映画『WE ARE X』公開記念! 津田直士氏インタビュー

本日(2017年3月3日)公開となったX JAPANのドキュメンタリー映画、『WE ARE X』。国際的な映画祭でも高い評価を受けているこの作品に動画出演もされているのが、X JAPANの元プロデューサー・津田直士さんです。moraでは映画の公開およびサウンドトラックの配信開始に合わせ、津田さんにインタビューを実施。映画『WE ARE X』について、そして改めてX JAPANについて、熱く語っていただきました。

※映画の構成上のポイントに触れている箇所がございますので、ご注意ください。

 


 

――とうとう、日本でもドキュメンタリー映画『WE ARE X』が上映スタート、そしてそのサントラも発売されました。今、日本中のファンがそれぞれの想いと共に、映画やサントラに胸を熱くしていることと思います。
津田さんは、『WE ARE X』、ご覧になりましたか?

津田 はい、プレミアム試写会に招かれて鑑賞しました。

――いかがでしたか?

津田 やはり衝撃でした。 なんか映画が「生きている」っていう感じで……。淡々とした、嘘の全くない事実の積み重ねが、胸に迫ってくるんですよね。映像も圧倒的に美しくて、そのクオリティーと音楽にも、心を強く動かされるんです。

――ローリング・ストーンズのドキュメンタリー映画『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」』を手掛けたスティーヴン・キジャック監督と、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『シュガーマン 奇跡に愛された男』の製作陣、まさにハリウッドクオリティーということですね。

津田 そこはね、僕も凄く感じました。特にYOSHIKIやTOSHIの心の内面が表れる場面などでは、圧倒的な映像の美しさが、真実をちゃんと引き出している感じがしました。あと、マディソン・スクエア・ガーデン公演の映像も、美しくて心が震えましたね。

――この映画は、X JAPANが2014年のマディソン・スクエア・ガーデン公演を成功させるまでのドキュメンタリー、ということで、ライブの映像などもたくさん出てきますね。

津田 そうですね、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン公演を成功させる、って、物凄いことです。世界中のロックミュージシャンの憧れですから。
YOSHIKIが最近、亡くなったHIDEやTAIJIが世界進出を夢見ていた、という発言を折にふれてするんですが、僕がプロデュースを手がけていた頃も、メンバーはその夢を本当に熱く、真剣に語っていましたからね。マディソン・スクエア・ガーデン公演は、本当に感無量でした。

――そして今回は、ロンドンのウェンブリー・スタジアム公演ですよね。

津田 はい。世界進出という夢を本当に遂げ、さらなる高みを目指して活動しているX JAPANという日本人のバンドを、ありのままキジャック監督が見つめているのが、今回の『WE ARE X』だと思うんです。

 

 

――そういえば、最近のインタビュー記事や舞台挨拶などで、YOSHIKIさんがご自分のことを、題材に徹していて、制作には口を出さなかった、とおっしゃってますね。

津田 そこは僕も、自分のインタビュー撮影でこの映画に少し接してから、どちらなのかずっと興味があったんです。ちょっと話してもいいですか?

――はい、ぜひお願いします。

津田 まず映画を観て、監督のキジャックが求めるものが<嘘のない真実の姿>なんだ、って思ったんです。それは、X JAPANの歴史と魅力そのものが究極の<嘘のない真実の姿>だからなんだと思うんですね。で、それを作品にするために、YOSHIKIが選択した判断は正しかったと思うんです。
ただ、僕はとても驚きました。そのYOSHIKIの判断に。僕は『BLUE BLOOD』、『Jealousy』、『ART OF LIFE』の3作品でCo Producerを務め、さらに天皇陛下御即位10年奉祝曲「Anniversary」の演奏や「YOSHIKIシンフォニックコンサート2002」のプロデュースに関わったんですが、その経験から、YOSHIKIが、自分たちに関わることについては必ずプロデューサーという立場を徹底する人間だと知っているんです。だからX JAPANの歴史、というとてつもない作品において、彼が題材というか素材というか、に徹して、制作に一切口を出さない、という姿勢は過去のYOSHIKIにはない、相当勇気のいる判断だったと思うんです。もちろん、映像の素材を観るだけで涙が止まらない、というYOSHIKIの心情も大きく作用しているのかも知れないけれど。
でも、制作をキジャックに一任して、キジャックの目線ですべてを切り取ったからこそ、『嘘のない真実の姿』が観る人に強い感動とエネルギーを与える、素晴らしい作品になったと思うんです。

