえるかな、と……。
――曲はすべて津田さんのオリジナルですね。
津田 はい。12曲、それぞれ聴く人の心に働きかける方向が微妙に違っています。タイトルでそのニュアンスは分かるかも。でも、共通しているのは、どの曲も聴いている人のための映画音楽、というところ。だから、受け取り方はまったく自由です。ああ……聴く人の、目に映る景色がどんな風にいつもと違うか、すごく興味が湧きます!!
――たしかにそれは楽しみですね……。そういえば、すでに2曲先行して配信されているんですね。
津田 そうですね。幸い、とても好評らしくて。
――脳科学者の茂木健一郎さんから推薦文を頂いているんですよね……。
津田 あはは、そうそう、あれ何でしょう? 推薦文っていうより、完璧、ポエムですよね。「耳を澄ませて、万物と……」 茂木さん、面白いね。
――全12曲入りのアルバム『Gradation』、DSD音源で、聴く人のための映画音楽、ということですが、読んでいらっしゃる皆さんにメッセージがありましたら、どうぞ。
津田 30年近く音楽プロデューサーをやってまして、とにかく何かのマネや二番煎じだけはやらないように心がけてきたんですけど、今回のアルバムもやはりオリジナルなものだと思っています。現時点での最高音質で、しかも聴く人が主体、何といっても聴き始めた瞬間、映画の主人公になるわけですから……普通の音楽じゃないですよね(笑) なので何はともあれ、ぜひ一度聴いて頂けたら嬉しいです。 良かったらまず、Tr.11 Stay Gold と Tr.2 My Love Song あたりを試聴してみて下さい。アルバムの感じが分かって頂けると思いますので。
――ぜひ聴いて頂きたいですね。最後になりますが、moraでは、他にも津田さんが関わっているプロジェクトがありましたよね。
津田 はい、「名曲の理由」という連載をしているのと、mora factory では僕のプロデュースするShiho Rainbowというアーティストが作品を配信しています。
――前回の連載では「制作中の作品」について、その過程をレポートしていらっしゃいましたが……もしかしてこの曲って……?
津田 そうそう、あの記事の《制作中の作品》が、この「Gradation」なんです。で、曲が生まれる様子を書きましたが、実はあれが、さっき試聴をお勧めした、「Stay Gold」なんです。曲が生まれた時、本当に嬉しかったんですよね。
――なるほど! 楽曲の制作風景をこうして見る機会というのはなかなかありませんから、とても新鮮に楽しませていただきました。
津田 ああ、それは良かった。あの記事の曲が何なのか、あれから結構聞かれましたね。やっと完成したので、ぜひDSDのきれいな音で聴いて頂けたら嬉しいです。
――ええ、もちろんです! 今回は貴重なお話、ありがとうございました。
津田 こちらこそ、ありがとうございました。
【津田直士 プロフィール】