【鳥山雄司インタビュー】T-SQUAREデビュー45周年記念アルバム『VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風~』リリース記念

T-SQUAREの45周年を飾る、通算50枚目のオリジナル・アルバム『VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風~』には、ギタリスト、プロデューサー、作曲家、アレンジャーとしての八面六臂の活躍で著名な鳥山雄司が参加している。まず、学生時代からの盟友であり一緒に組んでいるバンド、ピラミッドのメンバーでもあった和泉宏隆が残したソロ・ピアノによるスケッチを楽曲としてブラッシュアップ。さらに松本圭司の曲では各方面からファースト・コールのかかるセッション・ギタリストとしての的確なギター・プレイを聴かせている。

デビュー当時からのザ・スクエアを間近で見てきた彼ならではのエピソードや、今回のアルバムにおける仕事の詳細、そしてバンドへの愛を語っていただいた。

インタビュー:近藤正義

 


独占先行期間:2023/5/15(月)~

VENTO DE FELICIDADE ~しあわせの風~

T-SQUARE

T-SQUARE

AAC  FLAC  DSD

■収録内容(全9曲収録)

 01 VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風~
 02かぼちゃの馬車に乗って
 03 Maverick Moon
 04 Believe
 05 CLIMAX
 06 Into The Spotlight
 07 海のみえる坂道で
 08 Stratosphere
 09 Rooms with a view

■参加アーティスト(順不同)

現メンバー:伊東たけし、坂東慧

旧メンバー:安藤正容(gt)、河野啓三(k)、 仙波清彦(per)、久米大作(K)、田中豊雪(B)、長谷部徹(Dr)、則竹裕之(Dr)、須藤満(B)、本田雅人(Sax)、 松本圭司(k)、宮崎隆睦(Sax)

サポートメンバー:田中晋吾(B)、白井アキト(Key)、外園一馬(gt)、山崎千裕(Tp)

スぺシャルゲスト渡辺香津美(gt)、鳥山雄司(gt)、TOKU(Vo/Flh)


――鳥山さんが T-SQUARE のレコーディングへ参加されたのは初めてのことだと思うのですが、これまでに T-SQUARE との接点はあったのでしょうか?

じつは THE SQUARE がデビューするあたりから六本木ピットインとかでニアミスしていたんです。伊東さん、安藤さん、初代ベースの中村裕二にドラムのマイケル河合とか‥ だから43~44年前から知っていたことになります。フュージョンと言うよりも日本のクロスオーバーと言われていた時期でしたから、わりと演奏する場所は限られていましたからね。

 

――メンバー間の交流などはあったのでしょうか?

僕は81年デビューなのですが、その時にライヴをやるために組んでいたバンドのメンバーが田中豊雪(b)と清水永二(ds)でした。このメンバーで1年半から2年くらいやっていたのですが、ある日突然2人から「スクエアに入ることになって‥」と言われ、「えっ、そうなの!?」という出来事がありました。つまり、交流というのとはちょっと違って、メンバーを持っていかれたわけです(笑)

 

――メンバーを持って行かれたのは、もしかして2回目もあるのでは?

88年にアルバム『トランスフュージョン』を出したとき、僕のバンドには本田雅人がいたのですが、ある時期からプロデューサーの伊藤八十八さんが六本木のソニー・スタジオで本田くんをスクエアへ勧誘しているのを何度か目撃していました。その結果、本田くんを T-SQUARE へ持って行かれました(笑)。確かに、メンバーを持っていかれた2回目ですね(笑)

 

――鳥山さん、神保彰さんと一緒にピラミッドのメンバーだった和泉さんは学生時代の音楽仲間でしたよね

学校で同級生だった和泉くんがスクエアに入ったことは、風の噂に聞いてビックリしました。同じく同級生で、一足先にカシオペアに入っていた神保くんも、どこかの学園祭のステージでスクエアと一緒になって、「和泉くん、どうしてここにいるの?」みたいな感じだったそうですよ(笑)
他にも、僕のバンドで伊東さんにゲスト出演していただいたこともありますし、スクエアとは何かと関係が深かったんです。

 

――スクエアというバンドにはどんなイメージを持っていましたか?