――なるほど。雑誌のインタビューでも、“そういう自分が題材に徹することができた”というのは、それはそれで自分を褒め称えてあげたい、とYOSHIKIさん自身もおっしゃってますね。あと、X JAPANを知らない人に撮ってもらうのを条件として監督とプロデューサーを選択された、と……。

津田 ああ……僕は、YOSHIKIの生み出す音楽が、世界に通用するし100年以上残るものなんだと、YOSHIKIと出会った頃からずっと確信していて、プロデューサー時代もその情熱で頑張れたんですが、最近のYOSHIKIを見ていて、そんな自分の音楽への自信とか、音楽だけは未来を切り開いてくれる、と思っているような感じを凄く感じるんです。そういう、自分が生み出す音楽への強い想いがあったからこそできた決断なのかな、と思います。X JAPANを知らない人に撮ってもらう、というのも、自分がプロデュースに関わらない、という強い意志の結果でしょうね。

――音楽といえば、サントラもリリースされました。待望の新曲「La Venus」がアコースティックバージョンで入っていたり、「Without You」のアンプラグドも入っていて、ファンにとってはとても嬉しい作品だと思います。

 

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『We Are X Soundtrack』

 ハイレゾ / 通常

 

津田 音源を聴かせていただきましたが、「La Venus」はやっぱり素晴らしいですね。僕の感想というか解釈なんですが、この作品に今のYOSHIKIがそのまま表れている気がしました。まるで映画『WE ARE X』の答えのような歌詞と、究極に研ぎすまされた美しさと自然体のメロディー。
それと、この作品、僕はTOSHIのボーカルが素晴らしいと思うんです。映画でね、X JAPANの歴史が、TOSHIの洗脳、解散、HIDEの死、TAIJIの死、と描かれていていますよね。でもTOSHIが洗脳から解けて帰ってくる……そのことが今のYOSHIKIに与える大きな意味と、その2人のショットがとても心に残りますよね。だから映画を観た後だとね、「La Venus」のTOSHIのボーカルの素晴らしさが、そのまま今のX JAPANを表していて、深く感動するんです。「Without You」もやはりそうですね。聴いていると、2人が大切な日のことを回想して話した後、おもむろに仲良くピアノと歌で演奏する姿が思い出されて……。

――私も聴かせていただきましたが、たしかに素晴らしい曲でした。ちゃんとサントラに2曲が含まれている意味があるんですね。そういえば、「Piano String in Es Dur」は津田さんがプロデュースを手がけていらっしゃったころの音源ですね。

津田 はい。アルバム『Jealousy』の1曲なんですが、これまではある意味、続く「Silent Jealousy」のイントロダクションとして聴いていたんですね。それと、この曲を聴くとレコーディングの想い出が蘇っていたんです。あるエピソードがあって……でも、映画だと全く別の曲に聴こえるんですよね。そこが映画の凄いところで。
別の言い方をすると、「Piano String in Es Dur」に込められた、当時のYOSHIKIの想いが、映画になって、より正しく伝わってくるような気がするんです。だから、僕『WE ARE X』を観た夜、感動でなかなか眠れなくて、映画の世界を再現したくてね、この曲をループで流していました(笑)

――なるほど、サントラには映画を観た後で聴く、という楽しみがありますよね。ところで、この映画には津田さんも出演されている、ということですが、やはりソニーミュージックのプロデューサーをされていたころの話をされているのですか?

