劇場版『フリクリ オルタナ/プログレ』公開記念 the pillows 山中さわおインタビュー

2000年から2001年にかけOVAとしてリリースされたアニメーション作品『フリクリ』。『新世紀エヴァンゲリオン』のガイナックスが制作、同作で副監督を務めた鶴巻和哉が監督を務め、そのスタイリッシュな映像は海外でも高い人気を博している。
この作品になくてはならない存在がthe pillowsの音楽だ。自らの「オルタナティブロック」というスタンスを高々と掲げ、ただただ自らの信じる“カッコいい音楽”を追求するその姿勢に共感した鶴巻氏により、既存の音源がコンピレーション的にふんだんに使われ、作品の世界観を彩っていた。
そんな『フリクリ』の18年ぶりとなる続編が今年公開される。その名も『フリクリ オルタナ』と『フリクリ プログレ』。切っても切れない関係となったthe pillowsはもちろん続投、今回は作品のために既存楽曲をリレコーディング、さらに主題歌2曲を書き下ろしている。
18年ぶりの続編に思うところや、今年結成30周年を迎える彼らが、後進のバンドだけでなく映像や漫画のフィールドからも支持を集める理由、そして、そもそも「オルタナ」とはいったい何なのか? 北米ツアーを終えたばかりのタイミングで山中さわお(Vo, Gt)に話を訊くことができた。「変わらないこと」「楽しみ続けること」の強さを思い起こさせてくれる、語録の詰まった内容をお楽しみあれ!

聞き手:北出栞・サカウヱ/構成:北出栞

 

――北米ツアーお疲れ様でした。ライブレポートなども拝見させていただいたんですが、今回『フリクリ』の楽曲を中心としたセットリストを組まれていたということで。実際どういった手応えがあったでしょうか。

山中 そうですね……日本で一回も言ったことないけど、間違いなくわかっていることは「人気があった」っていう(笑)。1800人くらいのキャパと言われているところでも、(日本とアメリカでは)消防法が違うんで、日本の1800人のキャパのところより(会場自体の大きさが)全然デカいんですよ。3FまであるようなNHKホールみたいなところを全部売り切っていったので、秋からの日本のライブツアーでまた200人くらいのライブハウスでやるかと思うと気絶しそうだけど(苦笑)。とにかくすごくちやほやされてきました。

――アニメ系のライブとかって、楽曲のイントロが鳴った瞬間に「あ、あの曲だ!」って盛り上がることが多かったりするんですけど、そういった盛り上がり方の違いはありましたか。

山中 『フリクリ』の曲だからというよりは、アメリカ人と日本人の違いになってしまうと思うんですけど……アメリカ人はほんとに自分勝手なんですよ。日本人はやっぱり良くも悪くもちゃんと顔色をうかがう、空気を読むっていう文化ですよね。先に言っとくと日本のほうが好きですよ?(笑) でもちょっとかっこいいなと思うのは、(アメリカの観客は)周りがどうとか関係ないので、自分なりの踊り方とか、自分なりの騒ぎ方とか、もしくは一度も微動だにしないで、ずっとiPhoneで録画しながら画面越しに俺を見てるみたいな人がいっぱいいるんですよ。で、一生懸命ブレないように録ってる奴らの上にダイブしてくる奴もいてめちゃくちゃになるみたいな(笑)。

エンターテインメントをステージに立ってやる人間からすると、コントロールしやすいほうが思い通りにいくわけです。ここでこういう拍手がきて、このMCでこうなるだろう、だからこういう曲順なんだって、段々自分なりのざっくりしたフォーマットができてくるものなんですけど、それがアメリカではまったく通用しない。ただ熱狂してるのは間違いないし、すごく喜んでくれてるから、それはうれしいことで。

――ツイッターで会場の写真がアップされているのも拝見しましたが、建物自体の雰囲気も日本のライブハウスとはまた少し違っていて。

山中 日本であれくらいのキャパの会場って言ったら赤坂BLITZとか、Zepp DiverCityとか、機能的にできていて、すごく音もよくてっていう、日本人っぽい感じですよね。(アメリカは)すごく古いダンスホールを改造してたりとか、ビジュアル的には最高なんだけど、まったく機能的ではない……たとえば、ポートランド、1400人、売り切れ、熱狂してる、39℃、エアコンない、みたいな(笑)。もう出る前から汗だくですから。

