ウォークマン®でハイレゾを堪能する Cornelius『Mellow Waves』

ポータブル環境でもハイレゾ音源の魅力を存分に楽しめるウォークマン®を使い、最新アルバムの魅力を紐解いていこうという企画です。今回は、およそ11年ぶりのニューアルバムとなったCornelius『Mellow Waves』を紹介させていただきます。

テキスト:野村ケンジ

 


 

 近年は「攻殻機動隊」など映画やテレビの劇伴に携わったり、高橋幸宏を中心としたユニットMETAFIVEへの参加など、幅広い音楽活動を行っている小山田圭吾。そんな彼の1人ユニットであるCorneliusが、2006年発売の「Sensuous」以来ほぼ11年ぶりとなるスタジオアルバムをリリース。それが『Mellow Waves』だ。

 『攻殻機動隊』劇伴などのリリースもあったことからか、それほど“久々”といった印象はないものの、前作『Sensuous』とも劇伴などとも異なったイメージのサウンドに作り上げられているのが、最新アルバム『Mellow Waves』の特徴だ。ゆらゆら帝国の坂本慎太郎が歌詞を提供していたり、イギリスのロックバンド、Lushのミキ・ベレーニをヴォーカルに迎えたりと、いままでのCorneliusとは異なる世界観を作り上げているのも特徴だ。

 タイトルどおり、メロウな曲調をメインに、緩やかで優しいイメージのサウンドを作り上げている『Mellow Waves』だが、いっぽうでCorneliusらしいというべきか、小気味よいリズミカルなサウンドもあったりと、バラエティに富んだ構成となっているのもこのアルバムの特徴だ。CDやハイレゾなどのメディアに関係なく、完成度の高い魅力的なアルバムに仕上がっているが、それでもハイレゾ版のアドバンテージは大きい。なぜなら、ヴォーカルや楽器の音がとてもリアルに感じられ、かつアーティストの意図通り(と思われる)素直な音色を持ち合わせているため、楽曲の魅力をも存分に感じ取ることができるからだ。たとえば1曲目「あなたがいるなら [If You’re Here]」を聴くと、小山田圭吾のヴォーカルが、エレキギターの音が、シンセサイザーの音が、実体感を伴ったリアルなサウンドを披露してくれるので、メロウな感情表現がしっかりと伝わり、ラブソングとしての素敵さが数倍高まったかのように感じられる。いっぽうで、10曲目のインストゥルメンタル曲「Crepuscule」では、アコースティックギターとシンセサイザーとピアノの音色が絶妙に融合して広がり、まるで新しい楽器が創造されたかのような、これまでに聴いたことのない不思議なサウンドフィールドを堪能することができる。

 そう、ハイレゾ版最大の魅力は、音色のリアルさが生み出す、表現の素直さといっていい。小山田圭吾が、楽器をチョイスし、音色をコーディネイトし、それを演奏し、歌い、歌ってもらい、それぞれのパートを重ね、楽曲をひとつひとつ丁寧に作り上げていくさまを、まるで横にいて見ているかのような現実感で感じ取ることができるのだ。レコーディングスタジオに潜り込んでいるかのようなリアリティ溢れるサウンドは、音楽ファンにとってはたまらない魅力といっていい。やはり、Corneliusはハイレゾで聴くべき、そう思わせてくれる表現力に富んだ多彩なサウンドだ。当然、小山田圭吾ならではの印象的なメロディあってこそだが、だからこそ、ハイレゾ版でその全てを楽しみたい、そう思わせてくれるアルバムだ。しかも、とても素直な音色の恩恵もあって、聴き心地も素晴らしくいい。Corneliusらしさを存分に楽しみたいのだったら、ハイレゾ版がオススメだ。

 

Cornelius

Mellow Waves

試聴・購入 [FLAC|96.0kHz/24bit]

 

収録曲

  1. あなたがいるなら [If You’re Here]
  2. いつか / どこか [Sometime / Someplace]
  3. 未来の人へ [Dear Future Person]
  4. Surfing on Mind Wave pt 2
  5. 夢の中で [In a Dream]
  6. Helix/Spiral
  7. Mellow Yellow Feel
  8. The Spell of a Vanishing Loveliness
  9. The Rain Song
  10. Crepuscule

 

 

~機材紹介~

 今回の試聴では、ウォークマン®の最新モデル「NW-ZX300」(上図)+フラッグシップヘッドホン「MDR-Z1R」という組み合わせをチョイス。オプションの着脱式ケーブル「MUC-B20SB1」を使い、音質的なアドバンテージの高いバランス・ヘッドホン出力にて試聴を行った。

 驚きだったのが、「NW-ZX300」のバランス・ヘッドホン出力の素性の良さだ。もともと「MDR-Z1R」は据置型のヘッドホンアンプと組み合わせることが前提のハイエンドモデルであり、ウォークマンとはベストマッチでないはずなのだが、この「Mellow Waves」に関していえば、細やかなニュアンス表現と多彩な音色がしっかりと伝わり、ハイレゾ版ならではの魅力を存分に味わうことができた。製品も音楽も素晴らしいこその結果とはいえ、素晴らしいマッチングといえる。

 

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