津田 はい。まあ出演というか、インタビューに答える形なんですが。この映画の監督であるスティーブン・キジャックによるインタビューの収録が1年半ほど前にありまして、3時間半、語り尽くしたんですね。その中から、5つのエピソードが映画の内容に沿って使われていました。

――津田さんが一番最初にX JAPANと出会われたのは、1987年秋とのことですが……

津田 はい。新人発掘担当をしていて――当時はXですね――のメンバーと出会い、底知れない可能性を感じて自分でプロデュースを手がけたい、と思うようになって……たまたま新しくできたセクションへの異動もあったので、Xをトータルでプロデュースする組織を用意することができて契約に至り、あとはひたすらライブとレコーディングに明け暮れまして、当初の目標だった100万枚セールスと東京ドーム公演までを、メンバーと共に駆け抜けた、という感じです……よく訊かれるので、すらすらしゃべれるんです(笑)

 

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インタビューに応じる津田さん。

 

――なるほど(笑) ところで、そういったメンバーの方々との記憶があって、おそらくその記憶も映画の重要な要素のひとつで、さらにご自身が出演もされる。そのあたりは、映画をご覧になっていてどんなお気持ちなんでしょうか?

津田 いや、もうキジャックのインタビューで語り尽くした時点で、これが少しでも大切なX JAPANのドキュメンタリー映画の力になれるのなら、こんなに嬉しいことはない、と思っていましたから。観ている時は、自分にまつわる部分に関心は全くありませんでした。ひたすら映画の凄さを浴びるだけで……ただ、映画のテーマと重なる自分の記憶については、観ながら深く考えさせられましたね。
例えば僕の発言、「ステージで倒れたりするのがショーのように見えるけれど、実際は生命の危機だったりする事はよくある」というところから、YOSHIKIのお母さんの、「この子は大人になれないかも……」という告白に繋がり、続いてYOSHIKIが自身が死について調べた事を話す……というところなどは、YOSHIKIという人間の事を考える上で、とても重要ですよね。それと、初めてYOSHIKIと2人で会った時の、尋常ではない殺気のエピソードについても、改めて考えると、どこか「死」と繋がっている気がします。
また、TAIJIがバンドで果たしていた役割。あのころの5人がそれぞれの役割で輝いていたからこそ、インディーズバンドから東京ドームまでを数年で駆け抜けることができた、と僕は思っていましたから。
HIDEもね、音楽面やビジュアル面での才能は後年のソロ・アーティストhideとしての活動で明らかなんですが、やはりYOSHIKIのプロデューサー役であったところ、そしてファンを大切にする精神……これらはXというバンドが前進していくための、奇跡の組み合わせのように当時の僕は感じていたんです。

――やはりこうやってお話を伺っていても、胸がドキドキしてきます。X JAPANのお話って、何か強いものが伝わってくるんですよね。

津田 わかります。『WE ARE X』が存在するのも、結局そこが原点だと思います。
それとね、僕、この映画が一番凄いと思うのは、X JAPANというバンド、YOSHIKIという人間、そして作品……これらの今まで謎だった部分に、トータルで答えを見せてくれるんです。

――なかなか難しい、深い話ですね。

津田 そうなんですけど……でも一方で、たとえX JAPANを知らない人でも、この映画を観たら、きっとわかるし、観ていて僕と同じように圧倒されるようなことでもあるんです。
もちろん観る人によって、すべてそれぞれ、違うとは思うんですけど、この映画が見せてくれる答えは、どんな人にも共通している大切なことに向かっているんです。それは、生で始まって死で終わる人生。

――人生ですか……

津田 はい、それぞれの人生、特に生と死ですね。この映画を観ている間は、YOSHIKI本人を始め、YOSHIKIのお父さん、メンバーのHIDE、そしてTAIJIといった、X JAPANというバンドと、YOSHIKIという人間にとっての、生と死が心に迫ってくるんです。でも、それはどこかでやっぱり自分につながっていくわけで……何といっても生と死、ですからね。

