warbear 1stアルバムリリース記念・尾崎雄貴メールインタビュー

昨年10月の武道館公演をもってその活動に終止符を打った3ピースバンド・Galileo Galilei。終了時に出された「Galileo Galileiというバンドは僕たちにとって、子供の時に大切に乗っていた“おもちゃの車”のようなものだったのかもしれません。〔…〕大人になった今、この愛する“おもちゃの車”から降りることを決心しました」というメッセージが記憶に残っているリスナーも多いでしょう。

それから約一年。バンドのボーカリストであり、大半の楽曲の作詞作曲を手がけてきた尾崎雄貴が、ソロプロジェクト「warbear」を始動します。
1stアルバムにしてセルフタイトルとなる『warbear』は、バンド後期に顕著であった海外のインディー・ロック・シーンに共振する音楽性を引き継ぎつつ、パーソナルで温もりのあるメロディが際立った、タイムレスな魅力に満ちた名作となっています。

今回moraではアルバムの完成とリリースを記念して、尾崎さんにメールインタビューを実施。
グラミー賞の候補にもなったエンジニア、Phil EKさん起用の経緯や、今作に影響を与えたインプットの数々、またソロ作品ならではの試行錯誤など……一年間の空白を埋める、貴重な回答の数々は必読です。

ぜひ音源(ファンにはおなじみの「わんわんスタジオ」の空気感も味わえる、ハイレゾ音源がおすすめです!)を聴きながら、お楽しみください。

 


  • warbear/warbear

    warbear 1stアルバム
    『warbear』

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  • <収録楽曲>
    1. 車に乗って
    2. Idea01
    3. 墓場の蝶
    4. ウォールフラワー
    5. トレインは光へと向かう
    6. Lights
    7. 罪の国
    8. ダイヤモンド
    9. 掴めない
    10. わからないんだ
    11. 灰の下から
    12. 1991
    13. 27
    14. 落ちていく


 

――バンドの活動終了~現在までどんなことをされていましたか。また、どんな音楽を聴かれていましたか。

旅行に行ったり、家族と過ごしたり、友達と会ったり、今まで過ごせなかったゆったりした時間を1年ほど過ごしつつ、旅先やガレージスタジオなどで曲を書き続けていました。
ニック・ドレイクジョニ・ミッチェルリトル・フィートフリートウッド・マック 、キュアーデヴィッド・ボウイニール・ヤングピーター・ガブリエルポール・サイモンヴァン・モリソン ジョン・マーティンジャクソン・ブラウンリチャード・ハーレイマジー・スターマイ・モーニング・ジャケットロキシー・ミュージックダンカン・ブラウンポール・マッカートニー等を聴いていて、それらの多くが作品を作る上でも教科書、インスピレーションになりました。

 

――ミックスを担当したエンジニア、Phil EKさんとの共同作業はどのように行われたのでしょうか。また、彼に依頼することになったきっかけ、理由についてもお聞かせください。

一番の理由はThe Shinsの『Wincing The Night Away』を彼がミックスしていたことです。アルバム全体を通してサウンドのムードと風通しの良さが好きだったので、ずっと気になっていたエンジニアの1人でした。
日本から連絡して音源を送ったところ、一緒に仕事をしてくれるとのことだったので、実現しました。
自分が捉えていたフレーズの効果に、まったく逆の効果を足されていたり、クリエイティブなエンジニア達とやり取りするのは刺激になりました。

 

――先行して公開されたムービーでは、孤独に突き詰める時間が長かったのではという印象を受けました。「ひとりである」ということが、今作の作風やテーマ性にどのような影響を与えていると思いますか。

自分が小さな頃から孤独を感じやすく、何に対しても悩み過ぎてしまう性質を、それの生き写しのような作品で表現できたらと考えていました。今回、それが出来たので、とても幸せで達成感を感じています。
人は生まれてから死ぬまで永遠に独りだ、という考えのもと作品を組み立てていきました。
それが僕の人生感の答えではなく、あくまで今感じていることを音楽に落とし込んだ、という感じです。
アルバムを作っている間、自分で自分を傷つけたり、背中を押したり、抱き締めたりするような感覚だったので、辛かったり酔っ払ったりしたこともありましたが、1つの到達点に辿り着いたアルバムになったと思います。

 

――バンドでは取り入れにくかった、多彩な楽器を取り入れたとのことですが、それぞれの音色を録る際にどのようなことに気を遣われましたか。

バンドを終了し、音楽性について、”良い曲である”こと以外に求められていることが何もない(と僕は信じていました)分、10代の頃に戻ったかのような感覚でレコーディングすることが出来て、何も考えず、感じたままに所持している楽器に手を伸ばして録る、ということができました。ですが、様々な楽器を使いすぎて”おもちゃ箱をひっくり返したような~”などと一言で片付けられてしまうようなサウンドにはならないように気を遣っていました。

 

――ソロプロジェクトでは、リスナーの視点からするとシンガーソングライター的な見え方が強くなると思います。「warbear」として、歌で言葉や思いを伝える、ということについてはどう考えていますか。

ソロの作品を作る上で、曲を書いて歌うということは、自分の人生の一部や、感じたことを、心から削り取り、粘土のようにこね回しながら、美しい何かを形作るプロセスなんだ、と痛感しました。それと同時に、誇らしさも感じていたり、混乱したり、一言では言えませんが、綱渡りのように気を引き締めていかなきゃ!と感じることが多かったです。

 

――「わんわんスタジオ」でレコーディングすることのよさは、改めてどこにあると思いますか。

わんわんスタジオ自体、かなり狭い場所なので、パーティションやマイクの立て方、楽器をプレイする場所に四苦八苦することがあって、その中で発見したり、工夫していくことが、別のクリエイティブなアイディア、フレーズに繋がったりすることがあります。
手の届く位置にある楽器、アウトボードやコンソールに触れながら音楽を作っていくのは、(『スター・ウォーズ』に登場する)ミレニアム・ファルコンのような宇宙船に乗って旅をしている気分なんです。
その雰囲気がサウンドにも明確にあらわれてくるので、自分のスタジオで録ることが好きです。

 

――資料にもある「ワールドスタンダード」ということは意識されていましたか。また、ご自身の考える今作のオリジナリティについても、お聞かせください。

あまり意識することはありませんでした。僕は日本人で日本語で歌っていて、自分を形作ってきた音楽に敬意を持って楽曲を書いていく。それ以外はなるべく考えないようにしています。
僕はアーティスト側から追い求めるオリジナリティをあんまり信頼していないので、自然に音楽を書いて、誰かにこれは間違いなく尾崎雄貴が書いた曲だと伝わるようなものが作れたら満足します。

 

――年明けからこのアルバムを引っ提げたライヴも始まります。最後に音源を聴いてくれたリスナーに、ライヴでの見どころを教えてください。

アルバムのサウンドを再現する、というよりは、もっと動的でその場限りのライブがしたいなと考えているので、それを一緒に感じてくれたらいいなと思います。

 

――尾崎さん、ありがとうございました!

 


 

warbear オフィシャルホームページ(外部リンク)