とにかくアメリカでは歌詞をわかってる人もほとんどいないし、一番基本となる「ロックミュージックって何なんだ!?」ってところを動物的に伝えるしかないんです。細かいデリケートなことを言ってたらアメリカツアーとか嫌になっちゃうというのを、すごい初期の頃(※ピロウズの最初のアメリカツアーは2005年)に知ったんですよね。

――『フリクリ』という作品をきっかけに、この20年ほどの間に何度かアメリカに渡られてきたわけですが、そうしたサイクルの中で作品に反映されたものがあったりもしましたか?

山中 いやー、そんな感じじゃないです、全然。ほんとにちゃんと(現地で)音楽的にライブをできたのってここ2回くらいで……アメリカツアーの愚痴言ったら俺、長いよほんと(笑)。

(一同笑)

山中 向こうって基本ワンマンじゃなくて、絶対前座がつくんですね。最初の頃は貧乏ツアーだったからセッティングもその間に自分たちでするんですけど、そうこうしてたら急に出番が始まって「ウォー! ハローニューヨーク!」って感じで。でも日本で「渋谷ー!」とか「お台場ー!」とか絶対言わないですからね(笑)。なんかやっぱり「アメリカにいるピロウズ」を演じてるなっていう……日本に帰ってきたらそれがパチンとゼロになっちゃうって感覚でした。

――よく言えば毎回毎回が新鮮ということですかね(笑)。それでは本日の本題ですが……今回18年ぶりに『フリクリ』がリメイクされるというお話を聞いたときに、率直にどう思われましたか?

山中 ……いや、遅いよって思いましたよ!

(一同笑)

山中 普通(空いても)5年ぐらいでしょ! 18年ってなんですか! そこまでいったら「ない」って思いますよ。

最初にオリジナルの『フリクリ』が出たときに、僕はアニメーションとかにとても疎くて、「エヴァンゲリオン」とかガイナックスとか鶴巻(和哉)さんとかも一切わからないで関わったので、ちょっと反響がデカすぎてビックリしたんですよね。

いまのピロウズファンっていうのは、『フリクリ』をきっかけに知ってそこから18年間ずっと聴いてますよって人もたくさんいるので、ピロウズというバンドのミュージックライフにはとっても大きいターニングポイントだったんです。当時すごい人気も出ましたし、人生で経験したことのない印税が振り込まれて「ワオ!」みたいな経験もしたので、そりゃもう当時は「(続編を)作ろうよ~」と思ってましたよずっと(笑)。

――なるほど(笑)。そうして発表された今回の続編には、「オルタナ」と「プログレ」という非常に音楽に関わりのあるフレーズが付いていて。

山中 そうなんですよ! これがややこしいんですよ! 「『フリクリ』っていうものはアニメーション界のオルタナなんだ」って言おうと思ったら、「オルタナ」って付いてるから、「あ、自分で言うんだ!」って(笑)。「今回の『プログレ』は『オルタナ』なんだ」みたいな……こんがらがるじゃないですか。「俺の説明がうまくいかない! 別の言葉を使わないと!」って(笑)。

――当時も今回も、アニメの制作サイドとは顔を突き合わせて打ち合わせたりはされていないんですか。

山中 なかったですね。鶴巻さんとは当時、終わってだいぶ経ってから対談企画があって、初めて一回だけお会いしましたけど。

――鶴巻さんの当時のインタビューで「ベスパ(作中に出てくるスクーターバイク)にしろ何にしろ、自分のかっこいいと思うものを揃えた」みたいな話があって、ピロウズももちろんそのひとつだと答えられていました。他業種のクリエイターがピロウズの音楽を「いい」と言ってきてくれたことに対して、当時どんな印象を持たれましたか?