――確かに、どんな人にとっても大切なことですね。

津田 ……ですよね。結局、例えばX JAPANがなぜこれほど人の心をつかむのか、そして今、なぜ世界的中にファンが増え続けているのか、といったことの答えにもなっているんだと思います。X JAPANを知らなかったキジャック監督が、X JAPANとYOSHIKIを理解していくうちに<嘘のない真実の姿>を求め、そこにあったのが<生と死>だったんだと。
でもその生と死がね、別にわかりやすい答えが用意されているわけではなくて、ひたすら本当に起きたことが目の前に提示されていくんですけど、気がつくと、そのすべてがYOSHIKIという特別な存在の、今まさに未来へ向かって生きている姿に集約されていくんです。自分の人生、自分にとっての生と死、そしてYOSHIKIという人間のこれまでの人生と、X JAPANというバンド、そしてそのバンドの美しくて激しい、姿と音楽……といったことが、どんどん混ざり合っていくんです。
で、僕の場合ですが、気がつくと、なぜ自分がここまでXというバンドを愛していて、なぜ自分がここまでYOSHIKIという人間を好きなのかが、おぼろげながらわかってくるんです。

――すみません、私、観ますね、映画。

津田 ああ、一人で走り過ぎちゃいましたね。申し訳ない。

――いえいえ、津田さんの熱さと感動は伝わりました。(笑) あと、観たいと思ったのは、その<生と死>というテーマですね。凄く惹かれます。私がさっきドキドキする、と言ったのも、きっとそこなんです。

津田 ああ、なるほど。そうですね、やはり感想だとちょっと抽象的になってしまいますから、是非ご覧になって下さい。
ただ、さっきまで音楽の話をしてましたよね。その、音楽というのが、『WE ARE X』の先にあるものなんだ、ということだけはお伝えしたかったんです。未来を創っていく、音楽……。

――資料で「ハリウッドが制作した、世界が共感する物語」という言葉を見て、素晴らしいな、と思っていました。

津田 はい。きっと、その通りなんだと思います。これはどちらが先なのか、僕にはわからないのですが、『WE ARE X』という映画の完成と、YOSHIKIの進化によってX JAPANがより世界的なバンドとなって、世界中にその音楽を伝えていく、という出来事が、相互作用している気がするんです。どちらかがきっかけとなっているのかな、と……。あるいは偶然、同時だったのかも知れない。だから「世界が共感する物語」の「物語」は、映画『WE ARE X』でもあり、「X JAPANの歴史と活動そのもの」でもあるんですね。

――なるほど。映画を観たあとで、また噛み締めたい言葉の数々でした。今日は大切なお話、どうもありがとうございました。

津田 こちらこそ、ありがとうございました。

 

 

津田直士さんがキジャック監督のインタビューに答えた内容を含め、さらに奥深い数々のエピソードが楽しめる本がこちらです。

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『すべての始まり』津田直士著
特設サイト: https://www.innocenteyes.tokyo/

X JAPANの元プロデューサーが、メンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた当時の様子を克明に描いた、X初期の感動物語。

 

 

津田直士 プロフィール

作曲家/音楽プロデューサー/音楽家
X JAPAN(当時はX)ソニーミュージック在籍時プロデューサー。
『BLUE BLOOD』『Jealousy』『ART OF LIFE』のCo Producer。
これらの作品で楽曲やバンド、メンバーの魅力を綴った、自筆のライナーノーツがファンの間では有名。
音楽家でもある能力を活かしてプロデュースを務めながら、「文章を書かない作家」として「Xの物語」を胸に刻んでいた経験を元に、当時の大切な記憶を綴った『すべての始まり』を2009年に上梓。

小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、
中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解けて突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。
‘03年よりフリーの作曲家/音楽プロデューサーとして活動。
牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU ECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。
本著を始め、moraの音楽記事、ニコニコチャンネルのブロマガなど連載記事の執筆、Sony Musicの音楽講座「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。
2016年に音楽ユニット“TsudaMia”を結成。今春からソニーミュージック所属のアーティストとして本格的な活動を始める。

 

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moraでコラム「名曲の理由」も連載中!

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