【TRUEインタビュー】素朴で、純粋で、前向きな歌『WILL』(『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌)

京都アニメーションの新作映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が、2020年9月18日(金)に公開となります。
主題歌を担当するのは、テレビアニメでもOP主題歌を担当したTRUEさん。劇場版の主題歌『WILL』を中心に、TRUEさんの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に対する想いを伺ってきました。

「たぶん皆さん、ヴァイオレットに対してそれぞれ大きな愛情を感じていらっしゃると思うんです。だからこそ本作を通じて、改めて前向きで優しい気持ちになっていただきたくて。」 と話すTRUEさん。
ヴァイオレットに憧れも抱くという彼女の、「言葉」の秘密を紐解きます。

 

素朴で、純粋で、前向きな歌『WILL』

――『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が遂に公開となります。主題歌『WILL』の制作にあたって、心掛けたことなどはありますか?

TRUEさん(以下、TRUE):作品の世界観に寄り添うような曲にしたくて、この作品に携わるスタッフのみなさんとも相談をして、劇伴も担当されている作家のEvan Callさんに作曲いただきました。ポップスとして作っていた『Sincerely』と比べると壮大な曲調ですけど、歌詞は素朴で純粋なものにしたくて。例えば花が咲いて、枯れて、土に還って、それがまた新しい芽になってという、子供の頃から直感で知っているようなものを楽曲に組み込めたら、今私たちが感じている意志が次の世代にも、もっともっと先の世代にも伝わっていくんじゃないかと思ったんです。

 

――楽曲はいつぐらいから制作されていたのでしょうか?

TRUE:実はだいぶ前から、劇場版の主題歌をお願いしたいというお話はいただいていました。石立監督とお会いしたり、シナリオを拝見したり、楽曲の打ち合わせを何回か繰り返して、少しずつ形になっていきました。ファンの方々と寄り添ってきた時間の集大成として、今の私が、今伝えたい想いを込めて作った1曲です。

 

――個人的に一番気になっているのは、タイトルの『WILL』です。様々な意味合いを持つ言葉ですよね。アニサマナイト(※)のMCでは、「意志」という意味を強調されていました。

TRUE:ヴァイオレットの意志、私自身の意志、制作サイドの意志、それに応援してくださっているお客さんの意志……。今回の劇場版には、たくさんの方の想いと意志が組み込まれているので、曲にも反映させたいと思ってこのタイトルになりました。

※アニサマナイト(Animelo Summer Night in Billboard Live):2020/8/30(日)19:00よりニコニコ生放送およびLINE LIVE-VIEWING にて配信。トリとして出演したTRUEさんは、自身の1曲目に『WILL』を歌唱しました。

 

――さらに「will」という言葉には、未来を表す意味合いもあります。最後のサビで登場する「未来」という言葉にも繋がっているのでしょうか?

TRUE:そうですね。未来という意味合いでは、英語版の『WILL』ではさらに効果的に使われていると思います。ちなみに「遺書」っていう意味合いもあるそうですが、それはあまり考えていません。あくまで「意志」や「未来」を表す、前向きな言葉として使っています。

 

――『WILL』の歌詞ですごいなと思ったのが、全体の構成です。1番のみを聴くと「帰ろうか 帰ろうよ」の帰り先がまだ分からないのですが、最後のサビで「未来へ」という言葉が加わることで急に詞の持つ意味合いが深まって。鳥肌が立ちます。

TRUE:たぶん皆さん、ヴァイオレットに対してそれぞれ大きな愛情を感じていらっしゃると思うんです。だからこそ本作を通じて、改めて前向きで優しい気持ちになっていただきたくて。 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は人の生死を扱う作品ですが、一方でヴァイオレットという1人の女の子が愛することの意味を探し求め、未来に向かって歩いていくという……とても優しく前向きなお話ですから。そういう想いをサビに込めています。

 

――今「前向き」という言葉が出ましたが、『Sincerely』と比べると歌い方もガラッと変えていますよね。どこかに「迷い」が感じられた『Sincerely』とは違って、『WILL』の歌い方にはポジティブな雰囲気を感じます。

TRUE:そこは収録のときにもすごく意識しましたね。優しさや温かさを感じていただきたかったので。

 

ヴァイオレットへの憧れ

――『Sincerely』も作品と寄り添っている歌詞でした。アニメのストーリーが進むごとに歌詞の意味が深まるような……少しずつ歌詞の意味が分かっていくことで、まるでヴァイオレットと一緒に成長をしているような気持ちになりました。

TRUE:回を重ねることにより曲の理解度も増して、作品に寄り添えるようになっていったらいいなと思っていたんですけど、まさかここまでたくさんの方に寄り添える曲に成長するとは私自身も制作当時は思っていなくって。本当に想像してた以上の人の元に届けられたなと思っています。

『Sincerely』
TRUE

Sincerely/TRUE

通常 ハイレゾ

――ヴァイオレットの気持ちを込めながらも、どこかで自分自身の姿も重ね合わせながら作詞をされているのかなと妄想しているのですが、作詞の過程で気づいたご自身とヴァイオレットの似ている点などはありますか?

TRUE:そうですね……似ている、というよりも憧れますね。こんな人になりたいなと。あんな風にまっすぐ痛みを抱えながら生きていく生き方は、私にはできないので。私たちには時の流れとともに忘れてしまいたいこともたくさんあるし、実際にそのときに感じた痛みだったり、嫌な想いって忘れてしまうと思うんですよ。もちろん場合によっては、忘れることが正解だったりもする訳ですけど。でも彼女は自分の犯した過去の過ちに何度傷つけられても、、全部抱えながら歩いていこうとするんです。最初は放っておけない、危うい女の子の側面も持っていましたが、今となっては誰よりも強い女の子に育ったんじゃないかなって思っています。

 

――『Sincerely』では「アイシテル」が片仮名で、『WILL』では「あいしてる」が平仮名で表記されていますが、書き分けたのでしょうか?

TRUE:正直あまり意識はしていなくて……もしかすると作品の影響かもしれないですね。でも他にも、表記には常に気を遣っています。例えば、なるべく歌詞の中では英語を使わないようにしていて。皆さんが聴いた瞬間にすっと意味が理解できるものにしたいんです。一方でタイトルには、どの国の方でもピンとくるような短い英語のセンテンスやワードを使うようにいます。これまでいろいろな国で歌わせていただいてきた中で、英語のタイトルさえあったら、例え歌詞の意味がわからなくても私の歌声に乗せている想いは伝わるんじゃないかなと気づいて。日本語の美しさ……みたいなものが伝わったらいいなと思っています。

 

――日本語の美しさ?

TRUE:日本語って水彩画みたいだなと思っていて。様々な色が水に溶けて行くみたいに、見え方とか受け取り方が異なってくるじゃないですか。日本語を通して、奥ゆかしさみたいな日本人の心も伝わればいいなと思っています

 

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