作曲家・下村陽子さんに訊く「FINAL FANTASY XV」サウンド制作秘話! ~変わらぬ思いで作り続けてきた~

全世界待望のファイナルファンタジーシリーズナンバリング最新作『FINAL FANTASY XV』の楽曲を収録した「FINAL FANTASY XV オリジナル・サウンドトラック」がmoraにて配信開始。

サントラの配信を記念して、『FINAL FANTASY XV』のメインコンポーザーの下村陽子氏にインタビューを実施。『ヴェルサスXIII』から『XV』へタイトルも変わり、長期間楽曲の制作を続けてきた本作へのこだわりや裏話など制作秘話に迫りました。

(インタビュー:斉藤健二)

 


 

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インタビューの様子。(イラスト:牧野良幸)

 

――『FINAL FANTASY XV オリジナル・サウンドトラック』はmoraでハイレゾ音源も配信されまして、今回は生演奏で収録した楽曲も多数あると思うのですが、特にハイレゾで聴いてもらいたい楽曲はありますか?

下村: えーっとこういう質問いつも選べないのですが(笑)まず、やっぱり生でオーケストラなど生楽器もたくさん収録しているので、ハイレゾになる上でそのあたりの空気感や緻密さを味わってもらえればと思います。

――今回ご自身が書かれた中で特にストーリーやキャラクターに合ったなと思う楽曲はありますか?

下村: 自分で合ったなーというわけではないのですが、周りから言われて印象的だったのは、ルーナの曲ですね。元々は映画の『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』の方で先にルーナの曲を書いてそれをそのままゲームの方に共通で使わせていただこうという話で、映画のほうに尺を合わせたんですがゲームのシーンにもバッチリ合ってしまって、キングスグレイブのディレクターの野末さんが、「下村さんこのシーン考えてここまで考えてつくったのかな?すごいなー!」って褒めてくださったみたいなんですが・・・偶然合っただけです(笑)

どこのシーンかいうとネタバレになることもあるので、ゲームの方でも音楽の方でも是非楽しんでいただければと思います。

――他にはありますか?

下村: エンディングで使われるファイナルファンタジーのメインテーマのアレンジですね。映像にピッタリ合うように制作しました。

――映像が先にあったんですか?

下村: 完成されたものではありませんでしたが先にありました。映像が完成してから制作すると間に合わなくなるので、ある程度出来たところで制作していたのですが、レコーディングなど終わったあとにエンディングが少し変更になってしまい・・・なんとか合わせたいと思って調整して最終的にはピッタリ合ったと思います。自分の曲だったらわりと自由にできるんですけど、ファイナルファンタジーのメインテーマのアレンジだったので、構成やフレーズなどはなるべく変えないようにと思ってました。

――あのメインテーマのピアノが素晴らしかったです。

下村: ありがとうございます。なんとなくそういう風にしたいだろうなっていうチームの雰囲気もあって作りました。でもメインテーマのアレンジはプレッシャーもありました。まさか自分がアレンジする日が来るとは、という感じです。

――あのシーンだけですからね。XVでFFのメインテーマが使われるところは。最初のタイトルロゴのシーンは『Stand by Me』ですし。

下村: そうですね。元々メインテーマはずっとアレンジしてほしいと言われていたのですが、ゲーム中ではなかなか使うところがなくて…。じゃあ、やっぱりエンディングですかね?という話になりました。でもエンディングと決まった瞬間にさらにプレッシャーを感じました。みんなが感動しているところで、「メインテーマのアレンジが・・・」とユーザーさんに思われたら一番良くないので、自分のやりたいことと、ディレクターの田畑さんの要望に答えながら、絶対にファンも裏切らず、植松さんにも怒れないように(笑)色々考えてアレンジしました。みなさんに怒られなければいいなと思います。

――ゲームの音楽の中でRPG更にその中でも王道とも言えるファイナルファンタジーではバトル曲が注目されると思うのですが、制作された中で意識された点や特に力を入れたところはありますか?

下村: まず、デンデンデンデンデンデンデンデン…っていうファイナルファンタジーシリーズのバトル曲のイントロのベースは意図的に入れました。そのままではなく少しアレンジした形ですが。当初フィールドのBGMが鳴らないという想定だったので、バトルに入ったインパクト、バトルのイントロで「うわぁ来た!」という感じになればいいなとは思っていました。また、トレーラーでも使われた『Veiled in Black』が非常に好評で、基本的にその曲のノリに合わせて他のバトル曲も作りました。

――とくにバトル曲でお気に入りはありますか?