THE SQUARE の時代は、一言で表すなら『カレッジ・ジャズ』ですね。デイヴ・ブルーベックとかジャズなんだけどわかりやすくて、一般的な大学生にもアピールできるジャズ、それの現代版というイメージでした。絵画的であり景色や風を連想させるサウンドでした。フレッシュさ、清潔感、そういったどこか学生っぽいニオイがありましたね。
でも、T-SQUARE の時代になって『TRUTH』あたりから変わっていきましたね。メタリックでスピード感のあるイメージ。さらに本田くんが加入したことにより、独創的でメカニカルな方向へ向かっていきましたね。

 

――鳥山さんはその後、いわゆるフュージョンとは少し距離を置いておられるように見えましたが、何か理由があったのでしょうか

僕自身は70年代アメリカのクロスオーバー/ジャズのサウンドで育ちましたので、どうもその後80年代以降の日本独自に進化していったスタイルにはあまり馴染めなくて‥(笑)。そのあたりから日本のフュージョンとは疎遠になっていきましたね。  

 

――今回の、T-SQUAREのアルバムへの参加はどのような経緯だったのですか?

和泉くんの急逝により、ピラミッドをどうするか? という話がありまして、その流れで和泉くんの事務所や身内の方々と話をして、和泉くんが生前に書き溜めてあった曲、60数曲を全部聴かせていただいたんです。そんな中で、著作権的な管理とは別に音楽的な管理を僕がやらせてもらえることになりました。そして、今回 T-SQUARE が45周年のアルバムを作るにあたって和泉くんの曲も入れようということになり、僕が曲を選んでプロデュースしてほしい、という連絡をT-SQUAREのマネジメントからいただきました。そうして、モチーフだけの状態の曲に手をかけて共作として1曲に完成させる作業に入りました。以前、和泉くんの事務所主導でトリビュート・アルバムを作った時にこういう作業をした実績がありましたので、流れはスムーズでした。

 

――具体的には、どのような作業だったのでしょうか

まず、和泉くんの残してくれた曲の中から、リリカルで歌モノにもなりそうな曲を選びました。バースの部分は和泉くんが書いたメロディを使いましたが、それ以降の部分は既にピラミッドで使われていたメロディだったので、その部分は僕が作り変えました。さらにブリッジの部分も足して、1曲に仕上げています。サビは、和泉くんならこうするだろう、という展開にしてあります。作曲していると、イタコのように和泉くんが降りてくるんですよ(笑)。だから、彼と一緒に作っているような感覚でした。

 

――それでは、鳥山さんが参加した2曲について詳しく聞かせてください

「Rooms with a view」が先ほど申し上げた曲です。僕はザ・スクエアの時代のようなカレッジ・ジャズの雰囲気を出したかった。絵画的なイメージを持ったサウンドです。和泉くんが生前に欲しかったものは? と考えると、眺めのいい部屋じゃないかな、と思うんです。彼はパットが広がっている中でピアノを弾くのが大好きでした。パット・メセニーとライル・メイズとか、 ECM的なニオイですね。こんなふうにタイトルとイメージ先行で考え始めて、逆算していくとフィル・ラモーンのサウンドにたどり着きました。だから、ネタを明かすとビリー・ジョエルの「素顔のままで」ですね(笑)。坂東くんと相談して、ツイン・ドラムで昔のスタッフみたいなサウンドにしようとか、伊東さんにはサックスのレンジを敢えて低いところで吹いてもらったり、そうとなれば僕のアコギのイメージは、ヒュー・マクラッケンですよ(笑)

