音楽コンシェルジュ ふくりゅうのDig It 90’s~隠れた神曲探訪 vol.3

〜これまでのあらすじ〜

90年代に生まれた隠れた神曲を『mora』内で掘っていくコーナー。昨今、音楽配信やハイレゾ、聴き放題サービスの登場など、膨大なアーカイヴ音源で情報過多な現代。どんな楽曲でも最初に聴いたときが“自分にとっての新曲”というフラットな時代へと突入しました。2017年の“いま”聴いても神曲だと自信を持ってレコメンデーションできる、90’s邦楽名曲を紹介していきます☆

 


 

~今月の隠れた神曲~

 

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ムーンライダーズ「ダイナマイトとクールガイ」(1992年)

アルバム『A.O.R. Adult Only Rock’n Roll』2曲目収録

https://mora.jp/package/43000006/00094633257658/

 

シリーズ3回目は、日本を代表するスーパーバンド、ムーンライダーズをピックアップ。2017年のいま聴いてもグッとくる、琴線を震わせてくれる楽曲が「ダイナマイトとクールガイ」。作詞は、伝説のファミコン・ソフト『MOTHER』の音楽も手がけたヴォーカルの鈴木慶一、作曲・編曲は鬼才 岡田徹らしいポップなレゲエ調のリズムによって郷愁を刺激してくれるナンバーに仕上がっています。

 

5年間の活動休止後にリリースした傑作アルバム『最後の晩餐』(1991年)にて復活した祝祭感とは打って変わり、ディープサイドを描いたアルバム『A.O.R. Adult Only Rock’n Roll』に「ダイナマイトとクールガイ」は収録されています。しかしながら、プロデュースを担当した岡田徹と白井良明によるキレのあるサウンドメイク、耳なじみのいい歌声を聴かせてくれる鈴木慶一のプロフェッショナルな才能も合わせて、大人の遊び心=“アダルト・オンリー・ロックンロール”を感じさせる奇跡的なポップチューンの誕生となりました。

 

ついつい一緒に歌いたくなるポップなメロディーとは裏腹に、注目したいのが言葉の魅力です。いわゆる若い世代中心のJ-POPシーンではありえないほどに映画的で悲しい、“未来が見えなくなった崩壊寸前のカップルの無常観を描いた歌詞”が心に痛いのです。そして注目したいのがSF的で意味深な“砂の天使”の存在。

 

日活アクション映画的な勇ましいタイトルでありながら、かつて“ダイナマイトとクールガイ”と呼ばれていた自分たちの人生を顧みる楽曲なのですね。歌詞には、伏線を張り巡らした緻密な構成で、情景を映像的に浮かび上がらせる仕掛けがされています。曲調的には、時代的にも重なるバブルガムブラザースのヒット曲「WON’T BE LONG」風なレゲエポップな要素も感じられたり。とはいえ、シングルヒット狙いとしては懲りすぎたのかもしれません。だからこそ時代をこえていく名曲として語り継いでいきたいナンバーだと思います。

 

なかなか現在のポップシーンでたとえられるような曲が浮かびませんが、2017年の現在から振り返ると、昨年末のSMAP解散時におけるメンバーの心境にもつながってきますね……。“SMAPに歌ってほしい曲だった”、なんていう個人的欲求は残酷な願いなのかもしれません。

 

以上、いま聴いても新鮮なムーンライダーズで「ダイナマイトとクールガイ」でした。

 

ムーンライダーズ ディスコグラフィはこちら

鈴木慶一 ディスコグラフィはこちら

 


 

【プロフィール】

 

ふくりゅう

 

ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

happydragon,LLC代表。Yahoo!ニュース、J-WAVE、ミュージック・マガジン、音楽主義などで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども手掛ける。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)。

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