山中 僕、全然鶴巻さんが大御所って知らなくて、後からだんだん知っていったって順番だったので、最初はそれがどういったことなのか全然わかってなくて。ただ僕らは漫画家とかアニメーションの人とか、そういう人に好かれることがめちゃめちゃ多いんですよ。普通に漫画を読んでたら急にピロウズの歌詞が出てきて「おおっ!」とかいうのが結構あって。それが一番早い、そして一番大物だったのが鶴巻さんだったって感じですね。

――そういった漫画家さんやアニメーション監督さんにピロウズが好かれる理由って、ご自身ではなぜだと思いますか?

山中 そうですね……僕の作る曲の主人公の「僕と君」の物語は、この主人公は、すごい内向的というか、アウトドアかインドアかって言ったら絶対インドアだと思うんですよね。クラスに友達がひとりいるかどうかみたいな。自分にもそういう面はあったし。そういう人間が作ってる世界観だから、同じような人に伝わるのかなとは思います。……ただここでややこしいのは、実際の80年代の高校生の僕は普通にヤンキーだったということで(笑)。要するに、外では友達とヤンキーごっこみたいなことやってたけど、家に帰ったら一生懸命ロックを聴いて、一生懸命ギターを練習したり、女の子との口の利き方とかもわかんなかったし……そういうモジモジしたところはありながらのヤンキーだったので。

――もしかしたら根っこの部分で(そういった漫画やアニメの主人公と)似ている部分があったのかもしれないと。

山中 そうですね。

――音楽ジャンルとしてのオルタナティブロックにもそういう鬱屈というか、外部とのコミュニケーションの上手く取れなさみたいなのをディストーションサウンドに込める、という面があると思うんです。山中さんは以前インタビューで、音楽としての「オルタナ」をけっこう計算してやっている、という話をされていましたよね。

山中 そうですね。僕が音楽を作るときの天然というか、一番ナチュラルな自分っていうのはおそらくフォークだと思うんです。小学校のときにサイモン&ガーファンクルを好きになったり、日本のフォークも同じ部屋にいた兄が好きだったから聴いていて。でも中学校になって不良の仲間入りみたいなのをしたときに「ロックのほうがかっこいい!」ってなって、(忌野)清志郎さんのRCサクセションとか、日本のロックも知ったりして、段々ロックンロールにどっぷりになっていって。

たぶん僕は脳みその種類っていうのが、天然でポーン! ってやるっていうのよりは、ちゃんと考えてやりたいほうなのかなとは思ってて。もしオルタナじゃなくジャズをやろうと思ってたとしても、すごくちゃんと勉強をしてやると思うんですね。天然のオルタナの人がオルタナをやるときっていうのは、「オルタナ」なんて意識してないですよ。音楽ジャンルなんて知らない、ただかっこいいことをやろう、人がやってないことをやろう、いい曲を作ろうって思ったのが、周りがオルタナって騒いでるだけで。

僕はたとえばベックの新譜がかっこいいと思ったら、これ真似してみたいな、どういう風にこの音楽は作られてるんだろう、オーディオ的にはどうやってるんだろう……って、感動した理由を知りたくなるんです。なので天然の人に対する憧れがすごいっていうか。

――そういったお話を聞いて思い出されるのは、今回『フリクリ プログレ』の主題歌として書き下ろされた「Spiky Seeds」の歌詞にある「僕ら原点回帰の真っ最中」というフレーズです。資料の中にあったコメントでは「この話がなければ、僕らの中からは絶対に生まれることのなかった曲なんですよ。特に歌詞とかは」ということをおっしゃっていて。「原点回帰」というキーワードもやはり、『フリクリ』の続編が出るっていうお話がなければまったく考えることがなかったんでしょうか。

山中 そうだと思いますね。「Spiky Seeds」は、デタラメに、意味というよりはメロディーとリズムに合う気持ちいい言葉を探して、いっぱいパターンを作ってその中から自分の作詞オーディションの中でパズル的に選んでいく、という作り方をしていて。といっても本当にデタラメに作るんじゃまずい、一本筋を通さなきゃってときに、『フリクリ』といえば結局(オリジナルと今回の続編2つ合わせて)3作品あるけど、絶対的に「ハルハラ・ハル子」がいるということで、この不可思議な、時空を超える謎のキャラクターをイメージしようと思って作ったんですね。