「Stratosphere」は松本圭司くんの曲で、じつは僕は彼とヴァイオリニストのNAOTO君とマハヴィシュヌ・オーケストラみたいなバンドを始めていまして、以前この曲をやったことがあるんです。それで、彼が僕を呼んでくれたんだと思います。EWIとギターの掛け合いも、スタジオ・ライヴ的にほぼ一発録りでした。やったことのある曲だったので、僕としては曲への理解度は高いと思いますが、ゲストとしての参加ですからメンバーとしてやるのとは違いますし、微妙で難しい状況下での演奏です。

 

――やはり「Rooms with a view」とは勝手が違いますね

ギタリストとしてスクエアに参加するのは、和泉くんの曲をプロデュースして仕上げるのとは意味が違います。まさかこういう形で参加するとは思わなかったので、こういう状況にはシビレましたね(笑)。スクエアのレコーディングで安藤さん以外の人がギターを弾いている、しかもどうして僕が? 本当にこれでいいのか? なんて考えちゃいましたよ(笑)

 

――そういう時の、ギターのアプローチはどのようにするのですか?

まず自分のカラーをどの程度まで出して良いのか? ということですが、スクエアだから安藤さんのようなアプローチをしようとは一切考えませんでした。ほぼ一発でライヴのように録っていますから、そこにお客さんがいると想定して満足してもらえるようなアンサンブルを作ろう、という考え方です。何を求めて僕を呼んでくれたのか、そこは分かってくれているはずですから、バンドのカラーが破綻しない範囲で自分を出す、それがバンドへのリスペクトだと思いますよ。

 

――弦楽曲になった「ELEGY」は如何ですか?

僕はアレンジャー指向でギターを弾いていて、弦やブラスのアレンジは昔から好きだったんです。方や和泉くんもクラシックが大好きで、クラシックのスコアリングに興味を持っていました。だから学生時代からよく一緒にアレンジの話をしていて、彼がいつかシンフォニーみたいなことをやってみたいと言っていたのを覚えています。この曲に関しては、元になるピアノだけのモチーフは聴いたことがありましたが、最近になってこの形を聴かせてもらって、ちゃんとそういう夢にもチャレンジしていたんだな、と感心しています。

 

――改めて、今回スクエアのレコーディングに参加しての感想をお願いします

もちろん、僕が参加した2曲は自信を持ってお届けします。スクエアというバンドについて言えるのは、ものすごくサウンドの色が強いんです。ブルーノート東京で演奏しても、六本木ピットインの音がするんです。決してハイファイではないんですが、中音域と低音域の聴感上のスピードが同じくらいで、全部同時にバン!と届く。密度が濃いんです。現代のPAシステムや今時の楽器を使って、このサウンドを出せるのはスクエアしかいないだろうと思います。これこそが、スクエアのバンドとしてのカラーなのでしょう。

 

――では、鳥山さんの現在および今後の予定について聞かせてください

去年、ピラミッドのアルバムを作り、おかげさまで好評でした。和泉くんが存命だった時にアイデアを出し合って考えた最後のアルバムでしたし、僕たち3人がプロフェッショナルとして仕事をする上でのトレンドとなっている音色やプレイ・スタイルについては、一旦ここで完結したと思っています。今後どのようなアプローチをするかは、神保くんと模索しています。ネオ・ソウル的な方向性もいいし、一方では昔のディスコやクロスオーバーも相変わらずやりたいですしね(笑)。まずは配信で何曲かを出して、秋頃にはライヴもやるつもりです。

他には羽生結弦のアイス・スケート・ショー『ファンタジー・オン・アイス』の音楽監督。これがまた労力がかかってカロリー消費量が高い(笑)。それをやりながら山下達郎のリハーサルをやって6月までを乗り切り、7月からツアー。こんなふうに多岐にわたっていろんなことが進行していますのでついていくのが大変です(笑)
インストに関しては、海外でちょっと波がきていますね。これを束にして、ムーヴメントの大波を作りたいです。今30代くらいの人が聴くようなバンドにも素晴らしいインスト・バンドがありますので、巻き込んで一緒に何かできたらいいですね。そんなフェス的なこともやりたいと思っています。

 


T-SQUARE通算50枚目のオリジナルアルバム
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