【TRUEインタビュー】素朴で、純粋で、前向きな歌『WILL』(『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌)
石立監督がずっと聴いていた曲、『未来のひとへ』
――『未来のひとへ』のオーケストラバージョンも収録されますね。
TRUE:実は、いろいろなことがあった中で、石立監督は劇場版を作っている間にずっと……何百回何千回と『未来のひとへ』を聴いてくださっていたそうなんです。そんな風に私の楽曲を想ってもらえるなんて、すごく嬉しいことですよね。
――元々はボーカルアルバムに収録されていた楽曲でした。
TRUE:テレビシリーズが始まった頃にイメージソング集を作りましょうっていう話があって。このアルバムではいろいろなアーティストさんがヴァイオレットをイメージして曲を作っているのですが、私は主題歌も作ったり、あとはイルマ役(※Extra話に登場)を通じても歌詞を書いたりしたので、ヴァイオレットとはまた別の視点で書こうかなと思って。そのなかで、第10話のアンの物語がどうしても忘れられなかったんです。
――確かに『未来のひとへ』では「愛してる」も漢字表記ですし、『WILL』や『Sincerely』とは別の視点なのかなと感じていました。
TRUE:ヴァイオレットの時代からすると、今私たちが生きている時代は果てしない未来ですけど、アンのお母さんが未来へ手紙を届けたみたいに、未来の人に向けての曲を作りたいなと思って。
――「人はなぜいつも生きる強さを涙の数ではかるのか」など、今の私たちも通じる言葉が入っていますね。
TRUE:例え時代が変わっても、変わらないものはあって。誰かに想いを受け渡す言葉を大事にしたい、という気持ちで書きました。
――前回のアレンジとは歌い方が異なっているように思います。
TRUE:自然に、感じるがままに歌いましたね。聴いた人の明日とか未来とかが、ちょっと優しくて、ちょっと豊かになればいいなって、そんな気持ちで歌わせてもらいました。
「しゃべる」ように「歌う」
――本作には『WILL』の英語版も収録されています。Lynne Hobdayさんによる、決して直訳ではない言葉選びが、どこかTRUEさんの歌詞の持つ雰囲気を残しているように思います。
TRUE:Hobdayさん、劇場版も見たうえで訳してくださったそうなんです。
――翻訳について、TRUEさんから「こうしてほしい」のような要望もお伝えしたりしたのでしょうか?
TRUE:具体的な指示のようなものは出していませんが、ディスカッションを重ねて、レコーディングにも来ていただきました。Hobdayさんは日本語と英語の両方の感性を持っていらっしゃる方で、しかも演出家や脚本家としても活動されているからかすごく歌心もお持ちで。本当にセンスがいいですよね。
――英語版の歌い方は、日本語版と比べるとロマンチックと言いますか……「愛」ではなく「love」を感じます。
TRUE:英語で歌ったことで、自然と歌い方も合わさっていったように思います。海外の方々にも変なとっかかりなく、すっと受け止めてもらえるように、すごく細かいところまで発音を指導していただきました。でもすごく歌いやすかったんですよ。日本語の方と比べると、英語は流れるように歌えるので。
――発声といえば、TRUEさんはボーカルレッスンも受けていらっしゃるそうですね。
TRUE:10代の頃にもトレーニングは受けていて。アニソンシンガーとして仕事するようになってからもずっと続けています。作品によっていろいろな歌い方を……それこそ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ではオーケストラ・コンサートもありましたし、ポップス以外の発声も勉強するようになりました。
――以前の歌と聴き比べると、もちろんどれも素晴らしい歌声でありながら、感情の込め方が変わったように思います。
TRUE:まさにです!最近はしゃべるように歌おうと心掛けています。特に日本語版の『WILL』については意識していて、もしかするとレコーディングしたときと今とでまた歌い方が違うかもしれません(笑)。
――確かにアニサマナイトで『WILL』を聴かせていただいたとき、例えば「同じ空に指切りしよう」など、音源を聴いた際とはまた別の言葉が胸に響いたように思います。
TRUE:歌における呼吸ってすごく大事だなと思い始めて。例えば、
♪花はやがて(息を吸う)土に還り
って歌うと、息を吸った後に無駄なエネルギーを使うんですよ。でも普段しゃべるときって、そんなところで息を吸わないじゃないですか。「私ね、これであれ食べたの!」って一息で言うじゃないですか。そういう風におしゃべりするみたいに歌を歌うと、すごく楽で、楽しくて、表現力も豊かになるなって気づいたんです。これまで学んできたことが今活きているなって感じています。これまで何年もずっと続けてきたことがやっと今実を結んだなって。純粋に今楽しいですね。