下村: えーっと。お気に入りはやっぱり選べないんですけど(笑)思い入れがあるのは今話した『Veiled in Black』でしょうか。この曲は、ヴェルサスXIIIの頃に作ったバトルの「激しいVer.」だったんです。ちなみに「ゆるいVer.」もあったのですが、今のチームに先に聴かせたのが『Veiled in Black』。つまり「激しいVer.」だったので、「激しい」から「ゆるい」を聴いた印象から「うーん」という感じになって・・・結局「ゆるいVer.」はお蔵入りになりました(涙) XVの中で「Somnus」が一番初めに作った曲というのはご存知の方も多いと思いますが、その次か次くらいに作った曲が『Veiled in Black』なんです、一番のお気に入りは選べないのですが、やっぱりだいぶ前に作った楽曲がやっと日の目を浴びてユーザーさんにも好評だったので嬉しいです。

――確かにかっこいいですよね。

下村: ありがとうございます。

――正直なところ「ゆるいVer.」のバトルもあって欲しいなとは思っていました(笑)

下村: いきなり激しいですよね(笑) 元々は普通のバトル曲があって、ちょっと強い敵がでてきた時に流れるのが『Veiled in Black』だったのですが、それがベースになっちゃったので、どの曲もみんな激しい(笑) 個人的にも「ゆるいVer.」もあっても良かったんじゃないかなと思うところもありましたが、先に「激しいVer.」を聴かせてしまったので、私のプレゼンが間違っていました。とはいえ、PVなどでは派手なシーンを見せるのでしょうがないのですね。

――どこかで公開されるタイミングあったらいいですね

下村: 他にもお蔵入りになってしまった曲もありますので…もしDLCなどがあったら、そこで甦れば嬉しいです。

――制作期間も長く、レコーディングも多岐に渡ったと思うのですが、裏話とかはありますか?

下村: 裏話・・・マケドニアでオーケストラをレコーディングしたらグランカッサ(バスドラム)がなかったとか(笑) ちょうど、ヴェルサスXIIIからXVに変更になるっていうPVで使われる楽曲の収録をマケドニアで行ったのですが、いざレコーディングってなったときにグランカッサがなくて、「譜面にグランカッサって書いてあるよね?」って聞いたら、その日はマケドニアのお祭りでグランカッサが持っていかれちゃったみたいで・・・その後、グランカッサだけ日本のスタジオで「ドーン ドーン」って録りました。大きいスタジオを借りて本当にグランカッサだけ(笑)

――すごい贅沢なレコーディングですね(笑)

下村: そうですね(笑)オーケストラはマケドニアで録って、グランカッサだけ日本でスタジオで録るって衝撃でした。理由がお祭りっていう、微妙に許せちゃう理由ですよね。あとはボストンでのレコーディングの日。大雪になって、マサチューセッチュ州の州知事が家から出ないでくださいというような帰宅命令を出して、とても奏者を呼べる状況ではなくなって、中止になりました、リモートレコーディングだったからまだ良かったのですが、現地に行ってたら洒落にならなかったですよね。たくさんレコーディングしている分、そういったトラブルはたくさんありますね。もちろん無い方が良いんですが、もう耐性がついてきました(笑)。

――FFXVの音楽を10年近く制作されていてタイトルもヴェルサスXIIIから変更になったりしましたが、一貫してテーマとかこだわった点はありますか?

下村: 確かにシナリオとか変更になった部分もあって、合わせていった部分もたくさんあるのですが、シナリオの根底に流れるものはあまり変わっていないです。ネタバレになってしまうため、あまり言えないのですが、エンディングまでの大きなストーリーは当初から変わっていなくて、それは私の中でも基本のストーリーとしてずっとありました。そこに周りの肉付けされている部分というのは変更されてきましたが、その根底のストーリーは私にとっては変わっていないので、そこは意識して大事にしてきました。それもあって、パッと見ではおちゃらけた若い男4人旅の部分もあるのですが、ストーリーなどのシーンではどうしても重い楽曲が多いのかなと思います。

――ストーリーはそうですね。

下村: だから自分でもエンディングを見たときに、ようやくここが見れた!と思いました。もちろん最初の頃とはシナリオも変わってるんですけど。ずっと心の根っこに存在し続けた思いがようやく消化された気がします。

――なるほど。それでは、最後に「FINAL FANTASY XV オリジナル・サウンドトラック」の聴きどころを教えていただければと思います。

下村: ゲームの中ではシーンに合わせて3分割とかにされた楽曲を繋げていくという部分もあるのですが、ゲーム中では気にならなくても音源として1本通る楽曲になると気になる箇所も出てきてしまいました。レコーディングした場所とかも違うので。。

――そこは調整とかしたんですか?

下村: 調整はすごくしました。本来は一曲のイメージで作っていて、サントラに収録するときもその形だよね。と思っていたので調整して元々のイメージに近い形で収録することができました。また、サントラ全体としては私だけではなくて他にも鈴木克崇さん、ユニークノートの柴田徹也さんや青木佳乃さんなどにも参加していただいているので、そのあたりのバラエティに富んでいながらも、一つの作品の世界感にキッチリハマっている…そんなサウンドを楽しんでいただければと思います。

――下村さん、本日はありがとうございました。

 

 

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FINAL FANTASY XV Original Soundtrack

FLAC(96.0kHz/24bit)

通常(AAC-LC 320kbps)

 

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