だけどいま現在の僕の感情っていうのはどうしても入るんですよ。だから実はこのインタビューを受けるまであまり意識してなかったんだけど、そこはハル子っていうより、いまの僕の気持ちなんだろうなって。「僕ら原点回帰の真っ最中」って、大きい声で歌いたかったんだろうなって……いま言われて「なるほど!」って気づいた感じでした。なのでこの後のインタビューでは最初からそう言います(笑)。

――承知しました(笑)。今回のアルバムには新曲2曲の他に、リレコーディングされている曲もたくさん入っていて。『フリクリ』を通してピロウズを知った人間からすると、ある種ベスト的な選曲になっていると思うんですけど、リレコーディングされたものと、頭と最後に入っている新曲がまったく違和感なく聴こえるというか、ひとつの非常にタイムレスな作品になっていると感じたんです。

山中 まあ、同じスタジオで同じタイミングで録っていったんでね。やっぱりこのキャリアでこれだけレコーディングしてるので、音楽を始めるぞってなったらやることは一緒なんですよ。自分が一番好きなやり方はこうっていうのが出来上がってるので、過去の曲だろうと、新曲だろうとやっぱりレコーディングをするスイッチが入ったら「バチン!」と同じようにやっていったので、そこに甘さは生まれなかったのかなと。

――幅広いピロウズのキャリアの中から、オリジナル版の『フリクリ』のときには使われていなかった曲もこの中に入っています。

山中 そうなんですよ。よくこんな曲見つけたなっていう……「天使みたいにキミは立ってた」とか、うちのドラムの(佐藤)シンイチロウとかたぶん忘れてるんじゃないかってくらい(笑)、当時のツアーで一回しかやってないくらいの曲も拾ってくれたので。本当に全部、端から端まで聴いて、この場面に合うっていうのを、当たり前なんでしょうけど真剣に考えてくださったんだろうなと。

――じゃあ選曲はすべてアニメーションの制作側で。

山中 そうですそうです。何せストーリーを教えていただいてないんで、どんな曲が合うのかもわからない(笑)。

――場面がわからない状態で、どういう風に気持ちを込めてレコーディングをしていったのでしょうか。

山中 僕らのレコーディングはそんなに感情的ではないんですよね、本当にオーディオ的なことばっかりで。どういうマイクで録って、どういうアンプで録って、どういうミックスをするかっていう。(レコーディングの方法の)ブームがだいたい2年に1回くらいちょっとずつマイナーチェンジしていくんだけど、最近はこういうのがいいよねっていう、世の中とは違う自分らのブームがあって、それで録るっていうことなので、全然冷静です。酒は飲みながらやってますが(笑)。

――オリジナル版の『フリクリ』では、すでにリリースされている音源を鶴巻さんたちの側で拾っていって作られていたわけじゃないですか。

山中 ですね。なので僕はもう出来たものを見せてもらったという感じで。

――つまり、それこそレコーディングの2年周期のブームっていうのはばらばらだったりしたわけですよね。一方、今回は続編のお話があった上でリレコーディングされているわけですから、音の質感というのは統一されている。いち視聴者としては、音の感触としてはばらばらだけれども、「この曲を使いたいから使うんだ!」という監督の気持ちみたいなものが伝わってくるところに、『フリクリ』の魅力を感じたりもしたわけですが……

山中 でも僕は、やはり過去の自分が未熟なときに作ったやつって、嫌なんですよね。ばらばらとか揃ってるってことよりは、「あれは今ならこうするのにな」とか、反省点がありながら聴いちゃうのが本人としてはつらいんです。やはり長いキャリアの中で頭に浮かんだものがちゃんと具体的に音になるっていうことができるようになったので、今回録り直せるってことはすごくうれしかった。

――ベスト盤『Rock stock & too smoking the pillows』のときもそうでしたが、ピロウズはリレコーディングに積極的な印象を受けます。

Rock stock & too smoking the pillows/the pillows
『Rock stock & too smoking the pillows』
(2009年)

山中 いやー、ほとんど(リレコーディング)したいですよ、ほんとに。「いまならもっとこうだよ!」っていう感じがすごいあります。やっぱり作り手は端から端まで気になるんですよ。今回のだとたとえば「Thank you, my twilight」って曲なんかはもう17年くらい前の曲ですけど、当時のリスナーもひさびさに聴き比べたら、「あ、あれ(当時の音源)ダメだな」って絶対感じると思うんですよ。

――録音作品という話だと、オリジナル版『フリクリ』が出る少し前……90年代後半くらいって、パッケージとしての音楽(CD)がすごく売れている時代だったわけですよね。当時といまの音楽の環境の変化って、山中さんの中ではどのように感じられていますか。

山中 これはね……おじさんになってしまったのか、何がなんだかわかってないというのがあるし、そもそも何がなんだかわかってなくても活動ができちゃってて。ようやく最近覚えた言葉が「スポティファイ」っていう(笑)。それもちゃんと説明はできないんですけど。

ただなんかね、青春時代、中学生になって「ロックを聴くぞー」みたいな若い人が最初からスマホを持っていて、インターネットが存在していて、YouTubeでタダで音楽が見れてっていう環境になってて。そういう人には罪がないしそれはしょうがないんだけど……けっこうみんな音楽はタダだと思ってる。僕ら(ミュージシャン)が音楽をやっていると言ったら、みんなが思い浮かべるのってステージに立ってる華やかな人たちのイメージだと思うんだけど、その後ろに、ツアーを回るときの運転手がいて、楽器を作る人がいて、マネージメントがいて、事務所がいて、レコード会社もあって……そういう仕組みがあってようやくクオリティを保ってたものが、お金を払わなくなると当然どうなるかっていうと、ある面においてはクオリティが下がってくんですよね。ってことはカルチャーを一個潰していってるなというか、憧れの職業にミュージシャンはもうならないだろと。競技人口が減ると全体としての実力も下がるっていうのと一緒で、音楽がタダだと思ってる人たちはどこかで自分の首を絞めてるんだよなとは思うし。

ピロウズは来年30周年の50代のバンドで、若いファンもいてくれるけど当然40代(のファン)もいる。なのでCDもやっぱり売れるんですよ、いままで買った人はコンプリートしたいから。自分には音楽をタダと思ってないファンがついてるというのは、幸せなことだなと思います。

――パッケージとしての音楽は売れなくなった一方で、ライブやフェスの動員は増えているということがよく言われます。そこで音楽自体もみんなで拳を突き上げて踊ることに特化していったりとか……若いバンドと交流されることも多いかと思いますが、そういうモードの変化を感じることはありますか。

山中 感じる感じる。でもなんか無関係な感じはするかな。たぶん35・36歳くらいまではもうちょっと音楽シーンを意識したりってあったけど、ほんとにわかんなくなってきて、なんかどこかでわかるのをやめて……しかも僕の好きなオルタナティブロックっていうのは一度も売れたことがないから、逆に古くならないんですよ。ニルヴァーナとかレディオヘッドとか、大ヒットしたものっていうのは古くなっていくんですけど、僕の好きな狭いオルタナティブロックって、一周するも二周するも、まだ回り始めてもないという感じだから、ずっと楽しめるんですよね。

――海外だと「オルタナティブロックに影響を受けた」と公言する若いラッパーが出てきたりという現象もあります。

山中 僕らの世代って、ロックをやる人間ってのは真面目か不良かって言ったら絶対不良で、街の嫌われ者みたいな感じだったの。でもいまは割と高学歴のちゃんとした大学を出た、演奏も最初から上手いまともな人たち……音楽じゃない道も選べるくらい才能ある人がロックをやってるっていうのが多くて。街の嫌われ者がみんなヒップホップに行ってるから、そういう現象につながるのかもしれない。

――毒気のあるバンドって確かにいま少ないですよね。

山中 だって俺普通にいまの後輩好きだもん(笑)。喧嘩にもならないし、優しいし。昔はライブハウスってやっぱりもっと怖いところだったし、もっとアホが集まるところで。ステージ一個で6000人くらい集まる、これがでっかいフェスって言われてたのに、いまはフェスと言ったらもう何万人呼ぶって感じだから。やっぱりなんか違うんだよね。

――そういった音楽シーンの変化というのもある中で、今回『フリクリ』の続編が公開されるわけで。いまってアニメーション映画に若いお客さんがすごく来るんですよね。そういう世代に向けて、ピロウズの音楽を聴いて、何か感じてほしいことなどありますか。

山中 うーん……そういうことは願ってない、考えてないってのが正直なところだけど、もしかしたら親子で来てるのかな? 中学生とか高校生、大学生もたまに(ライブの観客に)いるわけですよ。そういうのは普通に「おっ、センスいいね」と思うよ。

この前のツアーの初日、新潟に知り合いの息子が来て、すげえツルツルで若いから「いくつ?」って聞いたら「高2です!」って。「へぇ、高2でピロウズ聴いてるの?」って聞いたら、「はい! 誰も聴いてません!」ってまっすぐな目で(笑)。

(一同笑)

山中 そんなこと言うなよ! って思いつつも、っていうことは「君、センスいいね」って。別にクラスの友達と話が合うわけでもなく、流行ってるわけでもなく、昨日ピロウズのライブに行ったってことが自慢になるわけでもない……ピロウズを聴いて、ホントに「いい」と思って来たってことでしょ。ちょっと友達がいるかどうか不安になったけど(笑)、俺と同じ道を歩むのかなあ、でもそういうのもいいんじゃない? って思ったよ。

実際、ほっといても(観客に)本当におじさんおばさんしかいないよねって時代が一回もない。いつも若い人も混じって、広い世代がいて。おじさんに向けて音楽をやろうとか、若い人に向けて音楽をやろうとかってことは考えてなくて。ロックンロールはもっとバリアフリーなものだと思ってるので。

――「来たい奴は来いよ!」と。

山中 そりゃそうですよ。気がついたら年取っちゃっただけで、年取りたくて取ったわけではないからね。やってることは一緒なんですよ。ロックが好きなままで、楽しく新曲作って、楽しくレコーディングしてツアーをやるっていうのが、まだ飽きてない。そういう感じです。

 

the pillows プロフィール

山中さわお(Vo, G) 真鍋吉明(G) 佐藤シンイチロウ(Dr) 

1989年9月結成。1991年シングル『雨にうたえば』(ポニーキャニオン)でデビュー。2004年には結成15周年を記念してMr. Children・BUMP OF CHICKENらが参加したトリビュートアルバム『シンクロナイズド・ロッカーズ』を発表。2005年には海外での活動を本格的に始動させ、現在までに6度のUS TOURを行い、ヘッドライナーを務めたツアーでは全箇所ソールドアウト公演となるなど、海外での人気も高い。2009年・結成20周年記念日となる9月16日には、初の武道館ライブを大成功に収めた。2014年に、結成25周年を記念してUNISON SQUARE GARDEN・a flood of circleらが参加した自身2枚目となるトリビュートアルバム『ROCK AND SYMPATHY』を発表。結成30周年イヤーに突入する今年9月19日には、オリジナルアルバムとしては22枚目となるニューアルバム『REBROADCAST』をリリースする。

 

『フリクリ オルタナ/プログレ』主題歌収録アルバム・サウンドトラック配信中!

 

  • the pillows
    『FooL on CooL generation』

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  • 1. Spiky Seeds
    (『フリクリ プログレ』主題歌)

    2. I think I can
    3. サード アイ
    4. MY FOOT
    5. 天使みたいにキミは立ってた
    6. 白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター
    7. Freebee Honey
    8. ノンフィクション(Instrumental)
    9. Fool on the planet
    10. LAST DINOSAUR
    11. 昇らない太陽
    12. LITTLE BUSTERS
    13. Thank you, my twilight
    14. Star overhead
    (『フリクリ オルタナ』主題歌)

劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」 Original Soundtrack

劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」 Original Soundtrack/R・O・N

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